【交通トレンド分析102】五輪期間の首都高1000円加算の問題点 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 東京オリンピック・パラリンピック開催期間中、旅行でマイカーやレンタカー、カーシェアを使って首都高速を利用する場合、飛行機利用の際に羽田空港までマイカーで行く場合に注意が必要なのが首都高速の普通車の通行料金加算だ。

 オリンピック期間は、開幕前の7月19日~8月9日の22日間、パラリンピック期間は8月24日~9月5日の13日間の合計35日間が対象となる。自家用車については午前6時~午後10時までの16時間において首都高速の都内区間において一律千円アップされる。タクシーやバスなどの緑ナンバーの事業用の車や中型車、大型車、特大車は加算の対象外となっている。また身体障害者手帳の保有者や同乗する車両なども事前に登録をすることで上乗せの対象外となる。

 コロナ禍で外国人観光客がオリンピック期間中に入国できない状況である中、宿泊施設にとっても今年の夏は新型コロナウイルスの感染者数次第ではあるが、Go Toトラベルの再開時期も見えなく、日本人を中心に宿泊客を取り込むことになる。箱根や那須、軽井沢、房総方面など関東近隣の行楽地などにおいて、東京から車で出かける予定の人にとっては、片道千円、往復2千円の首都高速通行料金がアップすることで、マイカーを使った旅行需要が減ってしまう懸念がある。

 千円という加算額は、選手、大会関係者、外国人観光客、海外メディアなども含めて多くの五輪関係者が来日するということとなり、五輪の運営を円滑に進めるためにスムーズに都内を移動させるために、一般車を減らす意味合いがある。

 しかしながら、コロナ禍で大会関係者の車両も減ることになり、加えて公共交通機関を使わずに自分の車やレンタカーなどで移動する人も増えている。旅行においても全国各地でレンタカーを使って国内旅行を密にならない環境で楽しむ人が増えている状況があるなど、コロナ前と比べて移動スタイルが変化しており、当分の間はこのような状況が続くことになる。

 予定通りにオリンピック・パラリンピックが実施されることになった場合に1日16時間という長い時間も1回千円も加算されるというのは経済的負担が大きい。休日になれば東名高速であれば東京インター、中央道であれば高井戸などまで一般道を走る人も増え、逆に周辺道路の渋滞がさらに厳しくなる可能性も考えられる。

 また、羽田空港や成田空港へ向かう場合にも時間を要することになり、コロナ禍の五輪に合った交通政策を望みたい。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
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