【データ】コロナ禍の人材育成に関する2020年の総括と2021年の展望


 エッセンシャルエデュケーションセンター(本社:神戸市北区、代表取締役:田中 翔紘)は11日、「コロナ禍の人材育成に関する2020年の総括と2021年の展望」を発表した。

  • コロナ禍で求められる「困難を乗り越える力」と「チーム力」

新型コロナウイルスによって、社会は劇的に、不可逆的に変化しました。特に大きく変わったのはテレワーク、ウェブ会議など、物理的な「働く環境」です。企業も社員も、テレワーク環境下においても生産性が求められるようになりました。そして同様に重要視されるようになったのが、姿勢やマインドなどメンタル的な側面です。それは困難や脅威に、適切に対峙する姿勢と適応できる能力、そして協働力です。

当社が2020年10月に行った経営者を対象としたアンケート(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000068981.html)によると、withコロナ時代を乗り越えるにあたり、「社員に身に付けて欲しい力は何か」という質問(n=111)に対して、「周りと協力する力(チームワーク)」が66.7%、「業務遂行力」が54.1%、それらに次いで「困難を乗り越える力」が44.1%と回答がなされています。

Q4.withコロナ時代を乗り越えるにあたり、社員に身に付けて欲しい力を教えてください。(複数回答)Q4.withコロナ時代を乗り越えるにあたり、社員に身に付けて欲しい力を教えてください。(複数回答)

 コロナ禍のような危機的な状況では、レジリエンスに代表される「困難を乗り越える力」の有無が、組織そして社員個人にとって非常に重要です。「困難を乗り越える力」を持てないと、例えばコロナ禍のような危機に対して、状況が好転するのを待つという「受け身」な姿勢となりますが、「困難を乗り越える力」を備えていれば逆転の発想を生み出したり、新規事業を発想したりと、打開策を考えて組織、社員が主体的に前へ進んでいきます。

生産性も重要ですが、今こそ主体性が求められており、さらに言えば、主体性という言葉の意味がさらに拡張されたといえます。「困難な状況下」でも自らの目標を持つこと、つまり社員一人ひとりが「困難を乗り越える力」を持っているか否かが、今後の企業の明暗を分ける重要な要素になったといえるでしょう。

社員に「困難を乗り越える力」を求める理由として、「様々なことが不確実で、未来が予測できないから」、「以前の常識が常識でなくなる可能性があるから」などの声があることも同アンケート調査でわかりました。そしてこの背景には、コロナ禍というパンデミックが、これまで日本で起きた危機や災害とは異なる側面をもっていることが関係しています。

例えば、バブル崩壊やリーマンショックのような金融危機は、行動の制限が課されるものではありません。また自然災害は局地的なものであり、速度に差はあれど時間とともに復興していくという力が働きます。しかしコロナショックは、現状では終わりが見えていません。そして、局地的ではなく世界的に流行している状況であり、コロナウイルスによって世界全体が停滞しています。コロナショックは「見通しが立たない」という意味で未曾有の状況であり、打開策が見えないからこそ「困難を乗り越える力」を求める声と直結しているのです。

上記アンケートで、最も身に付けて欲しいという回答が多かったのは「周りと協力する力(チームワーク)」でしたが、こちらもコロナ禍を乗り切る難しさと関係しています。判断が難しい困難な状況のときこそ、より企業の真価が問われるといえるでしょう。そこで必要となるのは、自分の目の前の仕事だけをそつなくこなすような能力ではなく、社員一人ひとりが主体的にチームに関わり、周りと協力して困難を乗り越えていく「チーム力」なのです。

  • 業務から離れた非日常な環境における研修が強い人材をつくる

2020年は、社会人デビューとなった新入社員にとっても、指導する側の教育担当者にとっても今までとは全く環境が異なり、大変な状況でした。リモートでは、同期の絆や上下の信頼関係が育みづらく、それはチームワークやエンゲージメントの低下に直結します。ただし、関係性が育みづらい状況下だからこそ、よりいっそう新入社員、そして受け入れる側の企業ともに、人と人とのつながりを求めているといえるでしょう。事実、当社で経営者や人事・育成担当者から「研修」についての問い合わせを受けていても、絆やエンゲージメントに関する相談や話題は、コロナ以前よりも多くなりました。また、感染対策にきちんと配慮したうえでの体験型の集合研修を行いたいという要望も今だからこそ強くなっています。

長期的な目線で考えると、これからの就職活動生はwithコロナ世代であり、しばらくは就職氷河期となるかもしれません。しかし、このような状況だからこそ、売り手市場で就職した世代よりも、より真剣に物事や人生と向き合う事ができ、結果として思考力や忍耐力、突破力、柔軟性や適応性が身に付けられる世代とも言えます。今までも就職活動が厳しかった世代は、同様の傾向があります。これは数年後に社会人としての力の差として現れてくるでしょう。では、コロナ禍で前に進むために、経営者は現在の社員・人材に対してどのような視点を持ち、何に取り組めば良いのでしょうか。

昨今、多くの企業が企業内研修に力を入れています。しかし、コロナ禍において、従来のカリキュラムを遂行することが難しい状況になってしまいました。さらには、「困難を乗り越える力」の育成、「チームワーク」の醸成など新たな命題も加わっています。これらの状況を踏まえると、企業内研修のみで現在の課題に対応することは、非常に困難であると言えます。アンケートでも、26.8%の経営者が「社員に身につけて欲しい力」は「通常業務では身につけることはできない」と回答しています(n=109)。そこで必要なことは、あえて業務から離れた非日常的な状況で、「困難を乗り越える力」やチーム力を試すような機会ではないでしょうか。このことは、82.6%の経営者が「これから非日常的な研修を取り入れていきたい」と回答している(n=109)ことからも明らかです。

Q7.通常業務で、それらの力を身につける・磨くことはできると思いますか。Q7.通常業務で、それらの力を身につける・磨くことはできると思いますか。

Q8.それら社員に身につけて欲しい力を非日常的な研修を通じて身につく・磨く機会をこれから提供したいと思いますか。Q8.それら社員に身につけて欲しい力を非日常的な研修を通じて身につく・磨く機会をこれから提供したいと思いますか。

withコロナの社会では、上記の「困難を乗り越える力」が身に付いていないと、本当の意味で活躍する人材にはなりません。

  • これからの企業は多様性の育成が重要に

冒頭のアンケートにおいて、「周りと協力する力(チームワーク)」「業務遂行力」「困難を乗り越える力」とともに多く回答されたのが、「多様性を理解する力」です。多様性を理解する力は、今後益々注目されていく要素であり、2021年の展望とともにお話したいと思います。

背景には、昨今のLGBTQやSDGs、夫婦別姓、ハラスメント、ジョブ型雇用といったトピックが挙げられます。特にビジネスと直結するのは、ハラスメントやジョブ型雇用とも関連するリーダーシップやマネジメントでしょう。

大切なことは、一人ひとりの得意分野や特性を理解し、その人に最適な役割を与えるという、タレントマネジメントの領域です。人材の本質的な部分を多角的にかつ深く見る必要があり、この力は経営にもダイレクトに影響してくるといえます。

コロナ禍によって当たり前と思われていたものが、根底から覆される状況になりました。それぞれ立場や視点によって、普通や当たり前が違うという社会にもなってきています。

従来型のリーダーシップである、指示命令が明確にある一方通行のやり方は通用しなくなるでしょう。それぞれが多様性を認め合いながら個人の特性を活かし、主体的に判断し行動する。そういった人材を育むことが、これからの企業の人材育成に求められる要素です。

 
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