【体験型観光が日本を変える 87】体験、対話、旅の促進を 体験教育旅行企画社長 藤澤安良


 夏の高校野球大会で、有名私立の常連校などは全国各地から生徒が集まる中、今大会唯一の農業高校であり、全員が秋田県内出身という県立金足農業高校が決勝戦に進んだ。100回大会にして、103年ぶりの快挙とあって、秋田県民は当然ながら、判官びいきも手伝って全国的にも大いに盛り上がり、健闘したが、惜しくも準優勝となった。農業従事者や後継者が減少する中の農業高校の活躍は農村地域に元気を与えてくれた。優勝した大阪桐蔭高校は史上初の2度目の春夏連覇という快挙達成で、節目の大会に花を添えた。

 アジア大会では競泳を中心に日本選手の活躍が目立っている。2年後に迫った東京オリンピックに期待がふくらむことになる。そんなさわやかなはずのスポーツでまたもや不祥事があった。アジア大会の日本選手団に、規律にあるまじき行為により、急きょ解団帰国となった選手がいる。日の丸を付けた自覚はどこへ行ったのだろう。スポーツ力や学力ばかりが人間の価値のように追い求めすぎている結果なのか、あまりにも社会性が欠如している。

 一方で、日の丸を毎日掲げている地方自治体、複数の中央官庁で、障害者雇用を数千人規模で水増ししていた。法の秩序を守るべき省庁は当然だが、法の監督官庁の法務省までずさんだったというから話にならない。信用できるのは誰なのか、国家や自治体が守れないような法律をなぜつくったのか。人間が変になっている。

 その変になっている日本への外国人旅行者数が8月15日時点で2千万人を超えた。このペースなら年間3千万人に近づくことになる。また、米国人千人を対象に最も旅行したい国の調査で、日本がランキング1位となった。手放しで浮かれている場合ではない。いろいろな面で、日本が信頼され好まれているのに、残念なことが起こり続けている。他の国よりまだましであるなどというような低い意識ではなく、モラルやルール、法律を遵守し、襟を正さなければならない。日本を訪れる外国人の期待を裏切ることになる。オリンピックを開催する国としての威信と誇りと自信を取り戻したいものである。

 人間力や社会性を身につけるために必要なことは、多くの人に会うこと、人と交流コミュニケーションすること、議論を深めること、いろいろな地域を訪ねること、そこで、その土地の物を飲食すること、いろいろな体験をすることにほかならない。その行動が圧倒的に不足している。

 航空機や新幹線の発達により、出張でも目的地の日帰り往復が可能になり、地方でのもう1泊、ついでにちょっと寄り道、ちょっと一杯など飲食機会も減少している。会う人、話す人が、職場や会社の人、同一業界の人だけに終始していては、社会性は広がらない。社会や世界に自らが出ていき、自らが人との交流やコミュニケーションを求めることである。体験(T)と対話(T)の旅(T)が社会性を高める人づくりになる。国家的に3T推進運動を拡大したいものである。

 
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