総務省「平成30年度版 情報通信白書」から
コンピューターの処理速度が加速度的に進化するのに伴い、人工知能(AI)、モノのインターネット(Internet of Things、IoT)、ロボットによる業務自動化の技術が急速に向上している。AI、IoT、ロボット等の社会実装の進展に伴い、業務が自動化し、働き方も大きく変化することがさまざまな文献やニュースで指摘されている。すでに、さまざまな企業で業務の自動化や現状の可視化、分析などを目的としてAIの導入が進んでおり、業務が効率化したなどの成果も出てきている=表。
特に、コールセンター業務など、顧客の問い合わせ対応において、AIによる回答候補の提示やチャットボットなどによる自動応答など、AIによる業務の効率化の取り組みが進んでいる。コールセンターやチャットボットについては、すでに市場として確立しつつある。
雇用環境の変化に伴い、労働者が抱えるタスクの内容や役割にも変化が生じると考えられる。
まず、定型業務など機械化が進むであろうタスクについては、担当者が別のタスクへと配置転換される可能性があろう。例えば、手書き情報の手入力による電子データ化を担当していた人が、手書き情報が画像認識により自動的に電子データ化されるようになった場合に、入力したデータのチェック作業など別の業務を担当する可能性がある。また、簡易審査を担当していた人が、AIによる簡易審査が導入されていた場合にAIでは判断が難しい審査を担当するようになる可能性がある。
また、AIの導入によってタスクがなくならない場合であっても、タスクの進め方が変化する可能性もある。例えば、コールセンターの業務などでは、AIが最適な回答の選択肢を提示してくれるようになる場合には、コールセンターのスタッフは、AIが示した最適な回答の選択肢から素早く適切な回答を見つけて顧客に答える能力が求められるようになる可能性がある。また、工場の選別作業では、手選別を担当していた作業員は、ロボットでは自動的に選別できなかったものに特化して選別を行うようになろう。さらに、AIを用いて情報の可視化や分析を行う場合は、AIの分析結果の特性を踏まえて結論を出すことが求められるようになる可能性もあり、AIに関する知識を身につける必要性も出てくると考えられる(例えば、深層学習のケースで、分析過程がブラックボックス化された状態で結論が得られたケースなどでは、その結果をどのように解釈すればよいか判断する能力が求められるようになる)。
このように、AIが導入されることによって、人間の業務はさまざまに変化していくことが予想される。