北海道新幹線の新函館北斗駅は市街地から離れていて、函館駅へ行くには在来線への乗り換えが必要です。いまは東京方面からの列車を利用するときだけですが、新幹線が札幌まで延伸すると、札幌方面からも新函館北斗駅での乗り換えが生じます。
それでは不便ということで、新幹線を函館駅まで乗り入れさせる計画が浮上しています。いわば「函館新幹線」です。
その調査報告書が公表されました。新函館北斗―函館間の在来線の線路に、レールを1本加える三線軌条方式で、技術的には可能という内容です。実現すれば、函館駅と札幌駅を直通する新幹線列車を設定できますし、東京駅直通も期待できます。
停車駅は函館、五稜郭の2駅と想定。線路工事のほか、駅のホームや保安システムを改修します。整備期間は約5年で、すぐに着手すれば、2030年度末を目標とする新幹線札幌延伸との同時開業も可能です。
函館―札幌間の想定所要時間は1時間23分。現在は3時間50分くらいかかりますので、乗り換えなしでこの時間は画期的です。
整備費は車両費別途で157億~169億円。経済波及効果は114億~141億円と見込んでいます。
技術的には可能で、費用も非現実的な数字ではないという結論を得ましたが、運行面では課題が残ります。新在直通用の車両を投入する必要がありますが、東北・北海道新幹線の10両編成では輸送力過剰です。札幌―函館間の道内完結列車なら6両程度に減らしてもよさそうですが、その車両をどうするかは議論になるでしょう。
東京直通列車を走らせるのは、ややハードルが高くなります。東京からの10両編成を函館行きにすると輸送力過剰の上、札幌行きが減ってしまいます。7+3両のように分割併合できる形にすると、先頭車両のぶん編成定員が減ってしまいます。
秋田新幹線で使われているミニ新幹線車両を投入し、盛岡で10両編成と増解結するという方法も考えられます。ただし、盛岡以北の車両定員が不足するという問題があります。
費用負担も大きな課題です。車両費を含めた事業費は300億円規模になりそうですが、JR北海道に投資余力はありません。函館市が負担するにも大きすぎる金額です。
実現には国や道の協力が不可欠で、前向きな議論を期待したいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)