「カシオペア」は、1999年に上野―札幌間で運行を開始した寝台特急です。
使用車両のE26系はJR初のオール2階建て寝台客車で、全室A個室。これまでにない豪華列車として憧憬の的となりました。
2016年に定期運行を終了しましたが、その後は団体臨時列車として運行を継続しています。いまでも人気は高く、毎週のようにツアーが設定されています。
先日、筆者も旅行会社に申し込んで乗ってみました。日中時間帯のツアーでしたが、寝台列車の車両に乗るのは久しぶりで、わくわくします。
車内を歩いて改めて驚かされたのは、作り込まれた車内構造の精緻さ。狭軌車両の限られたスペースに、よくこれだけの設備の個室を組み込んだと、感心するほかありません。最近のクルーズトレインと異なり、定期列車としての機能性と、非日常的な高級感とを両立させているところに、「カシオペア」の卓越した特徴があります。
一方で、通路は狭く、階段だらけで、バリアフリーには課題もあります。構造的に今の時代とは合わなくなっている点もあり、1990年代の残り香を感じずにはいられません。車齢25年ですから、細かい部分では老朽化も目に付きます。
インターネット上では、近い将来の廃止もウワサされています。そうした事情もあってか、最近の「カシオペア」ツアーの人気は高く、ひそかな「乗り収めブーム」が起きはじめているようです。
今回は子連れ限定のツアーだったので、小学生の息子と参加しました。歴史的な豪華寝台特急を、姿を消す前に体験させようという親心です。
ところが、息子の反応は素っ気ないものでした。親はカシオペアスイートやラウンジカーに興奮して記念撮影をするのですが、息子はお付き合い程度のピースサイン。他の親子を見ていても、興奮しているのは、どちらかといえば親のほうです。子どもたちからすれば、「カシオペア」は過去の列車で、縁遠い存在です。博物館を見学しているくらいの認識になってしまうのかもしれません。
「カシオペア」は、親世代には憧れの存在でしたが、いまの世代では違うのでしょう。「寝台特急」の復活を願う声はいまも根強いですが、これからの時代に求められる列車の車両や設備は何か。子どもの姿を見て考えさせられます。
(旅行総合研究所タビリス代表)