【体験型観光が日本を変える319】アフターコロナのハワイ観光 藤澤安良


 夏休みの終わりにハワイに行った。5日間の予定で、帰りは新学期が始まる9月とあって、家族連れは少なかったが、航空機材はANAのホヌ(ウミガメのラッピング)520人乗りであったが、成田発とあって乗客のほとんどは日本人だ。

 搭乗率はそこそこ高くエコノミーは8割近い。CAの話によると夏休み期間中は連日ほぼ満席であったとのこと。昨年に比べて日本人観光客は戻りつつあるが、コロナ以前に比べて全ての便が運航していないので、完全に戻っているわけではない。

 ハワイでは韓国人は少し来ているが、中国人は政府間がしっくり来ていないこともあるのかほとんど見ない。ダウンタウンの一部にあるチャイナタウンは人影もないシャッター通りとなっている。

 現地の日系ランドオペレーターの支店長は航空機とホテルはネットで容易に予約ができ、現地でのアウトドアアクティビティなど体験プログラムやレンタカー等、スマホを使いこなして動いているため、観光バスはほとんど見ないと言う。個人客は旅行会社の関わりが必要ないなどと時代の変化を嘆き、「次なる戦略を考えなければならない」とも。

 従って、旅行会社の役割は修学旅行を含む団体旅行や募集ツアーの造成にある。それに立ちはだかっているのが1ドル=146円という円安である。食べる物も買う物もみんな高く感じるので、購買意欲は大きく減退している。現地滞在費も同様に高く、団体のスケールメリットも生かしきれず、価格の魅力は出せない。ハワイにも気軽に行けない日本は先進国とはいい難いのかもしれない。

 円高に戻るか、日本の給与水準の大幅なアップが望まれる。ワイキキやアラモアナにある日本のカード系やキャリア系のラウンジを数カ所尋ねたが、訪れている人はまだまだ少ない。アンケート用紙が渡されるが、ドリンクサービスがあるところ、お店の割引券ばかり渡されるところもあり、いずれもとりわけ物質的なサービスがいいわけでもない。

 心地よい空間といっても大差なく、差が出るのは接客接遇である。言葉づかいは普通である、ことばの選択や配列は良くてもことばのトーンに現れる。顔の表情が硬く、魂がないビジネス用のつくり笑顔が透けて見える。

 日本では枕詞として「こころから」という言い回しをするが、それを強調し過ぎても真意は伝わらない。その仕事が好きで、心からお客に寄り添う気持ちがある人はことばも笑顔もおのずから相手に伝わり、ほんものの接客となる。

 自動音声装置やAIの普及は目覚ましいものがあるが、まだまだ、相手の顔の表情を読み取り、その場のシチュエーションを考慮して、ことばやトーン、表情や所作を駆使できるのは人間だけである。

 キーボードや画面タッチに慣れた人は、人間とのかかわりが面倒で求めていない人も増えていることは確かである。日本が長年にわたって培ってきた絶妙な対人関係である接客接遇の極意を退化させることなく、次の時代につないでいくことも大切で、それが付加価値となる。

 
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