【体験型観光が日本を変える294】今こそ人も人類も変わるとき 藤澤安良


 過日は航空機にて広島市に向かった。航空機は久しぶりに往復とも、ほぼ満席であった。確実に旅行客は増えている。全国旅行支援が後押ししている感はある。

 前週に、ある町の全国的に名が知れたホテルに泊まったが、15時のチェックイン開始時間にはフロントに15人以上が並ぶ。ホテル側のフロントの対応ブースは6カ所だが、対応しているスタッフは3人だけであり、1人当たりの対応時間が5分以上かかっており、大声でスタッフを増やすように声を荒げる客もいる。その言葉に正面から対応する人はいない。素知らぬふりである。多分スタッフがいないのであろう。サービス業の労働力不足が露呈した形である。

 時間がかかる原因は、通常のチェックイン業務に加えて、全国旅行支援の手続きがある。ワクチンの3回以上の証明書と身分証明書の提示、およびチェックシートの署名である。別の一流ホテルはフロント前に椅子テーブルを10脚程度用意し、従来の宿泊カードに加えて全国旅行支援関係書類の記入と準備をあらかじめした上で、フロントに向かってもらうシステムである。こちらも3人の対応であるが、1人当たりの時間が3分の1程度で、人を待たせていない。お客の時間を奪わないシステムが必要になる。

 チェックイン時間前に部屋の準備ができていて、時間前から入室できる宿と、たとえ準備ができていても、かたくなに時間にこだわる宿がある。それもお客の集中原因となり、お客を待たせることになる。マニュアルや約款に振り回されないことである。

 客の利便に従い動くことはいささかも問題はない。とにかく仕事はどんどん前倒しに動くべきである。時間の使い方の上手下手が経営に関わってくる。さらには労働密度が低い上に、自分は係ではないとか、係がいないとか、逃げる人間のなんと多いことか。マルチタスクでなければ今は生き残れない。

 旅行業界も十数人しかいない職場で、係が違うと他人事の人がとても多い。あなたは旅行業の人ではないのですかと言いたい。最近はワクチンセンターや、にわか仕込みの出来の悪いコンサル、政府の補助金窓口代行にもこのような人がいる。急に宗旨替えしてもうまくいかないと誰もが思っている。

 全国旅行支援が4月も続くとの議論がある。しかし、いつまでも国の支援に頼ってばかりはいられない。自らの知恵と行動力でコロナ禍からコロナ後を見据えて、収益率が高く、価格競争ではない、品質と文化性の高い商品に転換しなければ、今の旅行業は滅びることになる。

 公務員も会社員もパソコンに向かって手を動かすだけだったり、内部の会議ばかりだったりと、仕事のアリバイ作りをする人が多い。そんな仕事ぶりで、そんな生産性で、給与とつり合いが取れているのかと疑問が多い。働かず、楽をして、でも給料が多い方がいいという人がなんと多いことか。仕事に向かう志の持ち方がその後の大差となる。今、人も組織も変わるときである。SDGsやサスティナブルツーリズムが変革の糸口になる。

 
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