中部国際空港を拠点に運航していたLCC(格安航空会社)のエアアジア・ジャパンが、11月17日に東京地方裁判所に破産手続開始の申し立てを行った。同日、中部国際空港で記者会見した保全管理人の上野保弁護士は、負債額は217億円弱であることを明らかにした。この発表の中で販売済み航空券の払い戻し手続きが完了しておらず、債権になってしまうことが分かり、大きな問題となった。これは国内では前代未聞の事態である。
上野弁護士によると、旅行者が購入済みの航空券のうち、エアアジア・ジャパンのホームページ経由など、直接購入分で約2万3400人に対して約3億7千万円、また旅行会社経由で購入した航空券も人数は不明であるが約1億9400万円の合計5億6400万円の航空券代金が返金されていないことを明らかにした。
航空券の返金においては、弁済禁止の債権(破産債権)になる模様で、税金未払いなどの公租租税だけでも6億円あり、その弁済も難しく、航空券返金の見込みは立っていない。保全管理人は、エアアジア・ジャパンに出資し、取締役を派遣している会社に対して負担を求めている。
同社への主な出資企業は、マレーシアのエアアジア・インベストメント・リミテッドを中心に、日本国内では楽天、アルペン、ノエビアホールディングスなどが出資し、フィンテック・グローバル・トレーディング社も出資している。ただ、経営の主導権はエアアジア側にあることから、本来はマレーシアのエアアジア本体が返金すべきだが、その動きは現在のところ見られない。
エアアジア・ジャパンは、2014年7月に設立され、中部国際空港に置く初の航空会社として2017年10月29日に中部―新千歳線を就航させた。その後、2019年2月に2路線目として初の国際線路線となる中部―台北(桃園)線を就航。さらに2019年8月には中部―仙台線、そして今年8月1日に中部―福岡線を就航した。
だが、結果的に3年間で国内3路線、国際1路線の4路線しか運航できず、9月の4連休を最後に全便の運航を停止。10月5日に国土交通省に対して12月5日をもって全路線を廃止することの届け出を行ってから約1カ月半後の破産手続開始の申し立てとなった。
エアアジア・ジャパンは就航から3年での幕が下ろされたが、今回返金ができないと国内マーケットへの再参入、さらにはエアアジアXの運航再開にも影響が出る可能性もあるだろう。立つ鳥跡をにごさずにしてほしいものだ。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)