九州経済調査協会は4日、2022年7月のDATASALAD宿泊稼働指数を発表した。
本レポートでは、当会が宿泊予約サイトより取得したデータをもとに算出している「宿泊稼働指数 」を活用し、2022年7月における新型コロナウイルス感染拡大による宿泊施設への影響を分析しています。
■全国の宿泊稼働指数:3カ月ぶりに上昇も、月後半は伸び悩む
2022年7月における全国の宿泊稼働指数は45.8となり、前月の43.2を上回り、3カ月ぶりに上昇した(図1)。夏休みシーズン、海の日の3連休など、季節的な要因により前月を上回った。また、足下では新型コロナウイルスの感染急拡大がみられるものの、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発令があった前年と比較して、政府による行動制限措置がなかったことから、指数は前年を大きく上回っている。
図2は、曜日要因による変動を除外した、2018・19・22年7月の日別宿泊稼働指数の推移を示している。例年7月は、海の日3連休を除くと、夏休みシーズンに入る月後半にかけて、指数は上昇するトレンドにある。今年も、前半は緩やかな上昇で推移し、また3連休の中日にあたる7月17日は87.2と2019年を上回る値となった。ただし月後半は、新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、夏休みにもかかわらず横ばいでの推移となった。ただし、行動制限措置がなかったこと、県民割などの宿泊キャンペーンがおおむね継続していることから、一部に旅行見送り・宿泊キャンセルの動きがみられたものの、7月末時点では指数の大幅な低下には至っていない。
■地域ブロック別の宿泊稼働指数: 8地域で前月差プラス
2022年7月の宿泊稼働指数を12の地域ブロック別にみると、北海道(62.1)や東北(61.7)で高い傾向となった(表1)。
前月との比較では、8地域でプラスとなり、特に沖縄(前月差+15.1pt)、四国(同+9.4pt)、北海道(同+6.9pt)でプラス幅が大きかった。沖縄は、2カ月連続で前月差が+15ptを上回っている。一方、北関東(同▲5.8pt)、東北(同▲2.3pt)など4地域で前月差がマイナスとなった。なお九州は同+4.6ptと2カ月ぶりのプラスとなっている。
前年との比較では、12地域全てでプラスとなり、特に沖縄(前年差+37.4pt)でプラス幅が大きい。
■都道府県別の宿泊稼働状況: 3連休を境に、上昇・足踏み・反落の大きな地域差
2022年7月の宿泊稼働指数を47都道府県別にみると、秋田県(77.2)や青森県(70.8)、高知県(69.4)、群馬県(65.3)などで高水準となった(表2)。前月との比較では、30都道県で前月を上回り、高知県(前月差+15.5pt)、沖縄県(同+15.1pt)、香川県(同+13.2pt)などで上昇幅が大きかった。
高知県・香川県では、月後半の稼働指数が高くなったことが、月全体の上昇に寄与した。対して沖縄県は、月前半に指数が大きく上昇したものの、新型コロナウイルスの感染再拡大により、月後半は大きく下落している。また北東北も、デスティネーションキャンペーン開催などに伴い指数が高いものの、月後半に指数が下落したことから、一部の県で前月差がマイナスとなった(表3)。なお、宿泊稼働指数の7月後半(18~31日)から7月前半(1~14日)を差し引いた値が最も高い(後半の稼働状況が良かった)のは徳島県(+27.5pt)で、以降香川県(+20.9pt)、山梨県(+15.3)と続く。逆に、値が最も低い(後半の稼働状況が悪かった)のは沖縄県(▲23.2pt)で、以降北海道(▲11.9pt)、青森県(▲9.4pt)と続く。
7月の宿泊稼働指数が最も低かったのは京都府(20.7)で、以降は石川県(26.7)、大阪府(32.9)と続く。観光宿泊需要が大きい京都府・石川県、出張・イベント需要が大きい大阪府では、いずれも平日を中心に稼働状況が伸び悩んでいる。
以上のように、7月は連休・夏休みシーズンに伴い指数は前月より上昇したものの、新型コロナ第6波収束から続いた回復のトレンドが、感染再拡大に伴い、海の日の3連休を境として多くの地域が足踏み、一部は反落の状態となっている。現時点では第7波のピークアウトは見えていない一方、政府は行動制限の発令・宿泊キャンペーンの全国的な取りやめには慎重である。そのため、8月も緩やかな上下で推移すると考えられる。