台風17号で暴風域に入った九州北部を中心に大きな被害が出た。一時、約14万8千戸が停電。15号による被害は、千葉県ではまだ停電の家庭もあり、屋根瓦が吹き飛び、空撮映像では青いビニールシートが掛けられた屋根が軒並みであり、水漏れする家屋も多い。
ボランティアも多数訪れているが、一方でその弱みにつけ込む泥棒やぼったくり業者が現れるなど情けない状況も起こっている。屋根葺(ふ)き職人や左官は全国的な規模で確保しなければならない。一刻も早い対応が求められている。それは政治の力が試されていることでもある。
情けないのは他にもある。わが子を手にかける親がいることだ。父や義父だという前に家族であり、人間であろう。いっこうに殺人がなくならない。悪いやつが多すぎる。
教育の問題もある。首都圏の高校生が被災地の第3セクターの鉄道に乗ってきた。席に座ったが車窓の景色を見るわけでもなく、スマートフォン(スマホ)で撮る写真は自分や横や向かいの生徒同士である。その顔を景色のバックもなく撮るなら学校でもどこでも可能なはず。何のためにこの列車に乗るのか、その意味すら知らなさそう。
先生は空いている席があるのにデッキで車窓を眺めている。生徒に近づこうとせず、話そうとせず、何を物思いにふけっているのか、何のための引率なのか、注意も導きもしない。教科書の内容だけを教えればいいのではない。人間としてのありようも教えなければならない。
教育者は日々常々の関わりが必要なのである。選挙権が18歳になって国政選挙が3回行われたが、いずれも50%に満たない関心の低さが課題である。
一方で、世界気象機関は温室効果ガス排出の影響で過去5年間観測史上最も暑くなり、海の氷が溶けることで海面上昇など深刻な影響が出ていると発表し、その対応が急がれると訴えている。
スウェーデンの16歳の少女が地球温暖化を訴える姿に共鳴し、全世界的な広がりを見せている。21日に国連本部で「若者気候サミット」が開催された。サミットに先立ち地球温暖化対策を訴える一斉行動は世界各地で行われた。ニューヨークでは教育局が認めて、中高生徒が自主的にデモに参加し25万人にもなった。世界中では400万人にもなったと報じられている。政治や社会の問題に関心を持って行動する者もいる。やればできるのだ。
人間形成において教育は不可欠であり、最も重要であるが、現代の社会情勢に家庭教育も学校教育も十分に対応しきれていない。自然体験や遊びも少なく、ゲームやスマホに毒されすぎたり、人と人の直接会話が少なくメールであったり、学力重視で体験が全くなかったりする。疑似体験や上っ面の体験ではない、交流コミュニケーションを促進するのが大事だ。
ほんものの体験こそが必要であることは明白である。教育変革への勇気が必要である。16歳の少女の勇気と行動力に比べれば難しいことではない。日本の未来は当然ながら、地球規模の進んでいる変化に対応した学校教育が求められている。