三菱UFJ信託銀行とヴァリューズは4月18日、「タイパ(タイムパフォーマンス=時間対効果)」の実態調査の結果を発表した。
◆「タイパ」認知率:男性・若者・高世帯年収ほどよく知っている
◆「タイパ」実践度:男性は若いほど、女性は子育て始めたて世代が高い
◆「タイパ」行動:「動画の倍速再生」は約5割が実践、「ショート動画」は若い女性が視聴
◆「タイパ」行動:高年収層は「最新家電×家事代行」で効率化
◆「タイパ」で捻出する時間:若年層ほど「睡眠時間」を重視
◆「タイパ」重視理由:育児や介護などの根本的な忙しさ
【調査・分析概要】 全国の「Dprimeの個人ユーザー」を対象として、2023年2月14日にアンケート調査を実施(回答者17,284人)。 ※「20代」には18歳、19歳が含まれている。 |
◆「タイパ」とは
タイパとは、タイムパフォーマンス(時間対効果)を意味する略語です。お金の有効活用を考える「コスパ(コストパフォーマンス)」に対し、「タイパ」は時間の有効活用を考えます。
一般的に若い世代、特にZ世代は「タイパ」を重視する傾向が強いと言われています。今回はその通説を検証しつつ、具体的にどのような「タイパ」行動がとられているのか、「タイパ」が重視される理由などを、性年代と世帯年収でセグメンテーションし分析いたしました。
◆「タイパ」認知率:男性・若者・高世帯年収ほどよく知っている
まず、アンケート回答者全体に「タイパ」という言葉を知っているかたずねたところ、性年代別では男性で若い世代ほど認知率が高いことがわかりました。20代男女で「知っている」と回答した人数を比較すると、20代男性は58.9%、20代女性は46.5%と10ポイント以上の開きがあり、若い世代の間でも認知度が分かれています。
続いて、同様の回答結果を世帯年収別に集計すると、2,000万円未満までは世帯年収が上がるほど認知率が高い結果となりました。上述のように「若い世代ほどよく知っている」という傾向はありながらも、一般的に若い世代ほど世帯年収が低いことを考慮すると、「情報感度が高い人ほどよく知っている」という捉え方の方が結果に即しているといえそうです。
一方で、世帯年収2,000万円以上の層では認知率がやや落ち込みますが、これには年代の高さが影響している可能性が高いと考えられます。
◆「タイパ」実践度:男性は若いほど、女性は子育て始めたて世代が高い
同じく回答者全体に、普段から「タイパ」を求める行動をしているかたずねたところ、男性は認知度と同様に若い世代ほど実践度が高い一方で、女性の実践度は30代(58.2%)、20代(56.6%)、40代(52.2%)の順となり、「30代」がよりタイパ行動をとっているという特徴が見られました。30代女性は手がかかる小さな子供の育児を抱えている人が多く、より「タイパ」を意識した生活を送っていると推測されます。
◆「タイパ」行動:「動画の倍速再生」は約5割が実践、「ショート動画」は若い女性が視聴
次に「タイパ」実践者に対して、普段どのような「タイパ」行動をとっているかをたずねました。
性年代別で見ると、性・年代を問わず「動画の倍速再生」が最もメジャーで、約半数の回答者が実践していると回答しています。若者ほど実践傾向が強いのが「動画の倍速再生」(20代男性:56.5%、20代女性:55.7%)と「ショート動画の視聴」(20代男性:22.0%、20代女性:31.1%)です。「ショート動画の視聴」については、いずれの年代も女性の方が割合が高く、20代女性の3割超が視聴しています。
同様に女性の割合が高くなっているのが、「冷凍食品」「ミールキット宅配サービス」といった料理系や、「ロボット掃除機」「ほったらかし調理家電」などの家電系です。「少しでも家事を楽にしつつ、一定のQOL(クオリティ オブ ライフ=生活の質)は担保したい」というニーズは、女性に高いといえそうです。
◆「タイパ」行動:高年収層は「最新家電×家事代行」で効率化
普段行っている「タイパ」関連行動を世帯年収別に集計すると、平均的な世帯年収にあたる400~600万円未満と高年収層の1,500万円以上の層で比較した際に、「ロボット掃除機」「ミールキット宅配サービス」「家事代行サービス」といったカテゴリで、高世帯年収層の回答率が高くなることがわかりました。最新の家電やアウトソーシングによって家事を切り出し、効率よくタスクをこなしている高年収層の様子がうかがえます。
◆「タイパ」で捻出する時間:若年層ほど「睡眠時間」を重視
このように「タイパ」を意識して行動する目的を探るため、「タイパ」関連の行動によってどのような時間を捻出したいかをたずねました。全世代で共通して高いのは、「1人でゆっくり過ごす時間」と「睡眠時間」です。心身の休養のために、「タイパ」が意識されていることがわかります。
セグメントごとに比較すると、若者ほど「睡眠時間」(20代男性:57.3%、20代女性59.4%)に、女性は全年代で6割超えと「1人でゆっくり過ごす時間」に、若い男性は「資格やスキルの勉強時間」(20代男性:26.4%、30代男性:22.0%)にあてたいと回答。若年層はメリハリ、女性はリラックスできるプライベートな時間、若い男性は生産性を重視していると考えられます。
◆「タイパ」重視理由:育児や介護などの根本的な忙しさ
最後に、「タイパ」関連の行動をとる理由について、フリーアンサー形式でたずねました。Z世代(今回は18〜25歳で集計)、30代、50代でそれぞれ回答をまとめると、「時間が勿体ない」「より多くのコンテンツを視聴したい」という回答は、いずれの年代も共通して見られました。
意外にもZ世代に特徴的な回答は見られない中で、30代は「共働き・育児で忙しい」という人が多く、50代では「介護で忙しい」という声も。人生の節目を迎える50代では、余生の過ごし方を考えるような回答も見受けられました。
今回の回答結果から、「タイパ」の概念自体は新しいものではなく、「どのように日々の効率化を図るか」は世代を超えたテーマであり続けることがわかります。一方で、「世の中にコンテンツが溢れている中で、できるだけ効率的に多くのコンテンツを視聴したい」という状況やニーズは、情報過多の現代ならではの要素です。「限られた時間でより多くのコンテンツを消費するための手段」として、「動画の倍速再生」や「ショート動画の視聴」をいち早く実践しているのは、デジタルネイティブ世代の若者の特徴であると考えられます。
※(参考)タイパとは?Z世代が重視する「タイパ至上主義」の背景とマーケティング事例
https://manamina.valuesccg.com/articles/2112