前回は、宿泊施設のバックヤードにおける感染症対策について整理しました。今回は、感染が疑われる宿泊者が発生した場合の事前準備等について、弊会サクラクオリティ安全行動基準よりご紹介したいと思います。
自衛策を適切に有しておくこと、また訓練を定期的に実施することが非常に重要となります。その他ポイントでは、隔離部屋を事前に選定をしておくこと。感染が疑われる宿泊者の発生時における各種責任者・担当者の選定しておくこと。各種連絡先の確認を行うこととなります。 以下具体的に感染症対策に関する事前準備項目を整理してみます。
▽家族の場合は、複数部屋の確保(感染懸念宿泊者と他の家族を分離する他、家族同士が行き来することがないようにすること)。なお、人の往来が少ない客室を選択する他、長期滞在に備え、清掃時に移動できるよう複数客室を設定しておくことが望ましい。▽客室待機時に備え、該当顧客の客室までの案内ルートを事前に設定しておくこと。▽バックヤードにおいて、該当顧客と接触したスタッフの着替えや消毒を行う「イエローゾーン」を設定しておくこと。▽長期的に宿泊施設療養となる可能性も勘案し、2週間から3週間の滞在を想定した感染症対応訓練マニュアルを整備し実施すること。▽客室待機時に備え(特に子供の場合)保健師等委託が可能かを事前確認すること。▽発生時における医療機関、保健所、相談窓口、土日用連絡先等を事前に把握し、対応方針等確認しておくこと。また、万が一宿泊施設での待機指示となった際の保健所職員が使用するスペース及び容体悪化等緊急時の連絡先を確認すること。なお、これまで管轄保健所にて宿泊施設での対応があったかも確認しておくこと(初動となるか既に対応経験があるのか、経験がある場合には、実際にどのような対応を行ったかを把握しておくこと)。▽発生時の組織体制、従業員周知方法、連絡網、オペレーション方針を検討すること(少数スタッフによる運営とすることを含む)。▽発生時、他の顧客と分離して説明等ができるよう、ビニールパーテーション等で隔離したブースや別室を事前に準備しておくか、即座にそのような設えを用意できるよう準備しておくこと。▽日用品や衣料品(部屋着は使い捨てが望ましい)等の提供方針を検討すること。▽ゴミ廃棄用ビニールの設置とゴミ類廃棄について、廃棄物の処理方法の確認(市町村の廃棄物担当部署等)をしておくこと。▽使用客室の消毒に備え、消毒委託先業者を選定しておくこと。▽案内担当者、配膳係、容体確認係、保健所等連絡係、警備体制、移送サポート係等の選定すること。なお、高齢者や妊婦、糖尿病や慢性肺疾患、免疫不全等基礎疾患のあるスタッフによる対応を避けること。▽防護服(エプロンや雨合羽、ビニール手袋、マスク、ゴーグル、フェイスシールド等)を準備しておくこと。▽リネン清掃等委託会社への対応内容を確認しておくこと(リネン交換や清掃等の対応方針を確認しておくこと)▽万一従業員から感染者が出た場合の連絡先確認、予約者への連絡(保健所に相談)、旅行会社への連絡、営業自粛の検討、問い合わせ窓口の一本化を準備しておくこと。
なお、定期的な感染症対応訓練については、その内容について実施の都度、変更すること(柔軟な対応ができるよう)。主な訓練内容を例示すると以下の通りである。
・感染が疑われる者の発生想定(症状、チェックイン時か宿泊滞在時他)
・社内情報伝達のシミュレーション
・各責任者によるチーム編成と作業内容の確認
・感染症対応の運営内容への変更シミュレーション(ゾーニング、使用制限等)
・保健所、予約者、エージェント、仕入れ等関係会社等への連絡及びその想定返答内容に対する対応シミュレーション
・使用後の客室及び館内の消毒シミュレーション
・課題点に関する議論、次回の訓練方針確認
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史
北村氏