【体験型観光が日本を変える281】企業間競争と連携 藤澤安良


 全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、永年のライバル会社であり、顧客目線でも仲良しには見えないが、機内誌に両社が見開きのページに社長の顔写真入りで同じ紙面スペースで掲載された。

 「2050年航空輸送におけるCO2(二酸化炭素)排出実質ゼロへ向けて」を策定し、両社で豊かな地球の次世代への継承と日本経済の持続的な成長への貢献を目指すとして、さまざまな環境対策等についても協力して推進すると宣言したのである。

 また、日本エアコミューター、オリエンタルエアブリッジ、天草エアラインの九州の地域航空3社は、ANAやJALの大手系列会社の枠を越えて共同運航することになった。連携による販売拡大で地方路線の維持を目指すとしている。

 物価高が食料品高になって家計を圧迫しているが、新形コロナウイルスの感染拡大による在宅での食事機会が増え、業績を上げている冷凍食品会社である。その大手であるニチレイとマルハニチロは、テレビ番組で双方の企業秘密ともいうべき製造工程の映像を紹介したのである。

 もはや国内マーケットのみで甘んじている場合ではなく、おいしくて、手軽で、安価で、保存可能な食品は世界中をマーケットとすべき時代であり、国内で競い合っている場合ではなく、互いに進化し変わり続ける必要がある。

 グローバル化の波の中で企業間連携は各方面で必要になる。

 ライオンと花王は、プラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向けて、フィルム容器のリサイクルに協働して取り組むことを決定したと発表した。フィルム容器のリサイクルに企業の枠を超えて取り組む。製品使用後のプラスチック容器やハブラシなどのリサイクルプログラムの取り組みも推進している。いろいろな企業がSDGsの取り組みを進めている。グローバリゼーションの中で国内の連携は評価したい。

 一方で、食欲の秋が値上げの秋にかき消されそうな勢いである。水道光熱費・ガソリン代などのインフラ関係は大幅アップとなった。また小幅ながら春から3回目の値上げとなった食品もあるなど多品目での物価高はボディブローのように効いてくる。

 その物価高は欧米もしかりであり、大幅な円安も、衣食住の次にしか来ない旅行消費にも影響が大きい。全国旅行支援も物価高援助も有難いが、回りまわって大幅赤字の国家財政からとなれば手放しで喜んでばかりはいられない。金の切れ目が消費の切れ目になることは明白であり、それは対処療法でしかない。

 内外の物価高に円安に対応できるのは所得向上、つまり賃金アップに他ならない。コロナで痛めつけられ体力がない会社が多いが、ここで賃金アップができなければ人材流出を防げず、人材確保の面でも困難を極めることになる。

 先進国33カ国で若者の労働意欲が一番低い国日本の未来は相当危うい。観光産業も地方の自治体も我田引水や足の引っ張り合いから脱却し、視野を広く持って、誰がやるのか、どの組織が動くのか、連携を強化すべき時であり、それが生き残りの道である。

 
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