【体験型観光が日本を変える 107】春節に見る訪日客の動向 体験教育企画社長 藤澤安良


 訪日外国人が増え続けている。依然として首都圏~富士山麓経由で関西までのゴールデンコースが多いが、徐々に地方へとその波は広がりつつある。しかし、その影響が日本中に行き渡っているわけではない。訪日外国人を受け入れようとする能動的な、ある一定の条件をクリアすることが誘客に結び付いている。

 中国人観光客の増加に伴い、「春節」という言葉をよく耳にする。中国の旧正月のことで、今年は2月5日であり、休みの期間は2月4~10日までとなる。日本のゴールデンウイーク(GW)と同様に旅行熱が高まる期間である。

 依然、買い物が旅行目的の1位だが、2月上旬の札幌雪祭りなどは人が来ている。さらに、その時期には積雪量も雪質も十分なスキーやスノーボードがアピールできる。次回の冬季オリンピックは北京であることからもウインタースポーツへの関心が高まっている。

 習近平国家主席は現在のスキー人口5千万人から2億人にしたいと考えているといった報道があった。多くの外国人に通じることであるが、北海道、東北、上信越など寒い地域はウインタースポーツと、ほとんどの外国人に人気が高い「温泉」が定番であり、その組み合わせが鉄板である。しかし、寒い時期ゆえに沖縄、九州、中四国、南紀、伊豆などの温暖地域にも可能性が高い。

 マリンやリバースポーツなどのアウトドアアクティビティは大きく伸びる可能性を持っている。ガイドブックでは動かず、体験者のネットの口コミから拡散する傾向にあり、とにかく体験して、感動したら広がるのは時間の問題である。神社仏閣、自然、田舎の原風景、太鼓、三味線、神楽、茶道、書道などの芸能など、日本らしい歴史文化はいずれも高い志向である。

 忘れてはならないが、目的の2位は日本料理だ。が、都市ホテルから地方の海に面した観光ホテルまで、郷土色も地域特性もない出来合いの総菜が並んでいる。いつものことだが、ノルウェー産のサバやチリ産の養殖サーモンなど、泳いでも棲んでもいない魚が並ぶ。アメリカンビーフ、メキシコの豚、ブラジルの鶏など、日本産を探すのが大変なぐらいである。

 求めているのは地産地消であり、国産牛であり、新鮮な魚介類の寿司(すし)や刺し身である。採れたての野菜も茸や山菜も煮物、和え物、酢の物、天ぷらが魅力である。国産米の米と、具の多いみそ汁があるなら、世界無形文化財になった和食を堪能することができる。それだけのニーズに応えられない宿がほとんどである。

 だからこそ、徹底できる宿が勝ち組となる。ホテルの中で夕食ができなくても、そのコンセプトをクリアする町中や近隣の食事施設とのコラボも有効である。あまりにも食がおろそかで、外国人は待ちきれず、日本料理作り体験へと志向が動いてきている。

 爆買いから体験への波が押し寄せてくるが、その準備と対応ができなければ何も起こらない。これらを実現しようと行動するところに波が来る。

 
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