ドクタートラストは17日、嘱託産業医向け「新型コロナワクチンの職域接種」アンケート結果を発表した。
株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)では、「新型コロナワクチンの職域接種」について嘱託産業医にアンケート調査を実施し、 167人の先生から回答をいただきました。(調査期間:6月8日~6月16日)
【結果の概要】
① 企業から嘱託産業医に寄せられる相談の約6割は「社員にワクチンを打ってほしい」
② 「職域接種は難しい」と考えている嘱託産業医が3割弱
③ 一方で、半数以上の嘱託産業医が「職域接種」に協力したい意向
④ 半数近くの嘱託産業医が「職域接種の情報が不足している」と感じている
⑤ 6割以上の嘱託産業医が「ワクチン接種に協力できる日数は1か月あたり1~5日」と回答
【アンケート結果】
1. 22%の企業から産業医に「新型コロナワクチンの職域接種」について問い合わせあり
図1
嘱託産業医とは、従業員50人以上1,000人未満の事業場で選任が義務づけられており、医学に関する専門的な立場から、 職場で労働者の健康管理等を行う医師のことをいいます。毎月1回、事業場を訪問し、職場巡視や従業員との面談を行います(従業員1,000人以上の事業場は常勤の専属産業医の選任が必要)。
嘱託産業医は、病院やクリニックなどで診療を行いながら、複数の企業、事業場へ訪問するのが一般的で、回答いただいた産業医の訪問企業・事業場数は延べ2,049企業に上ります。このうち、「ワクチンに関する問い合わせ」は全体のおよそ22%にあたる456社から問い合わせがありました。
2. 問い合わせ内容の63%は「社員にワクチンを打ってほしい」
図2
企業から嘱託産業医への問い合わせとして最も多かったのは「社員にワクチンを打ってほしい」で61%、次いで「ワクチンの成分や副作用などについての質問等」が18%、「職域接種が可能かどうか」が9%でした。
<その他の回答内容(一部抜粋)>
・ ワクチンを打ってくれる開業医や病院を紹介してほしい
・ ワクチン接種時の勤怠扱いはどうすればいいか
・ 社員にワクチン接種を受けさせた場合の会社としての対応はどうすればいいか
・ 看護師や医療器具の準備等の調達
・ 実施の方法について
・ 産業医の接種が無理であれば、接種してくれる機関などを教えてほしい
3. 28%が「嘱託産業医ではワクチンの職域接種は難しい」と回答
図3
相談を受けた嘱託産業医の、企業側への回答として最も多いのでは「現状の情報、契約内容、設備等などから、嘱託産業医では対応は難しいと伝えている」で28%、次いで「契約面・条件面で対応が可能になれば接種可能、できる限り協力したいと伝えている」が20%、「1,000人以下の会社ではまだ見通しはたっていないため何も回答できないと伝えている」、「国が発表している職域接種に関するHPなどを案内し、そこから情報を得て企業側で判断するように回答している」がそれぞれ7%でした。
<その他の回答内容(一部抜粋)>
・ 接種を希望しない職員に対してのハラスメントがないよう指導している
・ 逆にこちらから企業の対応をせっついている
・ 県内の大規模接種会場などの依頼もあり、職場での接種への協力は日程に制約があるということを伝えている
・ 今は地域のワクチン接種業務で多忙のため職域接種には対応できないと回答している
・ 他の業務ができなくなるのが企業として構わないなら、勤務時間を接種に当てるのは可能と伝えている
4. 56%が「職域接種に協力したい」と回答
図4
図4のとおり、職域接種について産業医の立場から「全面的に協力したい」が46%、また「環境や条件などの不安はあるが、政府からの要請があれば行うつもり」が10%で、56%が「ワクチンの職域接種」への協力に前向きであることがわかりました。
その一方で、「救命装置などの必要な条件が揃っていない場所で産業医がワクチンを接種するのはやめるべき、断る」の回答も35%ありました。
<その他の回答内容(一部抜粋)>
・職域接種は強制を伴う可能性が高いので、協力できない
・協力したいが、追加訪問する日程が準備できない
・そもそも産業医の委託契約外の業務であると考える
図5
また、「ワクチンの職域接種」に対して「全面的に協力したい」と回答した方に、「職域接種の依頼があった場合、1ヶ月間のうち何日くらい接種の稼働が可能か」を尋ねたところ、図5のとおり「1〜5日程度」が64%「2.6〜10日程度」が13%、「可能な限り調整する」が8%でした。
<その他の回答内容(一部抜粋)>
・ 7日くらいだが、土日に限る、契約先企業の訪問時間だと1時間から10時間まであるが、とても全員に接種するには人手と時間が足りない
・ 居住地の県内なら5日くらい対応可能
・ 4日程度。現在訪問している企業だけで精一杯です
・ 毎日でも24時間でも。夜中でも国民のために対応します
5. 49%が「情報がまったくなくて困っている」
図6
「ワクチンの職域接種」への政府や各自治体からの情報について尋ねたところ、図6のとおり「情報がまったくなくて困っている」が49%、次いで「産業医同士や他のルートからなんとか情報を集めている」が40%、「ちゃんと最新情報を受け取っている」が7%でした。
<その他の回答内容(一部抜粋)>
・ 企業に来た案内を見せてもらい把握している
・ 情報は届いていない。医師会が会員へ情報を流すべきと思う
・ 大学関連より情報をもらっている
6. 26%が「接種後のアナフィラキシー対応や責任の所在」に課題を感じている
図7
「ワクチンの職域接種」の課題は「ワクチン接種後にアナフィラキシーが発生した時の対応や責任の所在が心配」が26%、次いで「マンパワーが不足している」、「集団免疫獲得のためには職域接種が有効。産業医が貢献できるのであれば、全面的に協力したい」がそれぞれ18%でした。
<その他の回答内容(一部抜粋)>
・ 嘱託産業医の場合、スケジュール確保が難しい
・ 医療機関側への説明が遅れている影響で、企業から依頼してもなかなか引き受けてもらいにくい
・ 副反応が出た際の勤怠ルールなど企業が早急に規定を作る必要がある
・ このワクチン混乱は今だけだと思うのでみんなで乗り切りたい
・ クリニックや病院ですらコロナのワクチン接種に関して十分な安全体制をしくのがまだまだ難しい中、一般企業の会議室などでの接種には課題が多々あると感じている
・ 政府に対して、職域という言い方をして企業に丸投げするのは無責任と感じている
【まとめ】
今回のアンケート結果から多くの嘱託産業医は、ワクチン接種に「協力したい」と前向きに考えていることがわかります。その一方でワクチン接種の要請があった場合、1ヶ月に稼働できる日数は1〜5日と6割以上が回答するなど、一般診療も請け負う嘱託産業医の場合はスケジュール確保が課題として浮き彫りになりました。
【調査対象】
<調査概要>
アンケート実施期間:2021年6月8日~2021年6月16日
有効回答:167人
対象者 :ドクタートラストの登録嘱託産業医
回答方法:WEBを利用したアンケート調査