バスは人々の移動を支える、なくてはならない交通手段です。そのバスは運転手がいなければ動かすことができません。日本のバス運転手は全国的、慢性的に不足しており、全国のバス事業者の約8割が不足を感じています。要因はさまざまですが、特に課題なのが「高齢化」と「性別の偏り」です。バス運転手の姿を想像してみてください。多くの人が中高年の男性をイメージするのではないでしょうか。バス運転手の平均年齢は50歳に迫る勢い、女性は全体の1.7%しかいません。海外に目を向けると、男女比は均等かつ若手からベテランまで幅広く在籍している国もたくさんあります。日本は若手と女性の採用や活用をなんとなく避けてきた、そのつけが今、回ってきているのです。
例えば、オフィスで事務スタッフが足りない場合、派遣社員。飲食店で店員が足りないと、学生バイトや主婦パート。コンビニや建設現場で人手が足りないと、外国人を採用します。業界や職種により、求めるターゲットは異なるわけです。ではバス運転手が足りない場合はどうか。実は、派遣、バイト、パート、外国人の採用には全て課題が付きます。バスを運転するには大型二種免許が必要ですが普通免許取得から3年以上経過していなければ受験できません。取得には云(うん)十万単位の費用と日数を要する上、教習所は限定されます。運転技術はもちろん、年齢や健康状態、適正も問われます。大勢の人の命を預かる職業だからこそ、簡単に人材獲得できないのがバス運転手なのです。
また、大型二種免許を取得した人が皆バス運転手になるわけではありません。免許があるのにバス運転手をしない理由で一番多いのが家族の反対です。近年、報道されているバス事故の影響は大きいと言わざるを得ません。大事故が起きた直後は、事故を起こした会社とは無関係でも、入社試験のキャンセルや内定辞退、退職などが増えます。バス会社はその対策としてまずは研修を強化する必要があります。どのような内容で、どれくらい時間をかけて教えるのか、誰が教えるのか、独車の基準は何か、など提示するということです。ただ研修充実とうたうだけではなく、応募者に具体的に伝えることが求められます。もちろんその後の労働環境の最適化も必須です。
(リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)