【体験型観光が日本を変える323】素材の味生かした郷土料理を 藤澤安良


 全国平均気温が約3度高かった9月が終わり、10月になっても気温が高い日が続いている。観光は季節感通りに進んでくれると、お客の流れがつかめて準備がスムーズになる。

 福島原発の処理水問題は中国が日本からの魚介類輸入禁止を行っていることで、国産の魚介類の流通に支障を来している。とりわけ、ホタテの比率が高いという。

 そのホタテの産地は福島の海からは約千キロも離れている北海道が多い。中国への輸出分を日本国内で消費すればいいのではとの考えは当たり前であり、わが家でもホタテの刺し身をとてもおいしくいただいた。ぜいたくではあるが、少しは社会に貢献できていると思うとそれも悪くはない。

 日本の魚介類を敬遠するなら、中国漁船が日本沿岸で再び操業を行っていることは大きな矛盾がある。米軍が撮影したとみられる中国漁船の画像や日本海域の地図を示しながら、エマニュエル駐米大使が講演し、問題提起した。

 また、観光面でも欧米やアジア中心に全体的にコロナ前の8割に達しているが、中国からは4割程度となっている。

 始まる中国の大型連休、国慶節でも大きく増えないだろうとの推測がされていたが、9月30日の中国発の日本に向かう航空便は満席で飛んでいる。

 日本への渡航客へのインタビューで処理水の問題を尋ねられると、「自分で調べてみたがそれほど大きな問題ではない」と言ったり、「日本で働いている友人から大丈夫と言われたので行きます」など、政府より国民の方がリアリティがあるようだ。

 世界で一番おいしい刺し身やすしが食べられないとする観光客は日本に来なくてもよい。都市部を中心にオーバーツーリズムが問題になっているが、日本の田舎は全く混み合っていない。受け入れるキャパシティとしての余裕はある。

 しかし、外国語表記や語学力があるスタッフが少なかったり、キャッシュレス対応が進んでいなかったり、体験プログラムやアウトドアアクティビティなどの旅の目的提案が不足していたり、夜の飲食店の営業終了時間が早かったりと、受け入れ態勢整備ができていないこともその要因である。

 とりわけ、旅の大きな目的は日本食にあるが、日本人ですら満足できない出来合いの総菜、季節感や旬を感じられない冷凍食品、山の中ではとれない魚、地元の農家に野菜があるのに、わざわざ遠くの県から業者によって納入されているなど、地産地消の食事が提供できていないことも重要な課題である。

 人手不足もあるが、日本の旅館業の大きな課題は理念がない手抜きを考える料理人にある。金太郎あめのごとく、地域特性がない料理が並ぶ。客側も外食、スーパー総菜、冷凍食品、インスタント食品に慣らされており、味が分かる人が少なくなっている。

 素材の味を生かした郷土料理こそ、旅客が本来求めているものであり、外国人も同様である。都市部のオーバーツーリズムの解消は他方の受け入れ態勢整備とプロモーションが不可欠で、田舎のグローバル化が地域振興の鍵となる。

 
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