「青春18きっぷ」がリニューアルします。2024年度冬季設定分で、有効期間が連続する3日間、または5日間となり、これまでの「5日分、非連続・複数人利用可」という大枠を改めます。ルール変更にあわせて自動改札機が通過できるようになり、利用日ごとに改札印を押す必要がなくなります。
連続利用が条件になったことにより、帰省で1日分ずつ片道利用する、といった使い方がしづらくなります。複数人利用ができなくなるので、シニアが夫婦で近郊の温泉旅行に行く、といった用途にも使えません。年末年始に日帰り旅行を数日おきに繰り返す、といった使い方もできませんので、大都市近郊のエキチカ観光地の人出が減る可能性すらあります。
青春18きっぷの歴史は1982年にさかのぼり、非連続・複数人利用は発売当初以来のルールです。それが変更されるということは、40年にわたって定着してきた格安旅行術が失われることを意味します。大げさにいえば、日本人の旅行スタイルのひとつが消滅するわけで、観光業への影響も心配です。
ルール変更の目的は、自動改札対応とみられます。これまでの青春18きっぷでは、利用者は有人改札を通らなければなりませんでしたが、人手不足もあって改札口の省人化が進んでいて、青春18きっぷの対応がJRの重荷になっていました。
自動改札機に対応させるには、システム的に連続化せざるをえず、そのためにはルール変更が不可欠だった、というわけです。ルール変更により、ざっくりいうと「実用的な節約旅行」がしづらくなります。用途が限られてしまう以上、新しい青春18きっぷの利用者は減るでしょう。将来的な廃止を心配する声もあります。
しかし、全国のJR線に乗り放題というのは、鉄道ファンには高い利用価値があります。これまでも連続利用していた鉄道ファンは少なからずいましたので、そうした需要は失われませんし、3日間用が加わることで、鉄道ファンの利用者が増える要素もあります。改札問題が解消すれば、JR各社として青春18きっぷ発売による負荷がほとんどなくなります。
「刷れば売り上げになる」経営的にはおいしいきっぷですから、販売枚数が激減したとしても、JRが廃止する理由に乏しく、当面は連続利用の形態で存続するのではないでしょうか。
(旅行総合研究所タビリス代表)
(観光経済新聞11月25日号掲載コラム)