国際線に乗務するパイロット(運航乗務員)と客室乗務員(CA)の新型コロナウイルスのワクチンの職域接種がANAとJALで開始した。政府が当初発表していた6月21日より1週間近く早めての接種開始となった。私は6月13日(日)に日本の企業で初めての職域接種となったANAの職域接種初日を羽田空港で取材をしてきた。ANAでは1日当たり300人の接種を実現するべく準備を進めているが、初日は50人からスタートさせ、徐々に接種人数を増やし、21日(月)には1日当たり300人が接種できるようにする計画となっている。JALも同様に1日当たり300人程度が接種できる計画となっている。
以前から外国人との接点も多く、海外へのフライト乗務がある国際線のパイロットと客室乗務員に対しては早めに接種させるべきであると思っていた。従来、感染者が少なかった台湾でもパイロットが現地で感染したことで台湾国内に持ち込まれてしまったというニュースが流れている。日本の航空会社に話を聞くと、中国便など日帰りでの乗務が可能な国では、できる限り乗務した便でそのまま戻る運用をしているほか、宿泊を伴う乗務でもホテル内から外へ出ることを禁じており、食事も全てホテルで食べるルールになっている。
これから7月に東京オリンピック・パラリンピックを迎える中で、外国人観光客の入国はないが、選手、大会関係者、メディア関係者、スポンサー関係者などが日本に相次いで入国する。入国する人数はかなり絞ったとはいえ、大会関係者以外の通常の長期ビザ保有者などの入国もあることで、7、8月だけでも10万人以上の入国者になる可能性が高い。外国人と接することが多いパイロットや客室乗務員のワクチン接種は、エッセンシャルワーカーという位置付けとしても医療従事者の次のステップで接種開始すべきだったと思っていたなかで五輪前に接種が開始できたことの意義は大きい。
ANA、JAL共にパイロット、客室乗務員からとなるが、早い段階で国際線のチェックインを担当する空港に勤務するグランドスタッフ(地上係員)のワクチン接種も開始されることを期待したい。今回のANAのワクチン接種の取材でも、最終的には自治体での一般接種と職場での職域接種を組み合わせた形で社員の接種のスピードを上げたいとしている。
欲を言えば、東京オリンピック・パラリンピックの大会関係者などを受け入れる宿泊施設の社員やスタッフに対しても大規模接種会場で先行して打てるようにしてほしいとも思う。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)