【体験型観光が日本を変える 95】免税施策で観光消費の起爆剤に 体験教育企画社長 藤澤安良


 来年5月から新天皇が即位し元号がかわる。さらには、来年秋には消費税が10%に上がることが閣議で確認された。過去の例から見ても、家や車など大型の買い物は消費税が上がる前に駆け込みでの購買が起こっている。政府はあらゆる景気対策を駆使して消費低迷を防ぎたいとしている。

 懸念材料は家計の収支バランスであり、消費税2%アップ分、給与などの所得も2%上げなければならない法律を作ればよいし、減税をすることも考えられる。いずれにしても、消費者の懐が寒いままでは無理がある。

 食料品や日用品、あるいはインフラ関連、高騰しているガソリンなど必需品の消費は大きく落ち込まない。しかし、観光産業は交通費のかからない近くで済ませ、宿泊日数を減らしたり、土産を買い控えたりと大きな影響を受けることが懸念される。数年間の期限付きであってもいいが、旅行消費総額を確保するために連泊を推進し、2泊目以降を施設が1割引きにすれば免税にする。それに連動して1回の体験料が4千円以上を免税にするなど、固定概念を打破する柔軟な考え方も必要だと考える。

 また、訪日外国人が増え続けているが日本人の国内旅行は伸びていない現状から、1年に6泊分(1都道府県2泊)や、被災地応援宿泊4泊分が免税になるクーポン券をつくるなど、消費税アップを好機と捉えて、免税施策で観光消費の起爆剤にすべきである。

 日本シェア第1位の免震・制震装置の企業が検査データを15年にもわたって改ざんしていた事実が発覚した。その中には、世界中から観光客を集めている東京スカイツリーも含まれており、さらに驚きである。以前にも同種の免震ゴムや自動車メーカーの検査にも問題があった。

 建築物や自動車などの製品のクオリティはそのまま、人の命に直結している。それを揺るがしてまで、会社や自己の立場を守ろうとするなら日本企業の信頼を損なうことになる。企業人は何を理念として生きているのか。経営者のモラルはどこにあるのか。想定外も頭になかったも聞き飽きた言い訳。日本企業のあり方が問われている。

 計算が速かったり、物知りでは解決できない社会力や人間力が足りていない。教育の不足を痛感させられる。マニュアルやアイパッドでの教育では、しょせん文字や映像であり、実際に起こり得る現実と結び付ける能力も磨かなくては役に立たない。また、安全対策、危機管理、法令遵守の場面では、想定された通りのことが起きるとも限らない。

 つまりは、人間にはあらゆる体験が必要であるが、それが圧倒的に足りていない。年齢や地位、あるいは業種業態に関わらず、自然体験、農林水産業の仕事、工芸などの物作り、郷土料理などの食事作り、あらゆる分野を体験することにより、あらゆる立場を理解し、人間力を育む機会となる。

 体験教育が消費税の使い道なのか、免税の対象にするのか、人づくりなくして地域づくりも国づくりも成し得ない。

 
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