梅雨が近づいている。近年、局地的に豪雨となる線状降水帯と言われるものの出現が多くなった。その豪雨を各県単位(北海道は数カ所)で予測する精度が高まったとの発表があった。やがて市町村単位での予測が可能になるという。予報からの予防の精度が上がれば被害の縮小に役立つことになる。
起こってしまった豪雨の処理は洪水対策にゆだねなければならない。しかし、日本の国土面積に占める森林の割合は68.41%(2021年調査)。実に3分の2以上が森林ということになる。
その森林面積の4割を占めるのが人工林であり、その人工林が間伐などの手が入れられておらず、保水力が弱く、生物が棲めない森林の環境が拡大している。
つまりは水害の問題と同時に、昨今ニュースが絶えない都市部にまでやってくるクマ、イノシシ、シカ、サルなどの「アーバンアニマル」とまで言われる動物の棲息域の問題である。とりわけクマによる死者や重傷者は後を絶たない。
今年から森林環境税が個人住民税の均等割に千円を上乗せされ、徴収されることになる。地球温暖化防止や災害防止のために、森林保全に必要な財源を確保するために国が課税する税金であり、森林環境譲与税で都道府県と市区町村に譲与され配分される。
市町村においては、間伐等の「森林の整備に関する施策」や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進、普及啓発などに充てられる。しかし、地球規模の温暖化対策や国家の治山治水、獣害対策など国土保全に関することを、現場をよく理解していない政治家や行政に任せておくことは危険である。
私の実家は獣害に戦い続けているが、山間地に住む人、人工林の間伐がなぜ必要でその森の将来像をどう描くかビジョンがしっかりしていなければならない。
昭和30~40年代、ビジョンを描かず、無秩序に国家が植林奨励をした結果、標高千数百メートルの急峻な瓦礫(がれき)の山にまで搬出することは全く考えず植林され放置されている。
その現場を訪れたが、枝打ちや間伐などの作業ができるような足場ではなく、一歩間違えば谷底に滑落しそうな場所である。
そこには、40年以上のヒノキが500ミリのペットボトルより細い状態で風雨や風雪に耐え抜いてきた姿があった。それらの内実を確認し、森林組合や委託事業者のみならず、企業のCSR(社会貢献活動)や人材育成プログラムとして森林環境整備事業を推進すべきである。
また、観光産業においても自然環境や農山村の深い理解のためにも、25年前から実施をしているが、SDGs学習の普及拡大の機会と相まって教育旅行の体験プログラムとして人工林の間伐、里山保全、竹林整備などを通じて、地球環境保全について考える機会としてほしい。
一般観光も物見遊山から体験交流型に大きく変化する中、旅行業界は何時もその変化についていけない。観光は、SDGsは当然ながら、社会貢献活動が必須アイテムになる。森林環境税が始まる今、日本も観光も変革の機会となるよう期待する。