【中学校教育旅行特集】修学旅行レポート 平和学園アレセイア湘南中学校


平和記念公園でガイドの方から原爆投下時の話を聞く

平和学園アレセイア湘南中学校(広島2泊3日 19年10月30日~11月1日実施)

安芸太田で家族の一員 人とつながる大切さ知る

 神奈川県茅ヶ崎市に校舎を置く平和学園アレセイア湘南中学校(山田信幸校長)。第二次世界大戦終戦の翌年、1946年に「平和女学校」として開校。戦時下を生きたキリスト教の牧師、社会運動家の初代理事長の賀川豊彦と新聞記者として賀川を支えた村島帰之が創立。建学の精神は、「キリスト信仰にもとづき、自由で平和であたたかい愛の学園をきずき、神を信じ隣人を愛する人、真の平和をつくるまことの人を世に送り出すこと」。

 創立70周年から「グローバル教育カリキュラム」を実施。併設のアレセイア湘南高等学校と合わせた6年間を通して、世界平和に貢献できる人を育成するカリキュラムだ。「『小さな平和』から『大きな平和』を」というコンセプトのもと、前半である中学校では、社会福祉体験、職業体験、平和学習ほか、さまざまなワークショップに取り組み、「いつでも、どこでも、誰とでも協力できる社会」をつくる人材の育成を目指す。その中学3年間の学びの集大成として位置付けているのが、2016年から行っている「広島研修旅行」だ。

 狙いは主に三つ。一つ目は平和学習。これまで学んできたことを踏まえ、原爆投下地である広島で平和とは何かを考える。二つ目は民泊家業体験。広島県の安芸太田町で、初めて会う人たちと生活を共にする。地方の暮らしを知り、自分たちの生活の中では見えない気付きを得る。三つ目は課題解決学習。世界遺産の宮島で、自ら設定した課題を調査する。

 前回の研修旅行は、19年10月30日から11月1日までの2泊3日で実施。初日は、広島駅に昼に到着し、平和記念公園を訪問。生徒たちは思いを込めて折った千羽鶴を捧げ、全員で静かに平和を祈った。続いて、グループに分かれ、現地の平和ガイドの話を聞きながら平和公園を巡った。その後、広島教会で、被爆者から当時の話を聞き、交流した。

 生徒を引率した藤井由紀子教諭は「普段は自分の感情や興味をあまり表に出さない生徒たちにも、衝撃は大きかった。平和記念資料館で遺品などを見た途端に動けなくなったり、気分が悪くなった男子生徒や、被爆体験を聞きながら涙する女子生徒もいた。事前に学習をしても、実際にその場に立って話を聞き、当時の物を見る、そういった本物に触れる体験が、子どもたちの心に大きな影響を与えていた」と言う。

 夕方からは安芸太田町に移動し、15家庭に分かれての民泊体験。

 2日目は、民泊先での家業体験。薪(まき)割り、こんにゃく作り、「祇園坊柿」の収穫、干し柿作りなど。受け入れ家庭によって内容は異なるが、「棚田百選」に選ばれている棚田で農作業をした生徒は、その雄大な風景に感動していた。作業の間には観光名所である三段峡を散策したり、川で「水切り」を楽しんだり、神楽を見させてもらった。

 「教師は2日目に全家庭を回るが、前日の緊張はまったく見られず、みんないい顔をしていた。『ご飯がおいしい、空気もおいしい』『帰りたくない』と言っていた。時間がゆっくり流れ、自然豊かな安芸太田町で家族のように温かく接していただくことに生徒たちは驚き、感謝している。人の温もりに触れることで人とつながることの大切さを学んでいるのでは」と藤井教諭は振り返る。研修旅行に行く前は、初めて会う人と生活することに大きな不安を示す生徒が多いが、毎年、安芸太田町での時間は生徒たちに大きな変化を与える。

 藤井教諭は「安芸太田町で学ぶことは、民泊体験だけではない。休耕田など、高齢化と過疎化の問題を抱える地方の現状も目にした。同じ日本でも、普段の生活では気づかないことがある。それを感じてほしい」と語る。

 3日目は、退村式後、宮島に移動し、課題解決学習を行う。「宮島の城」や「店によって異なるもみじ饅頭(まんじゅう)の特徴」「厳島神社に参拝する外国人の国別調査」など、ユニークなものが多い。店を一軒一軒訪ねて調査したり、外国人には英語で質問していた。

 研修旅行を終えると、礼状を書き、宮島での調査を壁新聞で発表する。その後、学年全員で役割分担をし、3日間の広島研修旅行をプレゼンテーションにまとめ、3学期末に発表する。

 藤井教諭は、「平和学習、民泊、家業体験課題学習など、本校の広島研修はテーマも重く、行く前の生徒たちの気持ちは多少複雑なところがある。しかし、日常を離れ、このプログラムを体験した生徒たちは、少したくましくなったように思う」と人間的な変容を感じ取っている。

 今年の研修旅行は、新型コロナウイルス感染症の影響により、例年とは違う形で10月に行われる予定だ。

 

藤井由紀子教諭

薪を使っている家庭も多く、初めて薪割をした生徒も多かった

民泊先の畑で掘ったこんにゃく芋で、こんにゃく作りも体験。こんにゃくは夕飯で食べた

高い木の上にある祇園坊柿を収穫

平和記念公園でガイドの方から原爆投下時の話を聞く

 

 
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