【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み28】安全で安心できる修学旅行のあり方とは 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村氏

 日本における「修学旅行」は、1977年学習指導要領において勤労体験学習が重視され、さらに1998年学習指導要領では「総合的な学習の時間」(総合学習)が導入されました。修学旅行は、その一環として位置づけられ、諸外国にも類例のない教育活動であり、社会で必要な英知、体験を身に着ける重要な学習場面となっています。その目的は、観光から集団行動や体験教育へと変化し、平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、集団生活のあり方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行う「旅行・集団宿泊的行事」と位置付けられています。

 公益財団法人日本修学旅行協会によりますと、2015年度修学旅行の全体実施率は98%(うち国内修学旅行83.4%、海外研修旅行等14.6%)、季節性では国内修学旅行の実施時期は、10月~12月に実施する学校が全体の61.9%を占め、また国公立校では10月~1月の実施校が年間全体の80.1%を占めていました。

 このような修学旅行の実施にあたり安全性の確保は絶対要件です。昨今のコロナ禍という環境において、NHKによる全国の教育委員会に調査(2020年10月)では、回答が得られた2万校あまりのうち、15%が中止を決定、60%が実施を決めたものの、その多くが隣接県や県内へ行き先を変更して対応している状況が窺えました。2020年10月2日には文部科学省から教育機関に向けて、修学旅行の延期を決定した場合においても修学旅行の実現に向けた「最大限の配慮」をとの通達がなされています。

 以下では、上記のような修学旅行の意義に鑑み、「安全な修学旅行の実現」に向けた取り組みを考えてみたいと思います。2020年9月1日に一般社団法人日本旅行業協会(協力:公益財団法人日本修学旅行協会、公益財団法人全国修学旅行研究協会)より「新型コロナウイルス対応ガイドラインに基づく国内修学旅行の手引き(第3版)」が公表されました。以下では当該ガイドライン及び弊会が宿泊施設向けに提供している「サクラクオリティ安全行動基準(第19版)」に基づき、且つ修学旅行の安全な実施に向けた視点や取り組み例を整理してみたいと思います。

 旅行工程のすべての関係者がそれぞれ最善の感染症拡大防止対策を提供することで「安全な修学旅行」を実現することができるはずです。必要があれば相互が補いつつできうる限り最善の安全環境を提供できる関係者間の相互関係及び信頼関係を事前に構築しておくこと、また、それら取り組みを地域にも理解いただき、魅力的な体験学習を提供できるよう地域一体として受け入れる体制づくりを行うことが求められるはずです。

 それを実現するために、旅行工程の全ての関係者が、それぞれどのような感染症拡大防止対策を求められているかを理解し、自社がその中でどこまで感染拡大防止対策の対応が可能であるのか、自社のリスク要因を理解した上で事前に議論することが望まれます。

 「手引き(第3版)」に記載の取り組みはもちろんのこと、その他宿泊施設側に求められるであろう感染症拡大防止対策を考えますと、人が動く際に触れるであろう接触部位の事前確認、咳やくしゃみをした場合の環境リスクの確認や密回避、ある場所から別の場所へ移動した際に気が緩むことが多いことから、自動販売機周辺や売店周辺、共用トイレ内における感染対策の確認、さらには、施設側だけでは十分な対策が困難であろうマスクをとるシーンにおける感染防止対策の協力要請とその実施確認の他、意識の高い児童等が自身で消毒を行えるような安全で安心できる環境の提供が求められるものと思われます。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 

 
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