【データ】2022年ジェネラルカウンセルのサステナビリティに関する調査 


 EYは9日、2022年ジェネラルカウンセルのサステナビリティに関する調査の結果を発表した。

・ジェネラルカウンセル(最高法務責任者)は、ビジネスリーダーがサステナビリティに関するリスクを十分に理解していないと感じている

・法務部門はサステナビリティに関するレピュテーションリスクを最も懸念しているが、依然としてコンプライアンスにより重点を置いている

・規制当局からの明確な指針がない場合のリスク管理が最大の課題であることが判明した

 

EYは最新のジェネラルカウンセルのサステナビリティに関する調査「2022年ジェネラルカウンセルのサステナビリティに関する調査(2022 General Counsel Sustainability Study)」を発表したことをお知らせします。本調査は、EY LawとHarvard Law School Center on the Legal Profession(ハーバード大学法科大学院センター・オン・ザ・リーガル・プロフェッション)による調査で、世界20カ国のジェネラルカウンセル1,000人を対象とした意識調査および主要なジェネラルカウンセルへの詳細なインタビューを実施しました。

 

本調査では、世界各国の法務部門は、サステナビリティに関するリスクの高まりに直面していますが、ビジネスリーダーがその意味を十分に理解していないと感じており、そのリスクを効果的に管理するためのさらなるリソースを必要としていることが明らかになりました。回答したジェネラルカウンセルのうち、自社のビジネスリーダーが気候変動や炭素排出量などの環境問題に関連する自社のリスクを本当に理解していると考えている人はわずか15%、リーダーがダイバーシティ、ウェルビーイングおよび安全配慮義務などの社会問題に関連するリスクを理解していると感じている人も39%にとどまることが明らかになりました。さらに、自社の環境上の目標が明確に定義されていると考えている回答者は22%でした。

 

レピュテーションリスクの優先順位が上がっているものの、重点は依然としてコンプライアンス:

本調査によって浮き彫りになったもう一つの問題は、最大のリスクは自社のレピュテーションとブランドに関連していると考えているにもかかわらず、ジェネラルカウンセルはコンプライアンスとサステナビリティに関する訴訟問題に重点を置いているように見えるということです。これは、ジェネラルカウンセルの77%が、投資家や規制当局からの圧力を他のどの関係者からの圧力よりも強く感じているという事実にも起因しています。

 

自社が直面する最も深刻なリスクについての質問では、ジェネラルカウンセルは劣悪な労働慣行や環境活動に起因する顧客の喪失やブランドの毀損に関する不安(全回答:77%)を挙げ、投資障壁(全回答:60%)や新しい規制への準拠(全回答:59%)についての懸念はそれよりもずっと低いことがわかりました。

 

曖昧さという課題:

本調査では、法務部門が直面しているさまざまな課題についても検討しています。群を抜いた最大の課題は、規制当局からの明確な指針がない場合のリスク管理が挙げられました。調査に参加した法務部門の92%が、具体的な規制がない社会的な問題に取り組むためのポリシーの策定という課題に直面していると述べ、90%が環境の問題に関しても同様の指摘をしています。

 

増加する業務量、限られたリソース:

ESG(環境・社会・ガバナンス)リスクの範囲が拡大するにつれて、また企業がそれらのリスクへの対処にも目を向けるようになるにつれて、回答したほとんどのジェネラルカウンセル(99%)が、業務量の急増を予想していますが、この予想される増加への対処方法についても懸念を抱いています。96%が、自社の法務部門にはサステナビリティ問題を管理するための追加の専門的な技術や知識が必要であると述べ、94%が、自社のサステナビリティ問題の管理に必要な資金がないと述べています。法務部門がこのような増加する業務量にどのように対処する予定であるかについて、20%が新しい人材の採用や既存の人材の配置転換に重点を置いた「インソーシング」アプローチをとる意向であることを示しています。さらに46%が採用と配置転換に改良されたテクノロジーを組み合わせた「インソースと最適化」戦略を追求する意向を示し、34%が社内リソースとオルタナティブ・リーガル・サービス・プロバイダーのサポートを融合させた「混合ソーシング」を検討しています。

 

EY Global Vice Chair(Tax)のKate Bartonのコメント:

「サステナビリティは、現代を象徴する問題の一つです。世界各国の組織は、消費者動向の変化、より積極的な規制当局、投資家の優先順位の変化、力を得た従業員など、多くの側面で圧力の高まりに直面しています。組織は変革の必要性を認識しているようであり、多くの法務部門が、サステナビリティを高めるためのビジネスの取り組みの先陣を切っています。それらの法務部門は、不可避の課題に直面しており、特に重大な課題として、熟練した人材不足が挙げられます」

 

EY Global Law LeaderのCornelius Grossmannのコメント:

「サステナビリティは、もはや企業にとって『あったほうが良い』といったものではなくなっています。ジェネラルカウンセルは、レピュテーションリスクが重要であること、また組織が環境や社会的な問題への取り組みにおいて積極的な役割を果たすことをその顧客や従業員が期待していることを理解しています。このような状況の変化は、法務部門がサステナビリティにも目を向けて、組織が直面している多くの複雑な環境・社会問題の管理において、より積極的な役割を果たす必要があることを意味しています。多くの組織がすでにこの先駆的役割を果たしており、サステナビリティが役員会の議題のトップの位置を固めるにつれて、他の部署もそれに続くことが予想されます」

 

EY弁護士法人 マネージングパートナーの木内 潤三郎(きうち じゅんざぶろう)のコメント:

「本調査には45社の日本企業も参加しています。日本においても、2021年6月に公表されたコーポレートガバナンス・コード の改訂版がESGをはじめとするサステナビリティ関連を大幅に補充するなど、企業はサステナビリティについて積極的かつ能動的に取り組むことを求められています。本調査は、企業の法務部門がサステナビリティにいかに取り組むべきかについて、グローバル企業の法務部門の現状分析を含めて解き明かすなど、極めて示唆に富むものです。近年、法務部門の守備範囲は拡大し、契約審査や訴訟対応といった伝統的な業務にとどまらず、レピュテーションリスクを含む広範な経営リスクに対応した全社的リスクマネジメントにおいて、重要な一翼を担うものとして機能することが求められています。それを実現するにあたって、ソーシングモデルや法務DXを含めて法務部門のオペレーションの体制を見直すことも急務だと考えます。法務部門がサステナビリティの課題への取り組みを含む高度なリーガル・リスク・マネジメントを実践しつつ、事業部門にしっかり寄り添いビジネスの推進に貢献することが、日本企業の国際的な競争力強化において極めて重要であると考えています」

 

コラボレーションの増加:

それでも、組織がESGリスクへの対応力強化のための措置を講じているという明らかな兆しがあり、その重要な指標の一つとして、法務部門が他の事業分野とどの程度連携しているかということが挙げられます。本調査で、61%の法務部門が今後3年間にわたって、財務、人事、経営企画などの他の事業部門との協働の強化を計画していることが明らかになっています。

 

ハーバード大学法科大学院教授Global Initiatives on the Legal Profession副学部長 兼 センター・オン・ザ・リーガル・プロフェッションのセンター長を務めるDavid B. Wilkins教授のコメント:

「法務部門は、所属する組織の中のサステナビリティおよび関連するESGの問題について、強力な指導的発言者となり得る極めて優れた立場にあります。法務部門は、規制当局の考え方に対する洞察など他の部門ではなかなか得られないスキルの組み合わせや、過去の教訓を現在と未来に適用する経験を有しています。さらに、法務部門は、サプライチェーンや取引からデータプライバシーや訴訟まで、サステナビリティによる影響を受ける多くのビジネス上の問題に既に深く関わっており、これらの問題に関する意思決定に関与するさまざまなビジネス分野と十分に連携しています。また、ESG問題が企業の長期的なレピュテーションと事業の継続を最終的に左右する、社会からのより広範な一般的な疑問について考える訓練を受けています。本調査から明らかなように、多くの法務部門は、サステナビリティの問題に関する協働の拡大を計画しており、特に規制上の指針が不足している場合、事業全体にわたってより良い意思決定が推進されるように支援します」

 

※2022年4月7日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

英語版ニュースリリース:Growing sustainability risks put pressure on law departments


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