【体験型観光が日本を変える327】「ぽつんと一軒家」にみる田舎の良さ 藤澤安良


 11月は気温が25度を超える日から始まった。しかし、朝夕は冷え込み、秋らしい気候になってきた。いよいよ紅葉も山から平地へ降りて来て、行楽のシーズンとなる。

 月初の3連休は天気にも恵まれ、各地に繰り出した人も多く、高速道路は渋滞となった。集中する日程と観光地、インバウンドの増加も相まってオーバーツーリズムも起こっている。とりわけ京都市内の観光地は平日でも大混雑が続いており、市バスも積み残しが相次いでいる。

 班別自主研修の修学旅行生も積み残しで予定通りに行動できないことも起こっている。

 そもそも、オーバーツーリズムが発生するような観光地に、修学旅行生が行く必要があるのか。交通が便利になった今日、いつでも行けるところへは修学旅行で行く必要はない。

 「ぽつんと一軒家」というテレビ番組の視聴率が高い。都会の喧騒から脱して、田舎の山奥に住んでいる人、昔は近くに家屋があり、集落だったところが人口減少や暮らしが不便で離村した人などで周りがいなくなった一軒家もある。しかし、住めば都。不便さも、大変さも受け入れ、先祖からの受け継いだ土地や家屋を守らなければと思う気持ちも伝わり、心を動かされるものがある。

 自然の豊かさ、田畑での農作物や裏山から取れた山菜やキノコなど、自給自足に近い生活にもあこがれがある。とにかく、心豊かに生きている様子が視聴率につながっている。

 地方に行く機会が多いが、私が地方でその話をすれば、「この先の家にも取材が来た」とか、「この近くもそろそろ取材が来るのではないか」と話をしているなど、田舎での視聴率も高い。

 一軒家ではないとしても、そんな心豊かな田舎の暮らしが体験できる農家漁家での教育民泊がある。

 新型コロナ禍で失われた人と人との交流機会や自然との関わり、地産地消の新鮮で旬の野菜や果物、あるいは魚介類などで作る料理は絶品である。そんなぜいたくが地方や田舎の価値でもある。

 テレビのロケ番組でも生産現場の「食」に関わる報道が多くなっており、その関心の高さをうかがい知ることができる。修学旅行の教育目的にも合致し、なおかつ高い教育効果が得られる地方での体験交流や教育民泊が不可欠である。いつでも行こうと思えば行ける名所旧跡、神社仏閣、テーマパークや遊園地は学校行事で取り入れなくても逃げはしない。

 戦後からの急激な社会の変化は、しっかりと目を見開いて確認しなければ、見過ごしたり、知らずに終わることにもなる。都市の身の回りで起こっていることのみに埋没していると、地方の出来事や課題について理解する機会、また高齢者の知恵や匠の技などを理解する機会がなくなる。次の時代に伝承されないで絶滅するものも多い。

 田舎の価値、年配の人の価値を再認識する機会こそ次世代に継承したい事柄である。持続可能な社会に向かう時、SDGs学習はまさに時代の要請ともいうべき学習のテーマである。田舎を訪れ学ぶことこそが未来につながる扉となる。

 
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