【データ】北海道の旅行宿泊業界におけるリサーチ(2023年1月版)


 リアラハ2月16日、「北海道の旅行宿泊業界におけるリサーチ(2023年1月版)」を発表した。

株式会社リアラ(本社:札幌市、代表取締役:伊東義史)は、「北海道の旅行宿泊業界におけるリサーチ(2023年1月版)」を発表いたします。
■調査概要
観光庁などの政府機関が発表している宿泊統計は約2ヶ月程の集計期間を要するためリアルタイムで状況を掴みにくいという課題がありました。株式会社リアラでは、より迅速に観光施策へと繋げていくことを目的に北海道内の宿泊施設に対してサンプリング調査を実施。定量的なデータからは見えてこない定性的な課題についてもヒアリングし公開致します。

■調査結果

・「集客」は悪化傾向
現段階で「集客に困っている」と回答した施設は約61%と、前月から29ポイント上昇し悪化した。
理由としては、需要が減る閑散期に入ってきたこと以外にも、1月10日から再開した全国旅行支援(北海道ではHOKKAIDO LOVE!割)の割引率とクーポン券付与額の引き下げの影響を受けているとした声が多かった。
また、各地方自治体で行われている独自の観光施策として行われている「ふっこう割」も終了しつつ有り、
現在継続している自治体でも「2月末まで」とする場合が多く、3月以降の予約が入りにくい状況に。
札幌では雪まつりが開催され観光需要が伸びたものの、他の地域への影響は限定的となった。

・「コスト」上昇は深刻化
冬に入り光熱費が上昇している。価格転嫁を行っていると回答した施設もあるが、まだ不十分と回答する施設が多い。更に北海道電力株式会社によると、2023年4月1日より高圧・特別高圧の契約は19%前後の値上げが行われる見込みで、コスト上昇はまだ続く見込み。国内客の予約が入らず値下げを強いられる中で、より利益が圧迫されている状況が明らかになった。

・「人手不足」と「賃金上昇」の板挟みに
前月同様に人手が足りていない、現状でギリギリであると回答する施設が多い。年明けからは、HOKKAIDO LOVE!割地域限定クーポンで利用する「STAYNAVI」の利用方法が複雑でフロントでの説明に時間を要しているという回答が目立った。

大手宿泊グループでは4月から始まる大型連休に向けた準備が始まっている。観光業界では需要が連休に集中しやすく、3月以降は採用面でも競争が激しくなる可能性が高い。

また、道内のアルバイト・パートタイム求人の時給は上昇傾向にある。例えば、札幌市における清掃業務の求人は昨年の5月と比較し、約100円程度上昇しており、中規模のホテルでは、これだけでも15万円前後のコスト増加となり、経営を圧迫する可能性が出てきた。

■今後の宿泊業界の動きについて(株式会社リアラ考察)
札幌市内では徐々にインバウンド客が増え始め、雪まつりが3年ぶりに再開されました。生産波及効果は419億円、雇用効果3,364人(札幌市、平成26年統計)にも及ぶ巨大イベントです。コロナ前には200万人以上の来場者数を記録していましたが、今年の開催では175万人の来場という結果に。実際に会場に足を運ぶと、様々な国の言葉が行き交い、数値上だけではなく体感としてももコロナ前のような賑わいが戻ってきた感じがします。一方で地方都市は依然厳しく、コロナの出口戦略を政府だけではなく民間も意識して動くことが求められます。

1.回復は主要都市から
一方で調査結果を見ると、地方都市の宿泊事業は回復とは程遠い状況です。雪まつり会場から足を伸ばして、函館や旭川も行こうと考える旅行者はまだ少なく、以前よりも行動範囲が狭まっているとも考えられます。特に地方空港では減便や国際線の休止などの影響を受け、客足が戻るにはまだ時間が掛かりそうです。

2.徐々に脱コロナの方針が鮮明に
日本政府は、3月13日からマスク着用のルールを緩和し、5月8日には新型コロナを5類感染症に移行する方針です。今までは観光事業者に対する救済策としてGoToトラベル、全国旅行支援などの形で国内客を対象とした割引施策が行われてきましたが、あらためて訪日外国人旅行客の誘致に移行していくものと考えられます。コロナ前における北海道のインバウンド客割合は全国と比較して低く、まだ対応に不慣れな中でどのように囲い込みを行うか、またそのモチベーションの創出がキーとなります。

3.宿泊業界は安売りかマーケティング投資を行うか分かれる
今後生き残るためには価格戦略だけに頼らず、外部の情報を集めながら適切なマーケティング投資が行えるかどうかが重要です。

函館などの一部エリアでは需要と供給のバランスが崩れ、他の地域よりも安く販売を行う傾向が見られました。中価格帯の宿泊施設では、実際のサービスよりもブランドや立地、販売価格が中核的な競争力となります。ブランドや立地はすぐに改善することが出来ないため、結果的に価格を下げて販売するしか手段が無くなります。
これでは収益率は上がらず状況は改善されません。

設備投資を行い、競争力のある温泉の改善を行う。他社とコラボした商品販売を行う。夕食メニューの再開発を行う。OTAでの販売の見せ方を改善するなど、その施設の状況に応じたマーケティング投資を行う必要があります。

本来の観光が行える状況になりつつあり、外部の情報を集めたり、外部ソリューションを取り入れ、新たな取り組みを行うフェーズとなりました。宿泊業界ではこの1年で状況を打開し生き残ることが出来るかどうか、本当の正念場を迎えています。

■統計について
・調査期間:2023年1月1日~31日
・調査方法:電話法(無作為に抽出した対象に対し、電話にて調査)
・調査対象:所在地が北海道にある宿泊施設で、10部屋以上ある施設(※1,214件)
・調査数:220件
・ヒヤリング項目:予約が埋まっている割合、いつまで埋まっているか、集客・コスト・リソースに課題が生じているか、予約媒体の割合、その他の課題が生じていないか等。


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