最近の京都駅は、いつ行っても混雑しています。しかし、そこから電車に一駅乗り、山科駅で降りると、落ち着いています。京都駅の喧噪(けんそう)とは別世界です。
それが、これから大きく変わるかもしれません。JR西日本が山科駅を改良し、関空特急「はるか」を同駅まで延伸する計画を明らかにしたからです。
山科駅に折り返し設備を新設して「はるか」を迎え入れ、コンコースや跨線橋を拡張・延伸します。エスカレーターやエレベーターも整備して、旅行者増に対応します。
山科には、JR線のほか、地下鉄東西線などが乗り入れています。「はるか」で京都を訪れた観光客は、市内に向かう際に、山科駅からの地下鉄アクセスを活用しやすくなるわけです。
京都駅は、JRと地下鉄との乗り換えが不便とまではいえませんが、構内は複雑で、初めての旅行者にはわかりにくいです。混雑が激しいので、大きな荷物を持って歩くのは大変です。
これに対し、山科駅は乗り換え動線がシンプルで迷いにくいですし、コンパクトなので疲れません。
そのため、「はるか」が山科駅に乗り入れれば、関西空港からの観光客には歓迎されるでしょう。
京都市街地で、「山科経由」が便利になるのは、地下鉄東西線沿線の、とくに東山エリアです。
現時点でも、京都の東山エリアへ向かう場合は、京都駅から地下鉄烏丸線やバスを使うより、山科駅から地下鉄東西線を使ったほうがラクな場合があります。「はるか」が山科駅に直結したら、東山方面へは、山科乗り換えが標準になっていくかもしれません。
気がかりなのは、「山科」という駅名の知名度が低いこと。関西圏以外からの旅行者、とくに外国人には知られていません。
対策としては、京都市内であることがわかる駅名に改称することでしょう。たとえば、阪急電鉄は京都線の終点の「河原町」を「京都河原町」と改称しました。同様に考えれば、山科についても、たとえば「京都山科」への改称を検討してもよさそうです。
京都市とJRは、山科駅周辺を観光やビジネスの補完拠点と位置づけて整備する方針です。京都駅や京都市内交通の混雑を考えれば、山科駅を第二の拠点に育て、利用者を分散させる意義が大きいのは間違いありません。
山科駅が「京の東の玄関口」に成長できることを願いたいところです。
(旅行総合研究所タビリス代表)
(観光経済新聞12月9日号掲載コラム)