【体験型観光が日本を変える 116】不祥事で思う体験教育の重要性 体験教育企画社長 藤澤安良


 切れる、怒る、暴言を吐く、見て見ぬふりをする。自己中心で他人への配慮がない、そんな言動を目にする機会が多い。それらに起因するトラブルや犯罪も起こっている。

 来年に迫った東京五輪の中心人物であるべき五輪担当相が東日本大震災を巡るる失言で辞任した。道路整備を巡る忖度(そんたく)発言で辞任した国土交通副大臣に続く失態で、事の重要性に対する認識が甘く、その資質が問われることになった。

 一方で、自動車メーカーの経営者の巨額な資金の流れを巡って、連日のように報道されている。また、別の自動車メーカーでも、燃費に続いて新たにブレーキの検査でも不正を行っていたことが明らかになった。しかもその不正は37年以上行われていた可能性があるとされる。

 賃貸アパート大手の施工不良物件を巡る問題では、不備のある物件が3月末時点で計1万4599棟に拡大した。さらに増える可能性もあるという。大手住宅建設メーカーでも、建設した集合住宅や戸建て住宅2千棟以上で、防火安全性が不十分な恐れがあるなどの不適合があったという。

 いずれも命や暮らしの安全に直結しており、企業としての尊厳はどこへ行ったのか。利益優先や、面倒なことや大変なことから逃れようとし、誰も責任をとらない風潮がまん延しているのではないか。その挙句、結局多大なる損害につながっており、不祥事のつけが回ってくることになる。

 再三の間違い発言や、再発防止と言っておきながら、長年にわたって繰り返されてきた。政治家の規範はどうなっているのか、企業の社是・社訓は浸透できているのか、今さらながらに人間教育が必要となる。それは、研修室や机上で理論や道理を説明されても身に着くものではなく、その教育効果が薄いという証である。つまりは、私が10年以上前から訴え続けている、体験教育の導入が不可欠となる。

 例えば、農林水産業の生産現場での職業体験を通じて、仕事の大変さと大切さを身をもって理解することができる。中でも進んでいない人工林の森林間伐体験では安全対策、危機管理、コンプライアンスに加えてチームビルディングが可能である。自然体験やアウトドアアクティブからも協調や協力や連携の必要性を学ぶ。その教育効果は絶大である。しかし、教育研修会社はそのノウハウがなく、効果において理解しておらず、旧態の研修所スタイルを踏襲している。

 旅行業界は、学校教育マーケットで体験教育の価値を理解しているが、残念ながら教育旅行と法人マーケットの連携ができておらず、企業研修への企画提案ができていない。収益や生産性が高いとはいえない旅行業界が体験型企業研修に積極的に参入し、収益構造を転換すべき時である。低価格競争に巻き込まれ、日々の業務に追われ、未来創造を怠ると将来は危うい。元号に続き、紙幣も変わることになった。悪しき慣習や風潮をリセットし、停滞から進歩に向かう新しい時代にしたいものだ。

 
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