【データ】消費者動向調査「第10回EY Future Consumer Index」


 EYは8月22日、消費者動向調査「第10回EY Future Consumer Index」を発表した。

・パンデミック中盤以降、消費者は初めてサステナビリティよりアフォーダビリティ(値ごろ感)を優先しはじめている

・新興国市場と比較して、欧米市場は将来の経済見通しに悲観的である

・64%の消費者が最新のファッショントレンドを軽視しており、ファストファッションと顧客維持の課題が増大している

 

EYは最新の消費者動向調査「第10回EY Future Consumer Index(FCI)」(以下、「本調査」)を発表しました。本調査によると、生活費の高騰と地政学的不確実性により経済見通しが厳しくなる中、世界中の消費者は、家計の管理を優先するようになり、長い経済的圧迫に対して身を固める準備を始めています。

2022年5月18日から6月7日にかけて18,000人の消費者を対象に実施した本調査によると、回答者の79%が家計が心配だと回答し、62%が今後6カ月間に生活費がさらに増加すると予想していることがわかりました。こうした家計に不安を抱えている回答者は、低所得者層で87%、中所得者層で77%、高所得者層で64%と、すべての所得階層で過半数に及んでいます。

 

消費者の将来に対する自信低下により、新興国やその他の市場と比較して、欧米市場の経済見通しは著しく悲観的であることが明らかになりました。米国(54%)、英国(65%)、ドイツ(84%)、フランス(85%)では、ブラジル(21%)、インド(24%)、サウジアラビア(37%)、中国(38%)に比べ、今後3年間は生活が変わらないか悪くなると回答した消費者が多くなっています。パンデミックにより浸透した「常時緊急事態思考」が続くディスラプションに直面する中、世界中の消費者は、自身の価値観やライフスタイルを維持するために支出をコントロールし、優先順位を再調整することにますます重点を置くようになっています。

 

本調査では、毎週のように生活費が高騰する中、消費者の3人に1人以上(35%)が生活費以外に使えるお金が十分にあるか心配だと回答しており、消費にアフォーダビリティ(値ごろ感)を求めていることを示しています。消費者は、単にコスト削減のために生活必需品を買い控えるのではなく、新しいブランドを試したり(33%)、プライベートブランドに切り替えており(21%)、最終的にはブランドの3分の1がリスクに晒されています。

 

EY Global ConsumerのリーダーであるKristina Rogersのコメント:

「世界の多くの市場で景気後退の危機が叫ばれるなか、消費財企業はさらなる経済的圧力に備えています。パンデミックの時と同様、消費者は迅速に優先順位を変えながらディスラプションに適応していますが、現在、特に欧州市場において、経済見通しに対する悲観的な見方が広がっています」

 

サステナビリティの維持とトレンド:

環境に配慮した生活をすべきという機運や圧力が高まっているにもかかわらず、消費者のそうした努力は、生活費の高騰によって阻害されています。世界の回答者の67%が、サステナブルな商品や製品の価格高騰により、購入が非常に難しくなっていると回答しています。しかし、2021年5月と比較すると、サステナブルな製品から低品質を連想したり(2021年5月:67% vs 2022年5・6月:58%)、耐久性が低いと連想する(58% vs 50%)回答者が減り、製造企業によるサステナブルな製品の情報を信頼する回答者が増えており(信頼性の不足は59%から51%に減少)、サステナビリティに対する消費者のセンチメントは改善されています。より積極的に中古品を購買すると回答した回答者が36%と2022年2月の30%から増加し、回答者の87%が食品を無駄にしないように心がける新しい意識的な消費方法を求めています。

 

アフォーダビリティ(値ごろ感)が求められる現在の需要を背景に、消費者は不要な支出を控え、今あるものをより持続可能なものにする代替品を模索しています。世界の回答者の64%が季節のファッショントレンドを追求する必要性を感じなくなったと回答し、さらに多くの回答者(69%)が持ち物を買い替えるのではなく修理しようと試みており、ファッション意識の高い消費者をターゲットとするファストファッション小売業の課題となっています。また、回答者の60%が、自信を高めるために美容や化粧品に頼ることが少なくなったと回答しています。この結果は2021年10月から7%の増加です。

 

Rogersは次のように述べています。

「消費者は生活費の高騰に対応するための工夫を模索していますが、企業はサステナビリティへの取り組みの歩みを止めてはなりません。消費財企業は、買い替えの回数やブランドの環境負荷を減らす修理保証を提供するなど、顧客維持のための新しい機会を提供する必要があります。消費者はサステナビリティに妥協しているのではなく、自分たちの価値観を実現するための代替方法を模索しており、企業はそうした機運を支援しなければなりません。経済的困難が緩和されれば、消費者は信頼できる企業や同じ価値観を持つ企業を支持するようになるでしょう」

 

オンラインデータ保護に躊躇する消費者:

本調査では、新しいデジタル体験の探索に関心を持つ回答者が、少数ながら増加していることが明らかになりました。回答者の約10人に1人(12%)がデジタル通貨を利用し(ミレニアル世代では18%、Z世代では15%)、メタバースを体験したり(9%)、バーチャル商品の購入を経験しており(8%)、主に若年層と富裕層の消費者がそうした動向を牽引しています。

 

しかし、デジタルの世界が広がるのに伴って、消費者は自分のデータを共有することに非常に慎重になってきています。世界の回答者の86%が個人情報の盗難/詐欺が心配であると回答し、72%がウェブサイト/アプリ上で個人情報を共有する際に不安を感じていると回答しています。また、80%がアプリによる行動追跡を懸念しており、すべての世代でその傾向が強くなっています。

 

Rogersは次のように述べています。

「パンデミックによるロックダウンの際にデジタルを活用した行動を学んだ消費者が、再び節約の手段としてデジタルを活用しています。より新しい形態のデジタル製品やサービスの採用は、ビジネスのすべての要素においてサイバーセキュリティへの投資を確保し、ブランド体験の差別化、革新、より多くの消費者データの取得、デジタルでの製品テスト、デジタル製品ラインの構築などのチャネル開発に投資する新たな機会を企業にもたらしています。

小売業界は、再び岐路に立たされています。企業は、将来の消費者に備え、持続可能なイノベーションとデータ保護の双方を戦略の基盤に組み込む必要があります。消費者は家計をコントロールし、インフレ率の上昇を乗り切ろうとしていますが、ブランドはロイヤリティの維持と信頼を構築し、顧客の可処分所得が増加して消費が戻ってきた際に、利益を確保する必要があります」

 

EY日本地区 消費財・小売マーケット・セグメントのリーダーである平元 達也(ひらもと たつや)のコメント:

「地政学リスクの高まり、インフレの急激な進行により、消費者は生活防衛を優先的に考え、より一層、選択的な消費傾向を強めています。今後3年間の生活環境見通しにおいて、日本の回答者の40%が悪化すると回答しており、良くなると回答した19%を相殺した数値マイナス21%(良くなる-悪化)は全世界のプラス14%を大きく下回ります。また、今後数年間の生活必需品の値上がりに対しても、総じて、日本の消費者はより悲観的です。コロナ禍によるパンデミック(世界的大流行)を経験した消費者は、将来に対する不安を抱えながら、自らの消費行動を進化させてきました。環境に応じ、自らの消費行動を変容させる柔軟性を持ち、過去の消費パターンにとらわれないという特徴が見られます。その中で、サステナブルな消費行動に対する意識は向上しています。また、デジタル通貨の使用、メタバースなどのデジタル空間での消費、仮想商品の消費といった新たな波も、景気動向に関わらず拡大しています。日本においても、消費者が費用対効果に納得できるサステナブルな商品やサービスの提供、デジタルを活用した顧客体験の提供が、消費財企業にとっての重要な差別化要因となり始めています」

 

EY Future Consumer Indexの最新版は以下をご覧ください。Future Consumer Index:危機的状況に消費者は対応している


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