九州経済調査協会は5月24日、2022年のゴールデンウィーク期間における全国の人流動向を発表した。
本レポートでは、当会が提供している人流モニタリングプラットフォーム「おでかけウォッチャー(※2)」の掲載データ の一部を集約した「おでかけ指数 」により、2022年のゴールデンウィーク期間における全国の人流動向を分析しました。
おでかけウォッチャーに掲載している人流(ある地域への来訪者数、およびある地域からの出発者数)を指数化して公表するものです。コロナ禍前にあたる2019年の日平均を100として指数化したもので、全国、地域ブロック、都道府県、市区町村の単位で公表しています。更新タイミングは毎週木曜日です。
※おでかけ指数の開発について、詳細は九州経済調査月報2022年5月号(小栁真二「新たな人流指標『おでかけ指数』の開発」, https://www.kerc.or.jp/sp/20220511_2.pdf )で紹介しています。
■全国・九州の動向:都道府県単位では2019年に対し3~5割減程度まで回復
2022年GW(4/29~5/5)におけるおでかけ指数(来訪地側・原数値の期間平均値)は、全国98.1、九州(7県)123.3となり、全国ではコロナ禍前の2019年通年の平均並み、九州ではそれを上回る人流が生じました。2019年GWと比較すると、全国で▲48.3%で5割強程度の人流回復となるなか、九州は▲44.5%で3.8%ポイント高く、相対的に強い回復傾向となっています。
地域別に2022年GWの指数をみると、ブロック別では甲信越(157.9)や四国(156.9)、北陸(153.0)、都道府県別では高知県(186.5)、鳥取県(177.9)、富山県(176.3)などで特に高くなっています(表1)。全体としてみれば、地方圏で高く、東京都(48.7)をはじめとする南関東(60.2)および大阪府(65.1)、愛知県(83.8)のように三大都市で低い結果となりました。札仙広福の広域中心都市を含む4道県では、福岡県が96.0で最も低く、他はそれぞれ北海道142.4、宮城県112.7、広島県126.3と高水準となっています。2019年GW比では、前述の通り全国が▲48.3%であるのに対し、甲信越(▲42.1%)、北陸(▲43.6%)、北海道(▲44.3%)の回復幅が比較的大きい傾向です。一方、前年比でみれば、京都府(+230.2%)や大阪府(210.6%)と200%超、東京都で+177.7%と、前年の反動から大都市において増加幅が大きくなっています。
なお、九州の2022年GWの指数は福岡県が96.0と最も低く、150を超える大分県、長崎県、熊本県、宮崎県と異なる状況がみられます。三大都市圏以外の地方圏に属する都道府県のなかで100を下回っているのは沖縄県(83.6)と福岡県のみであり、特に沖縄県は東京都、大阪府に次ぐワースト3位で依然として戻りが弱い状況です。
■九州地域における市区町村別の動向:イベント開催が人出増加に貢献
九州地域(九州・沖縄・山口)における市区町村別のおでかけ指数は、算出対象296市区町村のうち199市区町村(67.2%)で100以上、62市区町村(20.9%)で200以上となりました。また2019年GWと比較すると、小規模な自治体を中心に13市町村(4.4%)で2019年GWを上回っています。
市区町村別のおでかけ指数を地図で示すと図2の通りとなります。全体的として都市部で低く、山間部などで高い傾向があります。
次に、2019年の日平均来訪者数が1,000人以上の市区町村に絞り、九州地域の2022年GWにおけるおでかけ指数のトップ30(表2)、および2019年GWに対する2022年GWのおでかけ指数の比のトップ30(表3)を示しました。
指数が1~3位の長崎県波佐見町(1251.0)、佐賀県有田町(881.7)、福岡県東峰村(474.3)では、2019年通年平均の4.7~12.5倍の来訪者数が観測されました。福岡県東峰村(▲0.8%)や佐賀県有田町(▲4.2%)で2019年GWに迫る水準に回復したほか、長崎県波佐見町(同▲15.5%)でも85%程度まで回復しました。これらの町村ではいずれも陶器に関するイベント(波佐見陶器まつり(4/29~5/5)、有田陶器市(4/29~5/5)、春の民陶むら祭(5/1~5/8))が3年ぶりに開催されたという共通点があります。2022年GWはコロナ禍後で初めて緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの制限がないGWとなり、久しぶりの開催となった集客イベントが人流増加に貢献しました。これら3町村の推移は図3~5の通りであり、イベント開催の有無によって大きな差が出たことを確認できます。
また2019年GW比の上位の市町村では、対馬市(+20.4%)とうきは市(+13.5%)でプラス、つまり2019年を上回る来訪者数となりました。対馬市は元々韓国からの観光客が多い地域でしたが、2019年の韓国との関係悪化以後は客数が大幅に落ち込み、さらにコロナ禍が追い打ちとなっていました。そこで国内客の集客に力を入れたところ、Go Toトラベルの後押しがあった2020年秋や、感染が落ち着いていた2021年11~12月には指数が100を超えていました(図6)。今回のGWでも5/2-5/3にかけて200を超えるなど集客に成功しているといえます。またうきは市の推移を確認すると、コンスタントに100を超えているなど、コロナ禍にあっても安定した集客を確保できていることがうかがえます(図7)。
ランク外ではありますが、今回のGWは都市部においても、2020~2021年に中止されていたイベントが開催されました。例えば福岡市では、博多どんたく(福岡市民の祭り 博多どんたく港まつり)が規模を縮小しながらも開催されました。開催期間の5/3-5/4にかけて、会場となった博多区では指数が80台後半、中央区では120台前半まで上昇しています。もともと人流が多い都市部であり、また博多どんたくは市民参加型のイベントで観客も市民が多いと想定される[1]ことから、前述の市町村ほど顕著な上昇ではありませんが、開催期間中はGW期間のなかでも高い値となっており、集客に大きな効果があったと考えられます。
[1] おでかけ指数が対象としているのは、発地(居住地域)から20km離れた場所からの来訪者であるため、概ね福岡都市圏からの来訪者はカウントされていません。
レポート全文:https://www.kerc.or.jp/report/2022/05/5232022.html
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