【万博で創ろう観光レガシー】第3回 大阪府知事 吉村洋文氏×日本旅館協会関西相談役 岡本厚氏 伝統・革新・多様さを包摂する文化PR


吉村知事

大阪府知事 吉村洋文氏

 大阪・関西万博が開幕した。今回の万博は観光にどんなレガシーを残せるのか。関西各府県・旅館業界の取り組みや思いをリレー形式で紹介する。3回目は大阪府。吉村洋文知事と岡本厚氏にそれぞれお話を伺った。(聞き手は本社関西支局長・小林茉莉)

宿泊施設は「顔」 万博機に魅力発信を共に

大阪府知事 吉村洋文氏

 

 ――万博来場者に体験してほしいコンテンツ、見どころは何か。

 「まずは『大屋根リング』。ギネス世界記録にも認定された世界最大の木造建築物であり、私も行くたびに、木の温かみと建築美、あんなにも大きなものが木で作れるというその技術力に圧倒される。日本の誇る木造建築の技術と、安全性を高めるための現代技術が融合した、イノベーションの象徴だ。高さ20メートルのリング上部は予約不要で歩けるのでぜひ上ってほしい。芝生に寝転がったり、うねりのある一周約2キロメートルの歩道を歩いたり、いろいろな過ごし方ができる。北には六甲の山々、西には明石海峡大橋、東には大阪の都市部が望め、絶景だ。今回の万博は史上初めて会場が海の上にあるのだが、夕日も圧巻。夢洲は海抜10メートルあり、海抜0メートルのところもある内陸部よりも高い。リング上ならば海抜30メートルの高さから海を見渡すことになる」

 「世界158の国と地域によるパビリオンは全てリング内に配置されており、さながら『小さな地球』。リングから見下ろすと『世界は多様で価値観は違うが一つ』『一つになって〈いのち〉というテーマに向かっていこう』とのメッセージを体感できる」

 「海外パビリオンもおすすめしたい。今回の万博は、約50の国が個性豊かな独自のパビリオンを作った。例えば、クラシック音楽の発祥のオーストリアは楽譜をモチーフにしたパビリオン。スイスは『アルプスの少女ハイジ』とコラボレーションした。どの国も自国の魅力や個性を発信するべく、外観だけ見ても楽しくなるようなパビリオンを作っている。また各国がレストランを出しており、日本の衛生基準の下で世界の料理を食べられるのも魅力の一つだ」

 「今回の万博は『いのち輝く未来社会のデザイン』がテーマ。『いのち輝く未来社会って何だろう』という共通の問いを各国や企業が立てて出展している。iPS細胞で作った拍動する心臓など、最先端の技術に触れて、未来を体験してほしい」

 「万博ではパビリオンだけでなく、毎日イベントも行われている。『自治体ウイーク』があり、『東北絆祭り』はじめ国内の伝統芸能や祭りを紹介する企画もある。この万博は『大阪・関西万博』だが『日本の万博』でもある。万博に来た人が、大阪だけでなく日本各地の良さを知り、足を運ぶ。魅力あふれる日本の各地にお客さまを送る『ゲートウェイ』としての役割も果たすと考えている」

 

 ――万博来場者による府内観光も期待される。大阪府の観光地としての魅力は。

 「大阪の歴史は非常に深く、世界文化遺産に登録された『百舌鳥・古市古墳群』や古代の都『難波宮(なにわのみや)』でその歴史を感じることができる。他にも、さまざまな寺社仏閣、大阪城などの史跡が今も多く残っている」

 「やはり『食』も魅力だ。代表的なものとしては大阪の『出汁(だし)文化』。たこ焼きやお好み焼きがおいしいのは出汁がしっかり入っているからだし、著名な日本料理店なども大阪にはたくさんある。歴史に裏打ちされた、一朝一夕ではまねできない食文化が大阪にはあり、それを楽しむことができる。また府内各地で生産された素晴らしい農産品や水揚げされた水産品など『大阪産(もん)』がたくさんある。府としては万博を機に、その土地の食文化やストーリーの魅力に触れる『ガストロノミー・ツーリズム』を広げようと発信している」

 「忘れてはいけないのがエンターテイメント。昔、道頓堀に芝居小屋がたくさんあった名残で、芝居はもちろん、上方歌舞伎や文楽なども楽しめる。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのような国内外の旅行者を集める魅力的なアミューズメント施設も充実している。買い物スポットも多く、ショッピングも楽しめる」

 「歴史、食、エンタメ、ショッピング、それら日本のあらゆる魅力がギュッと詰まっているのが大阪の魅力だ。だからこそ、海外からのお客さまが増えているのだと思う。また古きを大切にしながら新しいことにもチャレンジするのも大阪の特徴。そして開放的で優しい、時に『おせっかい』と言われる人情味あふれる府民性。この空気感も多くの人が楽しんでいるように思う」

 

 ――万博の成功に向け、観光事業者、宿泊事業者へのメッセージを。

 「今年は万博に合わせて6月までJRグループと国内最大規模の観光キャンペーン『大阪デスティネーションキャンペーン(DC)』を開催している。大阪では、1990年の国際花と緑の博覧会の開催時以来、35年ぶりのDCだ。一昨年には世界最大級の旅の祭典『ツーリズムEXPOジャパン』と観光大臣会合を大阪で開催するなど、国際会議なども増え、観光・ビジネス両面で国内外から多くの人が大阪を訪れるようになってきた。大阪の観光がこれだけ魅力的で、多くの旅行者が来るのは、観光業界の皆さんの力があってこそだ」

 「観光というのは、非常に裾野が広い産業であり、観光を強くすることは、大阪、ひいては日本全体の経済活性化につながる。また観光は経済の成長だけではなくて、人と人との交流によって相互理解を深めることができ、国と国や地域と地域の信頼関係につながる。だからこそ、この万博会場に多くの人が来てもらいたい」

 「大阪の魅力を多くの人に発信して、来てくれた人に楽しんでもらって、笑顔になって『大阪いいね』と言って帰ってもらうことが重要だ。旅行者にとって旅館やホテルで受けたおもてなしやスタッフの笑顔というのは、思い出として強く残る。その記憶は、宿だけでなく、その国や地域の評価そのものにもつながってくる。そういった意味で大阪の宿泊施設の皆さんは『大阪の顔』。大阪の印象の半分は皆さんの肩にかかっているといっても過言ではない」

 「私の地元の河内長野のような大阪の中心部から距離があるエリアでも、最近は海外からの観光客が来るようになっている。今後さらに、大阪観光のリピーターが増えてくる。だからこそ旅館ホテルの皆さんには、地域とも連携して、まだあまり知られていない地元ならではのおすすめスポット情報などを共有し、お客さまに発信してほしい。それは持続的な観光地づくりにつながるはずだ」

 「府としては今後も観光地としての魅力をさらに高めるためまちづくりに取り組んでいくが、われわれには『顔』である旅館ホテルでのあたたかい思い出づくりはできない。大阪の素晴らしいおもてなし文化を発信し、ファンを増やすためにも、万博を機に一緒になって取り組んでいきましょう」

大阪府知事 吉村洋文氏

 
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