【体験型観光が日本を変える 147】政治家に届くか、ローマ教皇の言葉 体験教育企画社長 藤澤安良


 世界13億人のローマカトリック教徒の頂点に立つ、フランシスコ・ローマ教皇が日本を訪れた。長崎、広島と被爆地を訪ね、「戦争はいらない」との強いメッセージを発した。

 その一方で、世界は原爆やそれを載せるミサイルなどの軍備廃絶はほど遠く、隣国の空母、北朝鮮のミサイル発射など軍拡が進む一方である。今回の、教皇のメッセージが政治家に届いてほしいと願うばかりである。

 74年にわたって戦争のない日本では、多くの社会問題が山積している。とどまるところを知らないネット社会ではSNSなどを使っての犯罪が拡大している。過日は行方不明となっていた小学校6年生の女児が数百キロ離れた男の家にいたことが分かった。こういった略取誘拐が年間42人にも上っている。親ではなく見ず知らずの人に相談したり会ったりするなど、リスクを顧みない行動の原因の一つに、多分に親子関係の希薄さや難しさがある。

 ネット上のやりとりを親に報告しない事例がほとんどだという。つまりは、家族間のコミュニケーションが不足しているといわざるを得ない。便利なツールではあるが、時間の使い方や、人として何が大切かを考えなければならない。また、誘拐監禁をする男が増えるのは、弱い未成年少女を自分の支配下に置いておきたいと、持てないが男の専有欲求を満たそうとするものであろう。礼儀も、あいさつもコミュニケーションもできない若者が増えている。

 航空機で左右に20代と思われる若い男性が座っていたが、CAから「荷物を足下奥に入れてください」といわれて、大きくて入らない荷物を持て余し、「こちらでお預かりします」と上の棚に収容する一連の流れの中で、お客の男性はついぞ一言も発することはなかった。

 飲み物リストを提示されると両側の2人とも一言も発することなくメニューを指さすだけである。配られても無言で無表情のままである。「コーヒーください。砂糖とミルクも一つずつお願いします」、受け取ると「ありがとうございます」という私の言動に大きな開きと違和感を感じてしまった。

 いったい、生きているのか、人間なのか、気持ちはあるのか、とても暗く見えてしまう。自己表現が苦手なのだろう。それでは女性に好かれる要素は少なくなる。

 学業一辺倒で塾通いばかりでは人間力がおろそかになる。学校や集落で遊ぶ子どもたちの姿は絶滅危惧種である。集落にお寺の鐘やメロディチャイムが鳴り響き家に帰る時間を告げていた。「じゃあまた明日」「バイバイ」などといって家路に向かう場面ももう懐かしい光景のように思える。

 人間関係力やコミュニケーション能力を養うには、テレビでもスマホでもゲームでもない。生の人間が直接会って交流、コミュニケーションをする機会が不可欠である。その機会は体験交流プログラムに他ならない。学校教育現場で小学校から大学まで思い切って、体験交流の機会を拡大すべきである。人間力の向上は学力の向上へとつながっている。

 
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