【マンスリーリポート 観光の現場 38】温泉地、巻き返しへそれぞれの動き


温泉地はかつてのにぎわいを取り戻す施策を検討している(草津温泉)

県民向けにプラン 感染防止を徹底

 政府の緊急事態宣言が25日に全面解除され、自治体の要請や自主判断で休業していた全国の旅館・ホテルや観光施設が徐々に営業を再開している。都道府県をまたぐ移動の自粛は6月18日まで続くが、長く続いたコロナ禍の出口がようやく見え始めた。全国の主な温泉地に現在の状況と、事態の収束を見据えた巻き返しへの取り組みを聞いた。

 群馬県の草津温泉は、旅館協同組合加盟の104軒の旅館・ホテルのうち、ほとんどが5月末まで休業。ただ、22日から、日帰り温泉施設3軒(大滝乃湯、西の河原露天風呂、御座之湯)が営業を再開。名物の湯もみを上演する「熱乃湯」も入場者数を制限する条件付きだが同日から営業を再開した。

 大分県の別府温泉は、市旅館ホテル組合連合会の110軒の旅館・ホテルのうち、「ビジネスホテルや小規模旅館で営業をしているところもあるが、ほぼ“開店休業”状態」(同連合会)。「県をまたいでの移動の自粛がなくならない限り、(容易に)開けられない」(同)と、6月末まで休業する施設もあるという。連合会は県民や市民向けのキャンペーンを県と市に提案。県では県内旅館・ホテルの宿泊費の一部を助成する県民向けプラン「応援割」を6月1日から行う予定だ。

 鹿児島県の指宿温泉。「旅館・ホテルはそれぞれの判断で営業を再開しているところもあるが、まだ県外からお客さまを呼べず、厳しい状況」(市観光協会)。名物の砂むしを楽しめる日帰り施設の砂むし会館「砂楽」は5月16日に営業を再開。

 「宿泊割引のプランなど、市で話が上がっているが、具体的にはこれから。先(収束)が見えてくればいち早く動きたいという思いはある」(同)。

 兵庫県の有馬温泉は、県の要請でゴールデンウイーク中に休業していた旅館・ホテルが5月7日から徐々に営業を再開。日帰り施設の「金の湯」「銀の湯」は25日に営業再開。当初は6月1日からの再開を予定していたが、1週間前倒しした。

 愛媛県の道後温泉は、旅館協同組合加盟の31軒のうち、数軒を除くほとんどが休業していたが、6月から本格的に営業を再開する。温泉街のシンボル「道後温泉本館」と「飛鳥乃湯泉」は5月31日まで休業。「椿の湯」は地元住民の利用に配慮して、休まず営業している。温泉街の商店は60軒のうち、10~15軒が営業。「まだ人がまばらで、道後本館が開かないと地元のお客さまも来ない」と旅館協同組合。

 組合では県内在住者向けの宿泊プランを検討中。開始日は未定だが、7月ごろを予定しているという。「道後本館に日帰りで来る人が多い。その人たちに向けて道後の湯とともに、泊まって食も楽しんでもらう地産地消の企画」(同)。地元松山市でも、市内在住者向けのプランを計画しているという。

 岐阜県の下呂温泉は、旅館協同組合加盟の39軒のうち、多くが5月31日まで休館。「下呂温泉合掌村」など主な観光施設も同日まで休業している。組合では今後の対策について「まだ、具体的にリリースできる段階にないが、県民対象のお得な宿泊プランなど、県が行う予定と聞いている」。

 北海道の登別温泉も、旅館組合加盟の旅館・ホテルが5月31日までほぼ休館。「数軒が営業しているが、従来の予約客のみを受け入れ、新規の予約を取らないところがある」(旅館組合)。名物の「地獄谷」や「大湯沼川天然足湯」も同日まで閉鎖している。

 登別市と登別国際観光コンベンション協会は、アフターコロナの観光客誘致策を検討中。同協会は市長と市議会議長宛てに、観光事業者の窮状を訴えるとともに、支援を求める要望書を5月26日に提出した。

 大分県の由布院温泉。由布市まちづくり観光局によると、旅館組合加盟93軒のうち、約3割が5月21日時点で営業中。5月末までにほぼ全てが営業を再開するという。土産店は約7割、営業を再開しているが、「客足はまだ厳しい」(同局)。

 約8割が県外客という同温泉だが、県をまたいでの移動が自粛中のため、「県外への誘客活動は当面行わない」(同)。県では県民対象の「応援割」プランを6月1日から実施。当面は県内客の受け入れに注力する構えだ。

 昨年10月の台風19号で大きな被害を受けた神奈川県の箱根温泉は、登山鉄道の一部区間が現在も運休中。路線バスはコロナの影響で特別ダイヤでの運行が続いている。ただ、約8割が休業していた旅館ホテル協同組合加盟の施設は、徐々に営業を再開。「まずは団体よりも個人客の受け入れが中心になる。気持ちを前向きに、感染防止のガイドラインを施設に周知徹底して、安心・安全な受け入れを行いたい」(同組合)。

 兵庫県の城崎温泉は、旅館協同組合加盟76軒が5月31日まで一斉休業。6月1日から各旅館・ホテルの判断で営業を再開する。名物の外湯は5月31日まで市民限定の利用としている。

 「城崎は感染拡大防止に街ぐるみで取り組んでいる」と同組合の芹澤正志理事長。組合では宿泊業界が作成した感染防止のガイドラインに加え、城崎独自のガイドラインも打ち出し、組合員旅館・ホテルに徹底する。「浴衣の似合うまち」のキャッチフレーズに合わせ、「浴衣に似合うマスク」も製作中で、従業員が装着するほか、宿泊客用のノベルティにすることも考えているという。

 地元の豊岡市は、市民を対象に市内への“プチ旅行”を促す事業を計画。地元での消費拡大とともに、「休業していた旅館の従業員が現場の感覚を取り戻し、モチベーションを上げる効果も期待できる」(芹澤理事長)という。

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