【一寸先は旅 人 宿 街 21】みどりの窓口閉鎖と食わず嫌い 神崎公一


 昨年末に自宅近くのマクドナルドが改装のため、数日間閉店との貼り紙が目についた。この店舗はいつも行列ができるほどにぎわっているのになぜ、かき入れ時に改装するのかといぶかった。しばらくして、マクドナルドの前を通ると、キャッシュレスによるセルフオーダーで注文と支払いができる装置が3台並んでいた。店員と対面でやり取りするスペースは、ぐっと縮小されていた。

 読者の皆さんも、スーパーやコンビニでセルフレジを利用しているかもしれない。また、ファミレスや居酒屋で大学ノートを一回り小さくしたようなタブレット端末で注文した経験があろう。

 こうしたセルフ方式は人件費の削減に効力を発揮する。旅に関しての話に移れば、自宅の最寄り駅のみどりの窓口が閉鎖された。窓口に行ってみると、閉鎖を知らせる貼り紙があり、職員がいたスペースはシャッターが閉まっていた。新幹線や特急の指定券などを扱う自動券売機が数台並んでいたが、窓口閉鎖を知らずに訪れたある年配女性は非常に戸惑った様子で、「私は券売機で買うのはどうも苦手。やはり職員の方に助けてもらわないとダメなのよ」と言いながら対面営業をしている大きなターミナル駅に向かった。

 鉄道の運賃収入が厳しくなっているのはしばしば報じられている。人口減少に加え、新型コロナ感染症により人の移動が制限されたり、コロナ感染症がほぼ収束したとはいえ、在宅勤務の広がりやオンライン会議の利用で出張などを控える動きが続いているからだ。その結果、東京など大都市部の運賃収入を地方の赤字線に当ててやりくりすることも限界が近づいている。しばしば報じられているように広島、岡山県を走るJR西日本の芸備線の一部区間は収支率が最低で、存廃問題が俎上に上っている。

 こうしたことからJR東日本では人件費節減などを目指し、盛んにえきねっとの利用を呼びかけている。自宅にいながら、ほぼ24時間パソコンやスマートフォンで乗車券や指定席券の予約が可能で、駅の窓口で買う必要がない、紙券を受け取らず、チケットが買える便利なサービスだとアピールしている。

 筆者はキャッシュレス、チケットレスなどのデジタル対応で乗車券、指定席券を買うのは、それほど苦ではない。お盆やゴールデンウイーク、連休の前に窓口に並んで長蛇の列をなしている人を見ると、「お気の毒に」と思ってしまうし、時間の無駄だとも思う。訪日外国人が増えたのも窓口の混雑に拍車をかけている。

 しかし、誰もがこうしたパソコンなどを利用して乗車券など買うことができるかというと疑問だ。まだまだ苦手な人が多く、筆者が何度勧めても苦笑いするだけだ。デジタル対応がかえって旅行や移動の方法を難しくしている過渡期かもしれない。さらなる使い勝手の良さを図ってもらうと同時に、利用者は食わず嫌いを止めて、試してみよう。慣れればなんということもないはずだ。

 (日本旅行作家協会理事、元旅行読売出版社社長)

 
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