1 感染拡大防止策の徹底とGo Toトラベル事業の延長等
ウィズコロナ時代においては、感染拡大防止を大前提として、観光需要の回復を図る必要がある。また、各種調査によれば、国内観光、インバウンドの双方で、観光地で実施されている感染拡大防止策が目的地を選択する際の大きな関心事項になっている。こうしたことから、国内観光、インバウンド問わず、観光需要の回復に向けて、感染症拡大防止策を徹底することが必要となる。
このため、国内観光需要の回復に当たっては、引き続きGo Toトラベル事業により、安全・安心の旅のスタイルの定着を図る必要がある。また、ワーケーション等を普及させることで、新たな旅行機会の創出と同時に旅行需要の平準化を図り、混雑や密を低減させることが有効である。このため、以下の施策を実施する。
◇感染拡大防止策の徹底
【事業者と旅行者双方の感染拡大防止策の徹底】安心・安全な旅行ができるよう、宿泊・旅行・交通・空港など観光関係事業者においては業種別ガイドラインを遵守するとともに、旅行者にも「新たな旅のエチケット」を守っていただくなど、事業者と旅行者の双方において感染拡大防止策を徹底する。その際、国は、サーモグラフィー導入等の感染拡大防止策について必要な支援を実施する。
【Go Toトラベル事業における感染拡大防止策の徹底】Go Toトラベル事業において、登録宿泊施設の感染拡大防止策の実地調査を行ってきたところであり、引き続き感染拡大防止策の徹底を図る。
◇Go Toトラベル事業の延長
【Go Toトラベル事業の延長と適切な運用】事業者と旅行者の双方において感染拡大防止策を徹底しつつ、Go Toトラベル事業を延長し、感染状況を踏まえつつ適切に運用しながら、国内旅行需要の本格的回復に結びつける。その際、例えば、中小事業者、被災地など観光需要の回復が遅れている事業者・地域への配慮を行うとともに、平日への旅行需要の分散化策を講ずる。
【Go Toトラベル事業も活用した修学旅行の促進】Go Toトラベル事業も活用し、ウィズコロナ時代の修学旅行を引き続き促進する。
◇ワーケーション等の普及
【ワーケーション等の促進のための企業と地域双方の環境整備】ワーケーション等の促進のため、送り手(企業)については、社内規定整備やテレワーク環境の構築等、受け手(地域)については、Wi―Fi、情報セキュリティ環境、家族向けプログラム等の整備等、双方の環境整備や休暇取得促進を進める。また、送り手と受け手のマッチングを行うことでワーケーション等に関する企業と地域の継続的な関係性を構築する。まずは企業による試行的な取り組みとして2020年度中に少なくとも10件の事例を構築するとともに、国立公園等においては2020年度中に200箇所以上で受入環境整備等を支援する。さらに、国民向けのキャンペーンも実施する。
【官民連携した分散型旅行の促進】官民が連携して、時と場所が分散されるいわゆる「分散型旅行」を促進するキャンペーンを行うことで年末年始などの旅行需要の平準化につながる新しい旅のスタイルを提案する。
【休暇取得の促進】官民が連携して、休暇の分散化のために、休暇の積極的な取得を図る。
2 国の支援によるホテル、旅館、観光街等の再生
観光産業は、新型コロナウイルス感染症によって大きな打撃を受けているところであるが、国内観光、そしてインバウンドの本格的な回復を見据え、宿泊施設、飲食店、土産物店等の観光施設を再生し、さらに地域全体でより一層魅力と収益力を高めることが必要である。このため、以下の施策を実施する。
【国の支援によるホテル、旅館、観光街等の再生】短期集中で、観光施設を再生し、さらに地域全体でより一層魅力と収益力を高めるため、新たな補助制度を創設するとともに融資制度を大幅に拡充する。具体的には、地域等が策定する観光拠点再生計画に基づく計画区域(全国で100程度)において、観光施設全体が上質な滞在環境等を実現し、再生できるような観光施設の改修に対する補助制度(負担割合:1/2)と、施設改修を含めた経営革新や新たなビジネス展開などについて専門家の支援を受けられる制度を新たに創設する。併せて融資制度を大幅に拡充することで、観光施設の再生に向けた意欲的な取り組みを短期集中で強力に支援する。加えて、地域全体の魅力を高めるため、こうした個々の取り組みと合わせて、地域の観光まちづくりの取り組みと連携した廃屋の撤去等についても新たに支援することとし、観光地としての景観改善を一挙に進める。また、上記の新たな補助制度を活用して、例えば後継者不足に悩む宿等の事業承継や複数宿の事業統合等を促すとともに、また、複数宿泊事業者等の連携・協業、例えば地域内の複数の宿が一つのホテルとして運営する取り組みや飲食施設の共有などの取り組み、他の観光事業者と連携した新たなビジネス創出などを支援し、宿泊施設の収益性を改善するとともに、魅力を向上させる。さらに、公共施設(国立公園内の施設、文化施設等)について、民間のノウハウを導入することで、その魅力と収益力を向上すべく、新たな補助制度により、これらの施設において民間活力を導入する場合の施設改修を支援する。
【宿泊施設のデジタル・トランスフォーメーション等の促進】宿泊施設に対し専門人材を派遣するなどにより、顧客管理等などにおけるデジタル・トランスフォーメーションの取り組みや、マーケティング能力等の強化を促進する。
【宿等の食の魅力向上とベジタリアン等への対応改善】宿やレストラン等において、板前やシェフ等へのノウハウ支援等を通じて、各地の食材を生かした食事の提供等やムスリム・ベジタリアン等への対応を進め、食の満足度や単価の向上に取り組む。
【地域公共交通の活性化等】ポスト・コロナ時代を見据え、地域公共交通事業者が新技術の活用などにより、地域公共交通の活性化・継続を図る取り組みを支援する。
【観光分野のスタートアップ企業等の発掘、横展開】観光分野のスタートアップ企業等の先進的な取り組みの発掘を進め、横展開等を支援する。
3 国内外の観光客を引きつけるコンテンツ造成
わが国は、観光に必要な四つの要素(気候、自然、食、文化)に恵まれており、これらの要素をフル活用することが有効である。インバウンドのみならず国内旅行客にとってもより一層魅力と収益力のある観光地を実現するには、地域に眠る観光資源を磨き上げ、その価値を深く体感・体験できる滞在型コンテンツを造成する必要がある。このため、以下の施策を実施する。
【地域に残る縦割り打破と地域に眠る観光資源の磨き上げ】観光事業者や観光地域づくり法人(DMO)と、交通事業、漁業、農業、地場産業などの多様な関係者が連携し、地域に眠る観光資源を磨き上げる取組を支援することで、観光需要の回復・地域経済の活性化につなげるとともに、地域に残る縦割りを打破し、観光地の整備を進めるための体制を強化する。
【スノーリゾート等の長期滞在型コンテンツの造成】国際競争力の高いスノーリゾート、日本の豊かな文化・自然を体験できるアドベンチャーツーリズム、ナイトタイムや日本独自の食・酒・歴史・文化・自然・武道等を深く体験・体感できるコンテンツ、農泊を中心として農山漁村体験等を満喫できるプログラム等の高付加価値・長期滞在型コンテンツを創出する。
【文化観光拠点の整備等の促進】地域の古民家等を活用した取り組みとも連携し、文化観光推進法に基づく文化観光拠点の整備を促進、日本遺産等の文化資源の魅力向上や発信強化を図るなど、文化資源を中核とする観光拠点・地域を整備する。さらに、博物館等の国際交流の促進や多様な映像コンテンツの作成を通じて国内外の方々が自宅等から日本博等を楽しめる環境の実現を図るほか、日本博等の成果を生かして全国各地でのさらなるコンテンツの充実を図る。
【上質なサービスを求める観光客誘致】上質なサービスを求める観光客誘致のため、対応できる人材を含めて、宿泊や体験コンテンツなどの環境整備等を推進する。また、ビジネスジェットの利用環境を改善するため、諸手続の改善、ビジネスジェット関連施設の整備、柔軟な受入体制の確保等を実施する。
【城や社寺、古民家、グランピング等の個性ある宿泊施設整備】城や社寺、農山漁村の古民家等の宿泊施設としての活用や国立公園におけるグランピングを推進し、各地に個性ある宿泊施設を整備する。
【国立公園等の景観改善】国立公園や歴史的なまちなみにおいて景観を阻害する廃屋等の撤去や美装化等の景観改善を進める。
【観光地域づくり法人(DMO)の育成】新たなガイドラインに基づき、観光地域づくり法人全般の底上げを図るとともに、インバウンドの誘客を含む観光地域振興に積極的に取り組む意欲・ポテンシャルの高い観光地域づくり法人に対し、重点的な支援を行う。
【デジタル技術を活用したコンテンツ磨き上げ等】地域の文化・自然を深く体験・体感できる先端技術の活用による観光コンテンツの高付加価値化や、観光客の行動に関するビッグデータを活用した観光地経営・エリアマネジメントの発展など、観光サービスのデジタル・トランスフォーメーションに資する取り組みを推進する。
4 観光地等の受入環境整備(多言語化、Wi―Fi整備等)
5 国内外の感染状況等を見極めた上でのインバウンドの段階的復活