復興相の「東北で良かった」発言が大きな問題となり、新しい復興相には被災地、福島県選出の吉野正芳氏が就任した。東北の震災復興には多額の財源が投入されており、住居や町づくりなどの生活基盤の復興はもとより、差別や風評被害など、精神的な復興を進めなければならない。
比較的晴天が続いた今年のゴールデンウイーク(GW)は、あらゆる交通機関が満席で、高速道路などが大渋滞する中で多くの人が旅行やレジャーに出かけた。私も福島県に宿泊した。残雪が見られる磐梯吾妻スカイラインの浄土平から手軽に登れる吾妻小富士1707メートルの山頂から爆裂火口跡を覗き込み、遠くには飯豊連峰の絶景が展開していた。眼前に噴煙が吹き出している一切経山のダイナミックな山容はシルクロードの天山山脈にも似ている。
新緑の芽吹きがまばゆい磐梯高原では、1888年の磐梯山の火山噴火によってできた檜原湖でモーターボートに乗った。湖上から磐梯山を望む雄大な景観は、最大級の観光地であり、アクティブな観光で大自然の素晴らしさを感じるには余りある地域である。
しかし、一般観光客は戻りつつあるものの、修学旅行などの教育旅行関係は3・11以前には戻っていないとのことである。また、全国各地でインバウンドが急増する中で、東北は他の地域に比べて伸び方が少ないようにも感じられる。磐梯高原では、懸念の放射線量が首都圏よりもはるかに少なく、その真実や実態を理解せず、差別になったり、風評を信じたりするような人の思いを払拭することに力を入れなければならない。公的機関とそれぞれの地域自らが安全を立証することが不可欠である。宿泊施設、観光・飲食施設、駐車場のスタッフも一生懸命さが伝わり、応援しなければと思う旅であった。
残念なことは一つあった。一般道も、高速道路も渋滞しているGWに、思う時間には目的地にたどり着けない現状は、観光関係者でなくても容易に理解できるはずである。ある観光施設は17時受け付け終了、17時30分閉館だったが、受け付け時間を過ぎて断られた人のほかに、17時5分に1組の家族が受け付けに交渉し、「25分で見学し、閉館には間に合わせるから」と言って入館した人もいた。
施設は、融通を利かせたようにも見えるが、お客を急がせただけである。17時をわずかに超えて数十人が入り口で「せっかく遠くから来たのに残念だけど仕方ない」などと言って帰って行った。日没が19時過ぎのこの時期で、しかも、特別の多客期で道路事情が悪い中、遠路足を運んでくれたお客にすべきことは、せめて30分延長して数十人の残念な思いを救うべきである。そんなことをすればきりがないという反論は当たらない。施設の規則やマニュアルの通りではなく、事情を酌量して顧客のニーズに合わせ、その思いにどれだけ応えられるかが実践できてこその有料施設であり、それが観光立国への道である。それぞれの立場でできる復興への道は何かを考えて行動したい。