【体験型観光が日本を変える 89】防災教育の重要性 再認識を 体験教育企画社長 藤澤安良


 台風21号は徳島県南部に上陸し、近畿地方に再上陸した。暴風雨により、鉄道、高速道路、航空も全てストップする事態も起き、甚大な被害をもたらした。中でも、瞬間最大風速が58メートルを超えた関西国際空港は、豪雨と高潮の影響も重なり滑走路が水浸しとなり、帯電し、空港が閉鎖された。さらには、唯一の陸路の橋にタンカーが追突し破損し、通行止めになったことから、数千人が取り残された。今後の迅速な対応による、早期の復旧が待たれる。

 6日未明、北海道胆振地方で震度7の大きな地震が起こった。大規模な土砂崩れ、液状化現象による家屋倒壊など亡くなった方や行方不明者、あるいは緑の北の大地が広範囲にわたって地崩れした茶色の山肌など、その被害の大きさに驚くばかりである。

 北海道の空の玄関口の新千歳空港も閉鎖になり、関空とともに国際線も多い両空港の閉鎖は、航空貨物はもちろん、訪日外国人の来訪と、その帰国の延長を余儀なくされるなど大きな影響を与えている。

 その震災に追い打ちを掛けたのは、一時北海道全道停電などその範囲の大きさである。家庭では言うに及ばず、あらゆる生活用品が電力に頼っており、食品保存では家庭用も業務用も冷蔵庫・冷凍庫は必需品であり、多くの食品に影響が出ないことを祈りたい。また、情報収集の頼みはテレビやスマホであるが、電力がなければテレビは見られず、充電ができなければスマホは役に立たず。

 ほとんどの医療機器が電力によるが命に関わる問題だけに、その対応と今後の対策が求められている。これだけ災害が続くと、水や食糧確保、電力のない生活、それらをシミュレーションし備えるなど、防災意識も高めなければならない。一方で電力会社、空港ビル、タンカー、鉄道会社、看板設置会社など、企業側も想定外、予定外という聞き飽きた言い訳ではなく、周到なる安全対策、危機管理が求められている。防げることもあったはずだ。

 復旧も、もっと早くできるはずだが、能力と真剣さが足りないのではと疑いたくなる。日本中で起こってきた多くの災害が、対岸の火事や他人事になっていて、自分事と思っていないことから、いざ自分に災いが降りかかってきても、その教訓が生かせないことになる。防災教育は、自分事として体験し、それを万一の時に対応できる能力を備えることである。

 われわれが推進する体験教育は自らが体験することにより、あらゆる能力を得たり、安全対策危機管理、さらにはコンプライアンスまで体得する機会である。企業も公務員も誰のために働いているのか、家族や自分のためという答えは返ってきそうだが、利用する人、商品を買う人、国民住民がいなければ仕事にはならない。全ては人のためになることだ。その意識の希薄さが日本の課題である。

 企業研修は机上研修で、画像を使っての講師の講義が圧倒的に多い。そのカリキュラムの多くを体験プログラムにすべきである。体験は人間力の原点である。

 
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