【体験型観光が日本を変える356】リゾート地・サイパンの観光事情 藤澤安良


 東京が梅雨入りと思う大雨の日に、成田空港から3.5時間、常夏の国北マリアナ諸島のサイパンに飛んだ。30年前に訪問して以来の渡航となった。地理的にはグアム島の隣だが、現在、それを知っている人が少なくなった。

 海が青く美しく、ダイビングのメッカとなり、日本各地の主な空港から直行便も飛び、日系のホテルもあって、手ごろな海外リゾートとして栄えていた。

 当時の渡航者は9割近くが日本人であったといわれている。今は、日本からのお客は少なく、ホテル、マーケット、レストランで日本人にはめったに会わない。現地の日本人向けツアーにもお客がいない。

 現地の人は以前の多い時は大型バスに満員のお客さまをご案内していたと、懐かしみながら、日本からのお客が増えることを望んでいる。

 円安の影響は大きく、1ドル=160円のレートで交換して出かけた。物価や食費は全て日本より高く、何かを買ったり食べたりしようと思えば、3日後の日本到着後まで我慢しておこうなど貧乏性が出てきてしまう始末。サイパンの魅力は美しい海と悲しい歴史の大きなコントラストである。

 もうすぐ戦後79年目の夏を迎えるが、サイパン島は日本軍が玉砕した島でもあり、戦死や自害した場所に日本政府が建立した慰霊碑が立ち、当時の指令壕や戦車や高射砲の残骸がある。沖縄がほうふつされ、近い状況や光景を目にする。戦争の生々しさを今に伝えている。

 その日、慰霊碑の横には、日本、北マリアナ諸島、アメリカそれぞれの国旗がはためき、今日の平和を象徴していた。

 現在、韓国から週21便も飛んでおり、韓国人が8割になるという。あらゆる表記がハングルとなり英語を凌駕する勢いである。ベトナム・フーコック島を超える状況にある。また、こちらも小学生の子供を連れたファミリーのなんと多いことか。日本の夏休みの海辺の観光地の様相である。

 過日、日本の特殊出生率が1.20であったと発表されたが、都道府県別で最も低かったのは、東京都で0.99と1を下回った。韓国は0.72となり、8年連続で過去最低を更新した。日本を大きく下回る数値だ。ソウル市が0.55、釡山市が0.66と日本以上に深刻である。

 しかし、平日に就学生を連れて海外旅行する韓国人の勢いがその課題を感じさせない。人口減少の波に抗う対策も大切だが、その波に乗って行く姿も描く必要がありそうだ。

 過日イタリアでG7が行われたが、政治家は、ウクライナとパレスチナ・ガザ地区だけではない、戦争や紛争に弾圧などをなくして平和な世界秩序を作り上げる責務がある。同時に貧困をなくし、経済を発展させ、富の分配が偏らず、万民が心まで豊かになれる世界が望まれる。

 2024年、年初より日本人の観光動向が芳しくない状況が続いている。コロナ後の立ち上がりが悪く、目立つインバウンドに惑わされ、国内観光の低迷を認識できていない。実質賃金のアップなくして観光産業が発展できない状況が続く。国家の力が必要な時である。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒