【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み26】今後求められるであろう感染症対策「0次予防」 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村氏

 新型コロナウイルス感染症の脅威を踏まえ、今後の当面の間は、マスクを着用する他、3密を避ける、換気を徹底する、接触部位について消毒する等、感染症に対する「予防」としての感染症拡大防止対策の実践が求められています。現状は、この予防について、依然として感染症の脅威が大変大きい状況であることから「できうる限り実践する」必要があります。また、感染症拡大防止に当たっては、宿泊施設側の努力だけでは不十分であり、顧客側の協力が欠かせないものとなります。

 そもそも感染は、病原体(感染源)、感染経路、感受生体(感染経験がなく、免疫を有していない者)の3つが揃うことで生じると言われています。近い将来、今回の新型コロナウイルス感染症に対するワクチンが供給され、また治療薬の開発等も進むものと思われますが、一方で、感染経路を有する新たなウイルス感染症(病原体)が出現することで、同様の感染症脅威が改めて生じる可能性がある他、今回の世界的規模での感染症に対する恐怖心は相当大きく、将来においても引き続いて適切な感染症対策の継続を求める声も弊会アンケート調査で窺えます。では、仮に現在の感染症の脅威が低下し、これまで同様の日常を取り戻せた後の将来を想定したとして、どこまで感染症拡大防止対策を実施すべきと整理しておくべきなのでしょう。

 疾病予防には、1次予防として、「病気にならないように気を付けること」、2次予防として、「健康診断を受ける等病気が悪くなる前に見つけること」、3次予防として、「病気の悪化を防ぐこと」の3段階が挙げられます。昨今では、さらに進んで、自分が親から受け継いだ遺伝子などを調べて、「どのような病気になりやすい体質なのか」を知ることで、効果的に生活習慣を見直すことを目指す「0次予防」が注目されています。自身の体質を知って効果的に生活習慣を見直すことが0次予防となります。

 現在は、宿泊施設における感染症拡大防止対策として、主にこの1次予防の徹底が求められていますが、ある程度新型コロナウイルス感染症が収束したとしても、上記の通りその脅威は将来にわたって存在するであろうと想定すれば、その後も継続して取り組む必要が出てきます。ただし、脅威レベルは低下しているでしょうから、その際求められる感染症対策としては、「0次予防」ではないでしょうか。

 つまり、個々の宿泊施設によって様々な感染症に関するリスク源を洗い出すこと、そのリスク量に応じた施策を各自検討し強弱をつけて対応実践することの他、無意識レベルでも顧客が協力的な行動をとる環境を検討すること(例えば、レストランにおけるBGMボリュームを控えめにし、大声での会話が目立つシーンを作る等)、さらには、抗菌・抗ウイルス素材等を徐々に導入する等、安全な環境整備を進めることで、効果的且つ継続して0次予防を構築することが求められるのではないでしょうか。つまり、意識的に気を付ける以前に、無意識レベルでも感染対策を進行し続けるような環境造りが実現できれば、その取り組み内容を正確且つ詳細に顧客(市場)に伝えることで、顧客との間に強固な信頼関係を改めて作ることに繋がり、且つ地域における感染症対策の今後のお手本となることで地域との有機的関係を強化することができるのではないでしょうか。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史


北村氏


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