【体験型観光が日本を変える340】株高を観光の好景気に 藤澤安良


 東京が初夏の気温になったかと思えば雪が降るなど、寒暖の差が激しく服装も体調もその変化に追いつけない状況が続いた。

 2月22日、日経平均株価が3万9千円を超えた。実に34年ぶりのことだという。大手電機メーカー5社は増益となり、鉄鋼2社も純利益が増加、外食6社も好業績でマクドナルドは最高益を出している。

 自動車2社は賃上げ要求中の春闘で労組の要求額を満額回答した。バブル崩壊の頃を思い起こしてしまう。しかし、経済界の景気のいい話は庶民の生活にまで届いてくれるかどうか、この先を期待したい。

 観光業はインバウンドで局地的に潤ってはいるが、実質賃金が増えていないことからも、国内旅行の伸びがコロナ前までは戻りきらない。多くの日本人が動き出さなければ、観光の好景気とはならない。

 三大都市圏や博多や札幌などの都市型観光地と著名観光地はインバウンドに引っ張られて宿泊料の高騰が目立っている。口を開けば欧米の富裕層をターゲットにしてなどと誰もが言うが、現状のままでは施設も接客も料理も高く取れない宿が多く存在する。分相応であり、お客にとっての値ごろ感もある。

 燃料や電気代、あるいは食材原価などの物価高と従業員の賃上げも考慮しての必要な値上げは当然だが、コロナの3年間を取り戻そうとするような上乗せは、日本人のお客の値ごろ感から離れている。

 そこで、観光地や宿泊施設の選択の動機一つとなる割安割得感・顧客満足度を考慮した値決めを行う必要がある。

 施設はすぐさま改修できないとしても、接客は教育研修で、料理は仕入れとメニューを考えれば可能である。食事メニューは郷土色・地域色・鮮度・農林水産業などの食料生産地である地元と強固な連携を図るべきだ。しかし、それがほとんどできておらず、業務用の袋切総菜が幅を利かすことになる。

 どこで食べても日本中変わらない、とりわけ朝食は作らず出来合い惣菜で間に合わす宿泊施設がなんと多いことか。料理をしない高い給料を要求する料理人はいらない。地元のおばちゃん料理のほうがいい。それらの人を厚遇するほうが地域にも施設にとっても好ましい。

 さらには、地元の1次産業従事者なら自らや地域のネットワークで食材調達が可能となる。料理人と食材納入業者のよからぬ癒着はたくさん見てきた。この分野をすっきりしたいものである。

 また、食事提供時に食材生産者や調理方法などの解説がほとんどない。生産地・生産者まで記載されたお品書きを併用して、その鮮度と食事の価値を理解してもらおうとする努力をすべきだ。魚介類や野菜やキノコ、あるいは果物まで、外国産なら書けない言えない理由もわかりはする。

 過去に5千泊程度の宿泊をし、食事をしてきたが、年々地域特性が失われていく傾向にある。地産地消の郷土料理メニューは旅と食事の価値を大きく高める。それが、日本人客の納得感と顧客満足度を高め、国内旅行が動き出すきっかけになる。宿泊経営立て直しが鍵となる。

 
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