【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み40】緊急事態宣言発出期間中の前回と今回の旅行マインドの変化(3) 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村

北村氏

 弊会ではこれまで宿泊施設の品質について、顧客ニーズ調査を繰り返し、その根幹は「安心感」とお伝えして参りました。まずは、新型コロナウイルス感染症対策の実践有無がこの「安心感」にどのような影響を与えているのかについて、昨年の6月、緊急事態宣言が5月25日に解除された後に調査した結果と、今年の1月の2度目の緊急事態宣言中に調査した結果をご紹介したいと思います(両調査とも全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、弊会実施)。

 「強く安心感を感じる」「安心感を感じる」「安心感をやや感じる」の合計割合については、ビジネスホテルで78%、リゾートホテルで80%、ラグジュアリー高級ホテルで84.5%、旅館で81.5%と前回同様に高い水準であるものの、前回調査結果よりも若干低下しており、ビジネスホテルで△6%、リゾートホテルで△7.5%、ラグジュアリー高級ホテルで△4%、旅館で△6%という結果でした。前回は初めての緊急事態宣言が発出された直後であり且つ前回と今回では休校措置をはじめ、4月16日より全国に発出された一方で、今回は11都府県を対象とし、且つその内容も前回と比較し若干異なっていること、また「新型コロナウイルス感染症」に対する慣化も背景にあるのかもしれません。

 次いで、感染症対策の取り組みを実践している施設について、実践していない施設と比べ使用したいと思うか否かという調査内容について、上記同様にご紹介したいと思います。

 「是非使用したい」「使用したい」「やや使用したい」の合計割合については、ビジネスホテルで79%、リゾートホテルで81%、ラグジュアリー高級ホテルで82.5%、旅館で82.5%と前回同様に高い水準であるものの、前掲アンケート調査結果同様に前回調査結果よりも若干低下しており、ビジネスホテルで△3%、リゾートホテルで△4%、ラグジュアリー高級ホテルで△2%、旅館で△3%という結果でした。

 以上のとおり、前回調査結果と今回調査結果を比較しますと「慣化」等の影響が見られるものの、前回調査時点とほぼ変わりなく、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策が依然として高い「安心感」に繋がっていること、また「使用したい」、つまり宿泊施設選択上の重要要素となっているという結果でした。

 「旅館」と「ホテル」のいずれに行きたいかと調査結果については、前回は「旅館」及び「やや旅館」の合計49.5%でしたが、今回は同40.5%、「ホテル」及び「ややホテル」の合計22%で今回も同様に同22%という結果でした。旅行に関する費用についての調査では、「以前よりも多めに支払ってもよい」は、今回+2.5%で12%という結果でした。「以前よりもやや多めに支払ってもよい」が前回と同値で26%という結果でした。

 旅行ニーズを10設問に分け、それぞれに1位から10位までの10段階評価をした調査結果をご紹介します。設問では「美味しい食事を食べる」、「心理的にリラックス」、「身体的に疲れをいやす」、「非日常環境に浸る」、「観光地や史跡等巡り」、「心地よいサービスよい体験」、「同伴者との関係強化」、「美味しいお酒を飲む」、「ゆっくり考えごと」、「ウォーキング等体を動かす(運動)」を採用しています。

 その結果総じて前回の5月調査と同様の傾向が見られ、また、特に前回より評価が上がっている旅行ニーズでは、「美味しい食事」や「非日常環境に浸る」という結果でした。

 宿泊施設選択時の行動パターンについては、最初に訪れる地域を選ぶか、最初から宿泊施設を選ぶかを調査した結果、前回2020年5月調査よりも7%増加し、地域を先に選択するとの回答者割合が71.5%となり、一方で宿泊施設を先に選択するという回答が△0.5%で3%という結果であり、今後より一層、観光協会やDMO等による地域からの観光誘致活動が重要と言えるかもしれません。

 上記のとおり、特に地域から先に考える需要者が多いのであれば一層、最終的に宿泊施設を選択する際には、ある程度の選択肢に絞った後に最終決定するものと考えられます。

 そこで、仮に最初に5施設程度に絞り、その後1施設を決定すると想定した場合、5施設に絞る際に重視する情報及び最終決定時に重視する情報について調査を行いました。

 5施設に絞り込む場合には、口コミが最も高く、「大変重視する」及び「やや重視する」と回答した人の合計割合で69.5%(前回70%)、次いで人気ランキングをネットで探すが同66.5%(前回71.5%)、清潔感や安心感に関する第三者による情報が同65.5%(前回71.5%)という結果でした。

 また、最終的に1施設を決定する際も概ね同様の調査結果であり、口コミが同69%(前回68.5%)、同人気ランキングが63.5%(前回67.5%)、清潔感や安心感に関する第三者による情報が同63%(前回70.5%)という結果でした。

 今回調査の結果、2020年5月調査時点よりも情報を慎重に探す姿勢がやや薄れているという印象です。

 全体として情報源に頼る姿勢が低下していることについては、前回と異なり、今回は早く旅行に行きたいと考えている回答者が多いことが影響しているのかもしれません。

 また、清潔感や安全性に関する第三者による情報も低下していることについては、前回は全国に緊急事態宣言が発出されましたが、今回は国による緊急事態宣言は11都府県であり且つ2度目ということでそれらの情報ニーズがやや低下している可能性がありますが、以前として非常に高い水準とも言えます。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 
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