5月14日に新柄コロナウイルス感染症に対するガイドランが報告されてから、一定期間が経過し、7月22日からは東京以外でのGoToトラベル事業もスタートしました。その後現在の新型コロナウイルス感染症拡大防止対策はどのような状況にあるのか、現状の取り組み状況、今後の課題点について整理しておきたいと思います。2002年に症例がはじまったSARSについては、当時インバウンド市場が今ほどではなかったことから全国的な影響は限定的でした。また、2012年に確認されたMERSは、幸甚にして感染力がやや弱かったこともあり、被害はそれほど多くありませんでした。一方で今回の新型コロナウイルスは、以前と比較しインバウンド市場も成長した状況であったことや感染力も強いこと等から大きな被害を観光市場に与えています。
これまで多くの感染症拡大防止のお手伝いをする中で、ガイドランと実際の取り組みとのギャップを観察しますと、概ね以下の通りと考えられます。▽感染症拡大防止に対する意識レベルに差異がある。▽意識を変える必要があること、それが最も重要であることが現場に伝わっていないケースが多く見られる。▽消毒薬知識レベル、消毒手順が不正確な事例が散見される。▽宿泊施設毎でガイドランの受け取り方が格差が見られる。▽自治体ベースでのガイドラインも多く提供されており、いずれのガイドランを重視してよいか混乱が見られる。▽スタッフの日々の行動自粛の指針が不明瞭であることから、スタッフに罹患者が生じるケースが見られる。▽バックヤードの自衛策がやや不足しているケースが散見される。▽スタッフが濃厚接触者にならないことの重要性に認識不足が見られる。▽なぜレストランでビニール手袋をする必要があるのか、なぜアクリル板を設置する必要があるのか、その「理由」が理解できていないことから手袋を交換せず且つ消毒しない状況で、逆に接触感染の危険が認められるケースもある。▽荷物のケアを自衛策なく行うケースが見られる。▽旅館では顧客の靴のケアをした後の消毒の徹底ができていないケースが見られる。
今後の課題点について整理しますと、以下の通りとなります。▽今後継続して取り組みが必要との意識が不足している(もちろん「終息」することを願うばかりではあるが)。▽37.5℃以上だけではなく、どのような症状が見られた場合にどのように行動するべきかに関し各施設がマニュアル整備する必要がある(初動が重要であることから)。▽感染症対策の構築が労働契約法第5条にある安全保護義務の範囲でもあり、正社員だけではなく、関係するスタッフ全員を徹底して防御する体制構築が改めて必要である。▽最新データに基づき、取り組みを常に検証しアップデートしていく必要がある。▽最新データに基づいた取り組みが実施できているか、顧客に正確に伝えると同時に、顧客の感染症拡大防止の協力がどれほど重要か意識してもらう必要がある。施設と顧客が一緒に取り組んではじめて感染症拡大防止に繋がる。顧客側の感染症拡大防止に対する意識を高める必要がある。▽情報提供について、海外顧客向けでの感染症拡大防止策を伝える準備が必要である。▽顧客側に熱があっても協力してもらえない、マスクの着用をしない等の場合の対応策等具体的なQ&A整備が必要である。▽最新データに基づいた取り組みを自発的に常に向上させて行っていることを可視化することが求められる。▽スタッフ感染症教育訓練プログラムの必要性、その中で安全衛生委員会の設置する必要がある他、防災訓練と同レベルで、定期的に感染症対応訓練を実施する必要がある。
一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史
北村氏