LCC(格安航空会社)は、一昔前までは飛行時間4時間以内で小型機というのが一般的であったが、次々と国際線中長距離LCCが世界的に増えている。
日本でも2020年にJALグループが「ZIPAIR」が運航開始し、現在は成田空港からソウル、バンコク、シンガポール、マニラなどのアジアだけでなく、ホノルル、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンノゼといったハワイや北米の西海岸に就航し、来年3月にはアメリカ中部のヒューストン線を成田空港発着で新規就航することが発表された。
運賃が安いことに加えて、片道単位で購入できることも追い風にZIPAIRの搭乗率は非常に高くなっているが、旅慣れた旅行者を中心に人気なのがLCCの上級クラス(ビジネスクラス)である。
現在、日本に就航するLCCの中で、ZIPAIR、エアアジアX、タイ・エアアジアX、スクート、ジェットスター航空(オーストラリア行き)などに上級クラスが設定されている。LCCの上級クラスはどの航空会社でも人気があり、運が良ければフルサービスキャリアのエコノミークラスに近い金額で乗れてしまうこともあるのだ。
フルサービスキャリアでは完全に水平になるフルフラットシートが主流になっているが、LCCの上級クラスは航空会社によって考え方が大きく異なっている。ZIPAIR、エアアジアXやタイ・エアアジアXなどはフルサービスキャリアに近いフルフラットシートもしくはライフラットシート(180度ではないが、少し傾斜があるシート)を採用している。
その中でもZIPAIRの「ZIP Full―Flat」は当該航空券を購入することでシートだけがフルフラットシートになるが、機内食・ドリンク・預け手荷物などのルールはエコノミークラス(ZIP Standard)と同じで全て有料サービスになっている。エアアジアXでは預け手荷物30キロと機内食1食分が運賃に含まれているが、どちらもシートのアップグレードという位置づけとなっている。とにかく横になってゆっくり寝ることができて安いのであれば、機内サービスは不要という人も多く、リピーターを中心に支持されている。
一方でスクートやジェットスター航空の上級クラスは、フルサービスキャリアのプレミアムエコノミーに近いシートであるが、機内食の無料サービスや預け手荷物や機内持ち込み重量がエコノミークラスよりも優遇されており、シート以上にサービス面を強化している。LCCの上級クラスを利用する際にはしっかり各航空会社のホームページでシートやサービス内容を確認し、納得した上で利用していただきたい。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)
(観光経済新聞12月2日号掲載コラム)