PMGパートナーズは18日、「withコロナ時代の経営に必要なサポート」に関する調査の結果を発表した。
東京商工リサーチの発表によると、1月14日16時時点での新型コロナウイルス関連の経営破綻(負債1,000万円以上)件数は、全国で累計2,610件(倒産2,490件、弁護士一任・準備中120件)となりました。
月別では2021年2月以降100件超えが続き、9月以降は4ヶ月連続でこれまでの最多を更新しています。
2022年1月も、14日までに49件の破綻が判明するなど、“コロナ破綻”が減少する気配は未だ見られないようです。
さらに、倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計135件が判明しました。
これらを含めると、新型コロナウイルス関連破綻は累計で2,745件に上ることになります。
■参照:東京商工リサーチ《データを読む》コロナ破たん、東京で600件迫る 感染拡大による「息切れ破たん」の増加懸念 「新型コロナウイルス」関連破たん【1月14日16:00 現在】
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20220114_03.html
依然として厳しい経営を強いられている中小企業も多い中、コロナ禍で事業運営が悪化した企業の経営者は、どのような課題や問題に直面し、withコロナとなった今の時代において、どのようなサポートを必要としているのでしょうか。
そこで今回、企業の合併、買収、再生、事業継承に関わるコンサルティング業務を行う株式会社PMGパートナーズ(https://pmg-partners.jp/)は、コロナ禍により事業運営が悪化した中小企業の経営者を対象に、「withコロナ時代の経営に必要なサポート」に関する調査を実施しました。
- 【事業継続に必要な要素1:“人”の課題】長引くコロナ禍によって人材採用・育成が困難に
はじめに、コロナ禍以降に直面した会社の“人の課題”について調査しました。
「コロナ禍以降直面した、会社の“人の課題”を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『従業員の雇用維持(37.1%)』と回答した方が最も多く、次いで『人の課題はない(34.3%)』『人材育成・後継者育成(20.8%)』と続きました。
『人の課題はない』という経営者が3割以上に上りましたが、コロナ禍以降『従業員の雇用維持』が大きな“人の課題”となってしまった経営者はそれ以上に多いことが分かりました。
コロナ不況の影響を受けて業績が悪化した企業も多いと思いますが、従業員という貴重な財産を守ることの難しさが、“人の課題”となって経営者に突きつけられている様子が窺えます。
事業継続に特に大きな影響を及ぼしている“人の課題”とは何なのでしょうか。具体的にお聞きしました。
■“人の課題”で事業継続に影響が出ています…
・給料が下がり、転職者が出た。新採用の枠が確保できない(30代/女性/北海道)
・仕事が薄くなって、経費も嵩むが人件費は変わらない(40代/女性/大阪府)
・若い外国人の入国規制による労働の質の悪化(40代/男性/東京都)
・リモートワーク導入によりスキルの伝達が難しくなっている(50代/男性/東京都)
・業務委託先の人材確保(60代/男性/愛知県)
などの回答が寄せられました。
雇用の維持だけでなく、退職者の発生に伴う人員確保も難しく、事業継続に影響を及ぼしてしまっているようです。
また、社員の雇用が難しい際には派遣/業務委託/外国人材がよく活用されるものですが、コロナ禍ではそれさえ困難になり、大きな影響を及ぼしている様子が伝わってきます。
- 【事業継続に必要な要素2:“モノ”の課題】人的課題は技能承継問題に直結している
先程の調査では、業績悪化により多くの中小企業が雇用の維持に課題を抱えていることが明らかになりました。
では、こうした“人の課題”に対して“モノの課題”についてはどうお考えなのでしょうか。
そこで、「コロナ禍以降直面した、会社の“モノの課題”を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『モノの課題はない(41.3%)』と回答した方が最も多く、次いで『生産能力の低下(24.4%)』『新商品・サービス開発の遅れ(19.2%)』と続きました。
意外にも、『課題はない』という回答が他に差を付ける形で最多となりました。
それだけ皆さんは、“人の課題”が切実なものとなっているのかもしれません。
その一方で、『生産能力の低下』『新商品・サービス開発の遅れ』といった課題に直面している経営者も決して少なくないことが分かりました。
これらの課題は“人の課題”とも直結していることは容易に想像できますから、“人の課題”に直面した結果、連鎖的に“モノの課題”にもぶつかってしまった企業も多いと言えそうです。
事業継続に影響を与える“モノの課題”についても、皆さんには具体的に伺いました。
■“モノの課題”で事業継続に影響が出ています…
・利益が減り設備投資にストップがかかる(30代/男性/岐阜県)
・海外との人の行き来が自由にできないこと(40代/男性/愛知県)
・燃料費の高騰(50代/男性/岐阜県)
・生産者が減ったから製品の出荷がまともにできなくなった(50代/男性/福井県)
・市場の冷え込みと、販売ニーズの低下(60代/男性/東京都)
などの回答が寄せられました。
燃料費や設備投資など明確な「モノ」に関する悩みが多い一方で、人材不足による生産力の低下や、また海外渡航ができないことなど、「人」に繋がる悩みも多数見受けられました。
やはり、“人の課題”と“モノの課題”は連鎖していると言えそうです。
- 【事業継続に必要な要素3:“金”の課題】補助金等の支援を受けても資金繰りに窮する企業は多い
ここまでの調査で、コロナ禍により業績が悪化した中小企業では、特に雇用の維持が難しくなっている現状があり、また、そういった“人の課題”から連鎖して、生産能力や新商品開発力などの低下に陥ってる企業も少なくない様子も見えてきました。
これらの課題は、もちろん「人」や「モノ」の課題ではありますが、同時に“金の課題”とも言えます。
資金が潤沢であり安定した雇用が可能な状況であれば、これらの課題はなかなか生じないでしょう。
ここからは、コロナ禍によって直面した“金の課題”について調査しました。
まず、「コロナ禍以降直面した、会社の“金の課題”を教えてください(複数回答可)」と質問したところ、『売上高の減少(77.3%)』と回答した方が最も多く、次いで『利益の減少(56.5%)』『資金繰り(32.8%)』と続きました。
『売上高の減少』が7割を超えて最多となりました。
また、『利益の減少』という回答も半数を超えたことから、コロナ不況はもちろん、生活様式の変化などが影響し、売上高や利益に大きなダメージを受けてしまった企業は多い様子が読み取れます。
さらに、『資金繰り』という回答も3割以上と、負のスパイラルに陥っている企業も決して少なくないのが実情のようです。
『資金繰り』の苦労については、さらに具体的な内容/エピソードも伺いました。
■会社の資金繰り、うちはこんな事態に遭遇しました!
・納品の減少により、資金回転率が低下(30代/男性/和歌山県)
・取引先の倒産による入金額の減少(40代/男性/大阪府)
・前経営者のコロナによる死去(50代/男性/東京都)
・雇用調整助成金がなかなか入金されない(50代/男性/東京都)
・金融機関の融資貸し渋り(60代/男性/埼玉県)
などの回答が寄せられました。
コロナ禍以降、資金繰りが困難になったことで、経営を大きく圧迫している様子が窺えます。
前経営者の死去に至っては資金繰りだけで済まない事態も予測され、想像すると身が震える方も多いでしょう。
また、頼みの綱である助成金や金融機関が頼りにならないというのは、中小企業にとっては死活問題です。
資金調達に東奔西走する経営者にとって、助成金や給付金といった救済措置は頼みの綱ですが、新型コロナ関連の助成金や給付金制度を利用した中小企業の割合はどれくらいなのでしょうか。
そこで、先程の質問で『資金繰り』と回答した方に、「新型コロナ関連の給付金や助成金などの制度を利用しましたか?」と質問したところ、8割以上の方が『はい(83.9%)』と回答しました。
大半の中小企業が、給付金や助成金を利用していることが明らかになりました。
皆さんは切実に「頼みの綱」を求めていることが、強く伝わる結果と言えるかもしれません。
では、この「頼みの綱」によって皆さんの会社の資金繰りは改善されたのでしょうか。
給付金/助成金の実際の効果についても、皆さんにはお聞きしました。
「給付金や助成金などの制度を利用した結果、資金繰りの課題は払拭できましたか?」と質問したところ、6割以上の方が『あまり払拭できていない(39.0%)』『全く払拭できていない(23.1%)』と回答しました。
半数を大幅に超える方が、はっきり「改善された」とは言えない状況であることが判明しました。
『あまり払拭できていない』という回答が4割近い点に加え、2割以上の方が『全く払拭できていない』と考えている点からも、給付金/助成金の限界のようなものが感じられる結果と言えそうです。
- 【withコロナ時代の事業継続】資金繰りのサポートは大前提。さらに必要としているサポートとは
ここまでの調査で、コロナ禍以降、事業継続の三大要素である「人・モノ・金」それぞれの要素において、大きな課題に直面している経営者が多く、例え新型コロナ関連の助成金や給付金制度を利用しても、資金繰りの課題払拭には繋がっていない様子が見えてきました。
では、今後も続くであろうwithコロナの状況で事業を継続するにあたり、経営者の方々は、どのような支援を求めているのでしょうか。
そこで「withコロナとなったこれからの時代、事業継続のためにどのようなサポートを必要としていますか?(複数回答可)」と質問したところ、『資金繰り(56.5%)』と回答した方が最も多く、次いで『人材育成・後継者育成(27.0%)』『生産性向上(25.5%)』と続きました。
『資金繰り』が、他の回答と大きな差を付ける形で最多となりました。
先立つものがなければ事業継続は困難を極めますから、この結果はある意味当然と言えるでしょう。
ここで注目したいのは、4人に1人以上の方が『人材育成・後継者育成』『生産性向上』と回答したことです。
この結果から、withコロナとなったこれからの時代は、資金繰りのサポートももちろん必要であり重要ですが、その他にも、“人の課題”である『人材育成・後継者育成』、そして“モノの課題”である『生産性向上』に関するサポートといった、「事業継続の三大要素全てにおける支援」を受けることで事業の活路を見出したい、という思いが中小企業経営者の本音と言えそうです。
では、専門家の視点でそれら必要としているサポートが受けられるとしたら、自身の事業継続への貢献度は高いのでしょうか。
そこで、「専門家によるそれらのサポートが受けられたら、事業継続に貢献すると思いますか?」と質問したところ、半数以上の方が『大いに貢献すると思う(16.4%)』『やや貢献すると思う(40.8%)』と回答しました。
専門家の視点でのサポートは、自身の事業継続に貢献すると考える中小企業経営者が多いようです。
逆に言えば、withコロナ時代は、「人・モノ・金」のうちいずれかのサポートではなく、全ての要素を包括的にサポートしてくれる専門家を必要としているのかもしれません。
- 【まとめ】withコロナ時代は「人・モノ・金」全てのサポートの重要性が増している
今回の調査で、コロナ禍以降事業運営が悪化した中小企業は、事業継続の3大要素とも言える「人・モノ・金」全てにおいてさまざまな課題を抱えている様子が見えてきました。
コロナ禍によって私たちの暮らしには大きな変化が生じましたが、中小企業にとってはそれが強い逆風となっていることが、今回の調査結果からも読み取れます。
とりわけ資金繰りに関する課題については、先立つものがなければ解決しようもなく、非常に深刻なものと言えるでしょう。
もちろん、国や自治体、民間金融機関も新型コロナ関連の給付金や助成金などのサポートをしていますが、それを受けてもまだまだ足りないのが中小企業の本音のようです。
コロナワクチンの2回の接種率が7割を超え、新規感染者数も激減するなど、一時はコロナ禍の収束に向けて明るい話題も増えました。
しかし、2022年に入って以降オミクロン株への感染が急拡大しており、また、ヨーロッパやアメリカなど海外では新規感染者数が過去最多となるなど、依然として予断を許さない状況が続いています。
withコロナ時代において中小企業が事業を継続していくには、資金繰りのサポートは大前提であると言えるでしょう。
それに加えて、専門家による人材育成・後継者育成や生産性向上などのサポートを必要としている経営者が多いことも、今回の調査では明らかになりました。