【体験型観光が日本を変える306】体験交流で人間力磨こう 藤澤安良


 厳重な警備の中、G7広島サミットが各国首脳や世界的な組織の長などが、おおむね好印象で無事に帰国の途についたと認識している。会議がゴールではなく話し合われた内容の具現化が求められており、その行動の始まりを期待したい。

 命の尊さが再確認されたはずであるが、ウクライナでは反転攻勢だといわれ、戦闘の激化が始まっている。国内では強盗、殺人、立てこもり、銃の使用等の凶悪事件が相次いでいる。金銭目的なら貧困格差や仕事有無にも絡んでくるが、他は多くが人間関係である。

 中でも、長野県中野市では近隣の主婦2人が刃渡りの長い刃物で十数所も刺されて殺害され、警察官2人は至近距離から猟銃で撃たれるなど4人もの犠牲者が出る事件となった。平和な果樹園が広がる田舎町の出来事だけに衝撃は大きい。

 動機は捜査の行方を待つとしても、報道では社会との孤立や人間関係が不得手、コミュニケーションができないなどの人間的な要因が絡んで、自己承認欲求の屈折した表現のあり方ではないかと論じられている。人間関係というより、一方的な思い込みや自己暗示や自己演出の孤立した社会観からではないかと思う。

 銃の所持の許可がいくら厳格であるとしても、人格に至る人間性までは審査でたどり着くとは思えない。つまりは、銃の規制問題ではなく、使用する人間の心の問題なのである。

 心を鍛えるのは親でも学校でも容易ではない。甘やかしてもほめちぎっても身につかない。成功も挫折も艱難(かんなん)辛苦を乗り越える力は、体験交流による感動から培われるものである。自分以外の生身の人間とのふれあい交流に他ならない。人と話さなかったり、引きこもっていては解決しない。

 わが国が学歴偏重に偏り、机上学問のみを重視しすぎた結果、子ども時代から遊びや自然体験が少なく、人と人の関わりも希薄になり、学力以外の非認知能力(人間力)が成熟できていない人間が多くなっている。しかし、学力が向上しているわけでもない。学識や教養が高いと思える人も多いわけではない。

 その上、学力低下が危惧されるのはAIとチャットGPTの出現である。既に、文章作成や企画能力において、企業や学生の中で使用されている。その省力化した時間や手間を有効に活用し、より高みを目指さなければ、怠惰になって、自分の能力はAIを上回らないことになる。日本にはびこる、できるだけ働きたくない不労、真実を捻じ曲げる不正など、行政も議員も会社員も会社経営者も自分事の優先である。社会事を自分事にする人こそが必要である。

 社会性が乏しい大人のなんと多いことかとも思える。学力と人間力は両輪の関係にあり、双方がうまく機能してこそ社会性ある人間になる。

 日本をより豊かな国にする方法は、子供はよく遊びよく学び、かわいい子には旅をさせ、学校での修学旅行等は体験交流とし、企業や組織も机上研修ではなく体験活動に、行政や議員は農林漁業体験とすべきである。体験交流は人間力を育む。

 
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