厚労省「宿泊療養マニュアル」の概要
1、はじめに
○新型コロナウイルス感染症の患者の増加に伴う医療提供体制の移行については、「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」(令和2年3月1日付け厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡)で、その考え方が示されたところである。
具体的に、医療提供体制(入院)については、入院患者が増大し、重症者等に対する入院医療の提供に支障をきたすと判断される場合には、
・PCR検査陽性であっても、軽症者等は、自宅での安静、療養を原則としつつ、
・家族構成(高齢者や基礎疾患を有する者等と同居しているか)等を確認した上で、高齢者や基礎疾患を有する者等への家族内感染のおそれがある場合には、入院措置を行うとされた。
○今後、さらに新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進み、入院患者の増加が見られた場合、より重症者に対する医療資源の確保が重要となることから、「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」(令和2年4月2日付け事務連絡)において、PCR検査陽性となった新型コロナウイルス感染症の軽症者等について、自治体の研修施設等や民間の宿泊施設での宿泊療養を実施する旨の方針が示されたところである。
○本マニュアルは、具体的な「宿泊療養」の実施に当たって、当該施設を運営する職員の作業手順や感染管理の留意点を示すとともに、宿泊療養を行う軽症者等(以下「宿泊軽症者等」という)に対する注意喚起事項等を具体的に明示することにより、安心・安全な療養環境を実現することを目的として、作成したものである。
○なお、本マニュアルは、作成日時点の知見を基に作成したものであり、今後の新型コロナウイルス感染症に関する知見の集積や地域における取り組み状況等を踏まえて、随時、見直しがあり得る旨を申し添える。
○また、本マニュアルは適切な宿泊療養の参考となる考え方を示したものであり、適切な感染防止策を講じることを前提に、宿泊施設の形態等に応じた工夫をされたい。様式についても、適宜改変し、工夫されたい。
(1)枠組みの概要
○症状等から入院が必要な状態ではないと考えられる軽症者等について、高齢者等の重症化するおそれが高い者等が同居しているなどの家族感染のリスクが高い場合は、入院措置とすることとしているが、病床確保の必要性等から入院措置が難しい場合には、代替手段として、宿泊療養を行う。
○医師や保健師等の専門職の関与が必須である一方で、これらの人材は貴重であるため、各自治体においては、医師や保健師等が専門職でなければならない業務に集中できるよう全庁的な体制で取り組むようにする必要がある。
○その際、自治体のみならず、医師会、薬剤師会等の医療系の各種団体や多くの民間の事業者等の協力を得て、取り組むことが望ましい。
○当該取り扱いについては、都道府県がとりまとめることとするため、管内の保健所設置市及び特別区分もとりまとめて枠組みを検討する。なお、都道府県と市区において協議が整った場合、それぞれ枠組みを整備する等の取り扱いをすることは差し支えない。
○都道府県において、自治体の研修施設、公共的な施設(国の研修施設等)、確保困難な場合には、ホテル等の民間宿泊施設等を借り上げ等により実施。
○宿泊軽症者等については、建物外へ外出できないため、食事の提供のほか、健康管理等を行う。
(2)対象者
○「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」(令和2年4月2日付け事務連絡)の「2、宿泊療養・自宅療養の対象及び解除の考え方」に基づき宿泊療養の対象とされた者。
2、都道府県における事前準備
(1)宿泊施設等の確保
(1)必要な居室数の確保
・入院施設の確保状況や軽症者等の発生状況等を見ながら、あらかじめ、必要な居室数を確保。
・必要居室数(職員用の居室等を含む)に応じ、建物単位またはフロア単位での借り上げを行う。(フロア単位での借り上げの場合、エレベーターの利用等について他の宿泊者と接触しないようにするなど、ゾーニング〈感染領域と非感染領域を区分けすること〉での工夫が必要)
・居室は個室とする。ただし、同居家族が同時に宿泊軽症者等として滞在する場合には、同室も可とする。
・基本的には、トイレ、入浴設備を含め、個室での対応が望ましいが、難しい場合には、共用も可能とする(宿泊軽症者等間での共用であり、職員との共用は避ける)。ただし、共用とする場合は、宿泊軽症者等ごとに入浴時間帯を変える等の対応が可能な状況で確保すること。
・生活支援等の対応を行う職員の宿泊用の居室(4(2)(1)参照)、事務局用の会議室等も確保。なお、職員、事務局用の部屋の選定に当たっては、感染防護の観点から、宿泊軽症者等と動線が分かれる位置に部屋を位置させることや換気状況等に配慮。
・自治体の研修施設等のほか、確保できない場合は、仮設居室の設置や民間施設の利用等も含めて検討する。
・感染防護の観点から、職員と宿泊軽症者の動線や他の宿泊者との動線が分けられるなどの適切なゾーニングを行うことができる施設を選定。具体的には、事前に、保健所または感染管理についての専門知識を有する者による下見を実施し、施設側と調整。(【ゾーニングに関する考え方】参照)
(2)宿泊施設等との調整
・入居者数の見込みに応じて、宿泊施設側と相談の上、必要な物品等の確保の役割分担を整理しておく。宿泊施設の職員等が当該業務に携わる場合にも、役割分担はあらかじめ明確にしておく。
(調整が必要な事項の例)
・感染管理=事前に保健所または感染管理についての専門知識を有する者の助言を得ながら、施設側と調整。マスクや長袖ガウン(身体を覆うことができ、破棄できる物で代替可〈カッパ等、以下同じ〉)など必要な個人防護具を確保する。
・食事の提供方法=宿泊施設側での提供の可否、提供できない場合の弁当業者等の事前契約等アレルギー食への対応状況、受渡方法の確認。
・日用品等の確保=宿泊施設にある備品(宿泊する職員用の備品を含む)、受渡方法の確認、不足分の確保方策の検討。
・リネン類=体液で汚れていないリネンを取り扱う際は、手袋とサージカルマスクを付け、一般的な家庭用洗剤等で洗濯し、完全に乾かすとの対応で差し支えない。体液で汚れたリネンを取り扱う際は、手袋、長袖ガウン、サージカルマスクをつけ、消毒(80度C以上の熱湯に10分間以上つけるまたは0.1%〈1000ppm〉次亜塩素酸)を行う。具体的には個別の宿泊施設との関係等で調整。
なお、宿泊施設等において消毒を行わずにクリーニング所に委託を行う場合は、指定洗濯物を取り扱えるクリーニング所に依頼する。
・利用中の共用部分の清掃、消毒=手袋、サージカルマスク、眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル。目を覆うことができる物で代替。シュノーケリングマスク等、以下同じ)。長袖ガウンを着用し、通常の清掃に加え、ドアノブなどよく触る部分やトイレは1日1回以上、0.05~0.1%の次亜塩素酸ナトリウムで清拭し、消毒を行うことを確認(清掃業者に委託も可)。施設利用者と清掃者が接触しないよう配慮。
・退所時の処理=個々の利用者の退去時の対応及び施設全体を撤収する場合の対応それぞれについて、片付け、清掃、消毒までの処理方法、費用等の調整。
・廃棄物の処理=宿泊軽症者等の食事ゴミ等は、基本的に感染性廃棄物として処理する等、ゴミの種類ごとに処理方法を確認。
・各居室との連絡方法=内線、館内放送等、居室内の施設利用者との連絡方法の確認等。
・在庫管理(備品等)=在庫管理の方法・場所等について、施設側と調整。
・急変時の対応=体調急変時の搬送手段と搬送先となる医療機関の確保、調整。
・事務局の作業のための備品の確保=机、椅子、ホワイトボード、PC、プリンター、複合機等、携帯電話(外部との連絡用)、食事提供のための作業台(弁当を1人分ずつビニール袋に分ける等のための長机等)等の確認、不足分の確保方策
・ストレスに対する支援体制=精神保健福祉センター等の活用を検討する。等
(3)搬送手段の確保
・宿泊施設までの移動は、公共交通機関を避ける観点から、民間救急車の活用や、宿泊施設の協力を得て、バスやレンタカーを用意しておくなど、可能な限り搬送手段を確保しておく。
(4)施設利用者の費用負担等の考え方の整理
・宿泊療養については、軽症者等が、高齢者、基礎疾患を有する方等の重症化するおそれがある者と同居している場合は、基本的には、当該高齢者等への感染を防止するため、入院による対応をとることが望ましいものの、病床確保等の必要性から、代替手段として行うものである。
こうした趣旨を踏まえると、例えば、入院措置と同様の費用負担とするなどが考えられるが、都道府県においては、宿泊軽症者等が負担すべき費用の範囲をあらかじめ定める。
(5)宿泊施設の所在する市町村等との調整
・上記のほか、宿泊施設の所在する市町村等の関係者と、必要な対応等について調整。
【ゾーニングに関する考え方】
○清潔な領域(清潔区域)とウイルスによって汚染されている領域(汚染区域)を明確に区分けすることが感染拡大防止のために重要である。
○区分けをした上で患者は汚染区域でのみ生活し、職員は極力清潔区域内で活動し、汚染区域に入る際は、必要な防護具を装着した上で活動する。
○宿泊軽症者等が宿泊施設に到着した際には、事務手続きや宿泊中の注意事項の説明を受けることが想定されるが、可能な限り広い空間の隅に受付を用意し、他の清潔区域と区分けしていることが分かるようにする。なお、受付を担当する職員は手袋、サージカルマスク・眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル)を着用し、手指衛生を保つ。宿泊軽症者等側もサージカルマスクを着用。
○宿泊軽症者等が生活する場と職員が滞在する場所のフロアを分けるなど、宿泊軽症者等と職員が接触することのないよう、配慮する。
○検体採取など感染リスクの高い医療行為をする場合は、手袋、サージカルマスク等、長そでガウン・眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル)を着用。原則として1回ごとに取り換える。使用した防護具を着脱する場所は他の場所と明確に分け、未使用の防護具は床ではなく、机上に置く。また、特に、脱ぐ場所は汚染領域となるため、テープやロープで仕切りをし、他の職員がその領域に誤って立ち入らないようにする。
○脱いだ防護具は汚染されているため、危険マークや赤色など目立つ形のビニール袋に入れ、汚染物が袋の外に出ないよう、配慮する。
○宿泊軽症者等がエレベーターを使用する場合、使用前後で必ずボタンを消毒する。また、職員が使用する場合も前後で手指をアルコール消毒する。
(2)利用者の調整(都道府県の調整窓口)
・宿泊療養の対象となり得る患者が確認された場合に、医療機関が連絡すべき都道府県の連絡先をあらかじめ定め、医療機関に周知。
・PCR検査実施時、診断時等に、患者から聴取する事項等を整理し、医療機関へ配布。
(3)宿泊施設における運営を担当する人員体制の確保
・以下のような体制が必要になることを見据えて、事前に施設運営を担当する人員体制を調整しておく。なお、以下の体制については、宿泊施設や業者等の体制や地域での宿泊療養施設数等に応じて、適宜縮小、拡充すること。
・施設運営に携わる職員に対しては、あらかじめ、保健所または感染管理に知見を有する医師により、感染防護対策について十分な指導を行う。
・施設運営に携わる職員の体調急変時の連絡先、連絡方法を決め、職員に説明・周知。
(必要な体制と役割分担例)
(1)全体統括責任者
(2)総括ロジ班(全体調整)
・宿泊者名簿等の管理
・宿泊者に対するお知らせ(紙、放送、アプリ等)
・鍵の管理
・事務局員の管理
・活動記録の作成
・施設利用者からの費用負担についての全体管理等
(3)保健医療班(宿泊者の健康管理)
※保健師または看護師を配置(日中は常駐、夜間はオンコールでの対応としても可)。医師はオンコール以上での対応(日中・夜間)。必要に応じ、薬剤師も確保(近辺の薬局との連携での対応も可)。
・宿泊者の健康管理(健康状態の把握)
・宿泊者の健康面での相談等への対応
・急患発生時の対応
・事務局員に対する感染防護対策の指導
・衛生資材の在庫管理、確保等
(4)食事班
・食事の手配(宿泊者及び支援者用)
・食事内容の管理(熱量、栄養、アレルギー等特別の配慮を要する者への対応)について、業者との調整
(5)生活支援班
・日用品、消耗品、リネン類(タオル、シーツ等)の管理、業者との調整、受け取り等
・宿泊者からの要望対応(健康関連は保健医療班)
・宿泊者への荷物の受け取り
(6)物資等配布回収班
・居室への食事、荷物等の配布
・ゴミ、使用済みリネン類の回収
【職員に対する感染予防策で伝達すべき事項に関する考え方】=略
3、宿泊療養施設の利用者が発生した場合の流れ
(1)宿泊施設までの流れ
・医療機関において、新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者の診療を行い、入院を要する症状でないと判断され、同居家族等の状況等から、宿泊療養を要することが確認される場合、都道府県等の窓口に連絡。その際、PCR検査結果の出る時期についても共有。保健所設置市及び特別区にあっては、必要に応じ、都道府県に共有。
・都道府県において、同居家族の状況等の確認。入院病床の状況や宿泊療養の入居可能状況を踏まえ、宿泊療養または自宅療養の調整を行う(ただし、自宅療養は、当該患者と同居家族等の生活空間を完全に分けることができる場合に限る)。
※自宅療養に当たっての生活空間の区分けは、高齢者等である同居家族が近くの親戚宅等に居所移動を行うことによる対応でも可。その可否の判断等に当たっては、心身の状況や、その特性、移動の困難度等について丁寧に聞き取りを行い、かつ、説明を行う。
・PCR検査結果が出るまでの間、都道府県においては、宿泊療養先の候補の選定等の準備を行い、患者は、日用品の準備等の宿泊療養の準備を行う。
・医療機関においては、食事アレルギー、健康情報等や服用中の薬剤の必要事項の確認。服用中の薬剤がある場合は、2~3週間分(宿泊療養期間中分)を処方。調剤された薬剤の薬局等での受け取りは、宿泊療養の関係職員が行う(宿泊施設へ移動する前に医療機関で受け取れる場合には、施設利用者が自身で受け取る)。
・施設利用者に対し、都道府県、宿泊施設等に共有する旨を伝えた上で、都道府県に情報を共有する。
・PCR検査結果について、医療機関から都道府県の窓口に連絡。確定患者かつ軽症者等であることが確認された場合には、都道府県において宿泊施設へ連絡、受入準備を依頼。
・都道府県において搬送手段を手配。
・宿泊施設への搬送までに時間がかかることが見込まれる場合には、都道府県から医療機関に対し、軽症者等の待機場所の確保を依頼。
・都道府県において、宿泊施設に関する注意事項や、事前に宿泊施設に準備されている備品と利用者負担が必要な物のリストを作成し、医療機関にいる間に渡すなど、可能な限り早い段階で、施設利用者に渡しておくことが望ましい。
(2)宿泊施設等における準備
・宿泊予定の部屋、施設側で準備することとなっている備品等の準備。
4、宿泊施設等における対応
(1)施設利用者の受け入れ
・到着後、施設利用者への説明(利用者向けの説明資料を用意し、説明。あわせて説明事項の内容について承諾した旨の書面での同意を取得)。
※想定される説明内容の例
・入所中は外出せず、職員の指示に従うこと。
・入所中の緊急連絡先の確認、退所後の居所、費用の請求先の確認。
・施設利用者が負担すべき費用の範囲。
・健康報告の方法。特に発熱時には直ちに報告することを依頼。
・緊急時の対応。
・食事、洗濯等の生活基本情報。
・施設内の利用可能部分や利用時間。
・宿泊軽症者等同士の接触について全面禁止することは要しないが、なるべく接触は減らす。居室から出る場合(共用部分〈廊下等〉の利用時)には、必ずサージカルマスクを着用する。他の施設利用者と2メートル以上の間隔を空ける等の配慮(ただし、外部の人との面会は禁止)。
・飲酒・喫煙禁止。
・ネットショッピングを行う場合の受け取り等の取り扱い。
・宿泊施設に準備されている物品と、そのうち利用者負担が発生する物のリストの説明。
・全体的な総括説明を行う職員と保健師の2名以上で対応。
・対面で対応する場合には、職員(看護師等を含む)は、手袋、サージカルマスク、眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル)を着用。宿泊軽症者等側もサージカルマスクを着用。換気のよい広めの部屋で実施する。
・入所時期、退所予定時期、部屋割りは、台帳等を作成し管理。
・可能であれば入所者の居室は建物の中で一定地域に集めて配置する。入居時も、近い場所(同じフロア、隣室など)の部屋から順に入室させる(コホーティング)。
(2)宿泊中の対応
(1)基本的な考え方
・標準予防策に加え、飛沫接触予防策を原則実施する。
・建物外(フロア単位管理の場合は、フロア)から出ないように指導、協力のアナウンスをする。
・十分換気を行うことについて、指導・協力のアナウンスをする。
・体温計は各部屋一つ配布。
・要望があるときの連絡先を定め、基本的には電話で対応する。
・対面しての説明時は、職員は手袋、サージカルマスク・眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル)をつける。宿泊軽症者等側もサージカルマスクを着用。
・生活支援等の対応として、職員が24時間常駐。ただし、宿泊軽症者等からの連絡は、原則として、朝食時間より前から夕食時間より後までの間(例7時~21時など)に、内線電話等で受け付け、夜間は緊急時(特に体調変化については必ず)のみ受け付けることとしても差し支えない。なお、専門職の体制は、2(3)(2)保健医療班のとおり。
(2)生活面のサポート
・宿泊軽症者等は、宿泊療養中は外出できないため、日常生活を維持するためのサポート(物の調達、配布、回収など)を全面的に対応する。
・宿泊軽症者等へのお知らせは手紙や電話等でこまめに知らせることが望ましい(人と接する機会が減少していることからくる不安の軽減にもつながる)。
・原則として、職員は、宿泊療養開始時の説明等を除き、宿泊軽症者等と顔を合わせて対応することはしない。
・利用者は時間を区切った上で、居室から出られることとする(ただし、建物内に限る)。その際、宿泊軽症者等はサージカルマスクを必ず着用する。宿泊軽症者等同士の接触について全面禁止することは要しないが、なるべく接触は減らすようにする。居室から出られる時間帯については、職員による食事等の配布時間帯を避けるなど、職員と接触しないような時間帯で設定する。
・感染予防策(宿泊軽症者等と対面で接触する場合以外)は、サージカルマスクと手指衛生で対応。
・食事やリネンは職員が配布するが、受け渡しは、直接行わない。
・アレルギー対応が必要な場合の食事は特別のメニューでの対応。
・食事は、原則として、各部屋の前に届ける。ただし、宿泊軽症者等が無症状である場合は、宿泊軽症者等にマスク着用を徹底させた上で、決められた時間帯に自ら食事置き場に取りに行くなど、職員と接触しない形での配布が可能であれば、配布方法を工夫しても差し支えない。
・リネン、タオルについても、食事と同様の取り扱いとする。
・ゴミについては、ゴミ袋を配布し、部屋の前に置いたものを職員が回収する。ただし、食事と同様に、宿泊軽症者等が無症状である場合には、職員が軽症者等と接触することなく、衛生的に回収することが可能であれば、各フロアで施設利用者が自ら入れるなどの対応を取っても差し支えない。
・居室内の清掃は、必要に応じ、宿泊軽症者等自身が行う。入居時に簡単な掃除用具を配布。トイレや洗面台等の掃除道具等も配布しておくことが望ましい。
・洗濯は、必要に応じ、宿泊軽症者等が居室にて手洗いを行う(宿泊施設に利用できる洗濯機がある場合には、洗濯機を利用)。入居時に洗剤、洗濯物干しハンガー等の必要な備品を希望に応じて配布。
・宿泊軽症者等は、原則として居室内で過ごすことになるため、各居室には、Wi―Fi環境及びテレビを準備することが望ましい。また、図書館等とも連携して、図書の貸出等の検討も行う。
・ホテル等の施設内においては散歩等の定期的な軽い運動を推奨する。時間を決めて居室の外や宿泊施設の敷地内のスペースで歩くことを勧めることや軽い体操の方法のリーフレットを配布するなどを行うことが望ましい。
・閉鎖環境において、病院に入院するよりも他者との接触機会が少ないことから、必要な対応を検討する。具体的には、専門家とも相談の上、精神保健福祉センター等の協力を得ることを検討する。
・その他の備品として、ビジネスホテル等の通常の備品(歯ブラシ、ドライヤー、ポット、お茶・コーヒー等)を参考に、必要なものを準備しておく
ことが望ましい。
※タオル、歯ブラシ、お茶、コーヒー等の日用品等の利用者負担については、あらかじめ負担範囲を定めておく。
(3)健康管理
・看護師、保健師は、居室へ1日1回は電話等により連絡し、健康状態を確認。確認に当たっては、入居時に配布する健康観察票(健康管理アプリ等も可)の項目に基づき、宿泊軽症者等から聞き取りを行う。聞き取った内容は、健康観察票と同じ様式に記録する。
・体温は1日2回測り、看護師、保健師による健康状態の確認の際に、あわせて聞き取る。ただし、発熱時には、直ちに事務局に報告してもらうようにする。
・自覚症状があるなどの申告があった場合に、前述の予防策を遵守しつつ、対面での健康観察を行う。
・熱がある、喉が痛いなどの新型コロナウイルス感染症の増悪が疑われる場合や、それ以外の疾患が疑われる場合は、医師に連絡し、指示を受ける。医師による診察は、電話等情報通信機器による診療等の活用を検討しても差し支えない。必要に応じて、医薬品の処方(薬局との連携による対応も含む)や、症状、容態によっては、医療機関への救急搬送を行う。なお、搬送の段取りや搬送先については、あらかじめ、市町村の救急担当部署や搬送先候補となる医療機関と調整しておく。
※療養施設の運用に携わっている期間は、職員についても毎日体温確認、体調チェックは行う。
・医薬品が処方され、薬局で調剤する場合は、薬局における服薬指導は電話等情報通信機器を用いて行うことも可。電話等情報通信機器を用いた処方、処方箋の取り扱い及びその調剤についても次の事務連絡によるものとする。
(4)ゴミの対応
・弁当のゴミや非医療従事者が使用した手袋などは、感染性廃棄物として廃棄する。
・客室からのゴミは、前もって配布した大型のビニール袋に入れてもらい、客室の外に出してもらう形で回収。職員が、手袋、サージカルマスク、長袖ガウンをつけて回収。
・職員のPPEについては、医療廃棄物として対応する。
5、施設利用者の退所
(1)退所基準
・原則として、退院基準と同様の基準により、宿泊療養を解除。基準を満たすことが確認されたときに、宿泊軽症者等に帰宅可能である旨を伝える。
※退院については、症状の軽快が確認されてから24時間後にPCR検査を実施し、陰転化が確認された場合には、当該検査に係る検体採取から24時間以後に再度検体採取を実施。2回連続でPCR検査での陰性が確認された場合に、退院可能。
・ただし、宿泊療養中、自宅療養中の軽症者等にPCR検査を実施する体制をとることにより、重症者に対する医療提供に支障が生じるおそれがある場合には、宿泊療養を開始した日から14日間経過したときに、解除することも可能。その際、当該14日間も、保健師、看護師による毎日の健康観察を実施し、症状に大きな変化がある等の場合は、医師の診察を受け、必要な場合には入院対応を行う。
・PCR検査については、体温や自覚症状等を把握した上で、軽快していると保健医療班において考えられる場合は、帰国者・接触者外来等PCR検査実施可能な医療機関と調整の上、搬送し、医師の判断により、検査を実施する。
なお、適切な感染防御を行った上で、医師が宿泊施設に赴いて検体採取することも可能とする。
(2)施設利用者の退所手順
・施設利用者は、必要な荷物を片付ける。
・健康状況が変化した場合の連絡先を伝える(退所の基準を確認した医療機関で連絡先を伝えてもよい)。
・宿泊費の自己負担の費用負担の伝達(振り込み先等)または追って請求する旨を伝える。
(3)退去後の居室の清掃等
・退去後は、室内の家具、備品の消毒及び十分な換気を行う。
・清掃は、通常の宿泊施設等と同様の清掃に加え、次亜塩素酸0.1%溶液及びアルコールによりドアの取っ手やノブ、ベッド柵等を拭く。
・清掃、消毒の際は、手袋、サージカルマスク、眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル)、長袖ガウンを使用して行う。
・リネンは、体液で汚れていない場合は、手袋とサージカルマスクをつけ、一般的な家庭用洗剤等で洗濯し、完全に乾かすとの対応で差し支えない。体液で汚れたリネンを取り扱う際は、手袋、長袖ガウン、サージカルマスクをつけ、消毒(80度C以上の熱湯に10分間以上つけるまたは0.1%〈1000ppm〉次亜塩素酸)を行う。具体的には個別の宿泊施設との関係等で調整。
6、宿泊施設借り上げを終了する際の対応
(1)清掃等
○5(3)の退去後の居室の清掃等と同様の対応でも差し支えないが、施設側と調整の上、必要に応じて消毒等適切な対応を行う。
(2)運営に携わった職員の健康管理
○運営に携わった職員については、感染予防策を適切に取っている場合、濃厚接触者とはならないが、体調に変化があった場合には、速やかに電話相談し適切な対応を取ることとする。