【体験型観光が日本を変える313】人は感動の価値に金を払う 藤澤安良


 梅雨とはいえ、九州や北陸、秋田県を中心にした東北で線状降水帯が相次ぎ発生し、大雨洪水や土砂崩れなど甚大な被害をもたらした。また、それ以外の地域では、梅雨が明けたのかと思う猛暑日が続き、熱中症での救急搬送が常態化している。

 例年にないこのような気象は地球温暖化の影響であろう。夏休み前の3連休も観光地など人出が多くなっている。ランチ時の東京駅内ではほとんどのレストランに列ができていた。コインロッカーは全て使用済みで、手荷物一時預かり所に長蛇の列ができ、キャパオーバーなのか受け付け制限にまで及んだ。

 お客に待たせたり不便をかけるなど、多客期の顧客対応力のなさは、そのまま現代日本の経済や観光の閉そく感につながっている。つまりは、せっかく人出が多くなっているにも関わらず、少しもうまく動けていない。社会システムの問題のように見えても、しょせん人が考え、人が作ったものである故に人の問題なのである。

 こんな人はいませんか? 人はいいが、仕事はできない。悪い人ではないが、学べる人ではない。与えられた仕事はこなすが、時間がかかっている。マニュアル通りで、それ以上がない―など。私はコロナ後になりつつある中で、そんな人ばかりが目に付いてしまった。

 人への不満は尽きない。求められているのは、現状打破、改革と進化、行動力に突破力等である。

 その3連休の終わりに、東京方面行きの高速道路は長い渋滞にはまっていた。私は、それを横目で見ながら地方に向かう高速バスに乗っていた。休日だけにほとんどが自家用車である。

 コロナ前なら多くの観光バスに出会ったのだがと思い、ツアーや団体旅行のバスがあまりにも動いていないことに驚くばかりであった。バス会社もコロナ禍で離職した運転手も多く大きな変化を感じることになる。

 旅行の企画内容を体を動かすだけの旅から、心も揺り動かすような企画内容にと抜本的に見直さなければ観光産業とバス会社の未来は開けない。働き方改革は良いが、なるべく働かないで、給料だけ多く欲しいという改革は「働かない改革」である。

 隣国中国の景気の回復が進んでいない。さらに、G20財務相・中央銀行総裁会議もインドで開催されていた。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や米欧の利上げを背景とした世界経済の下振れリスクを共有するが、効果的な回復策は生まれそうにない。日本も安穏とはしていられない。

 そのうち誰かがやってくれるだろうという他人事の風潮も、魂の薄い生き方も変わらなければ、物価高に打ちのめされそうな日本は立ち直れない。感動する人の心が主役の旅作りが求められている。感動の価値にお金が支払われることになる。

 
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