【体験型観光が日本を変える358】地方があってこその東京だ 藤澤安良


 56人もの候補者が乱立した東京都知事選は小池百合子氏が圧勝で再選となった。全国の知事からは全国と連携しながら一極集中の解消に向けてほしいとの意見が出ている。東京だけよくてもバランスを欠いては日本の発展にはつながらない。

 食料自給率38%のわが国で東京は0%(いずれもカロリーベース)。全国各地からの供給があってこそ純粋の和食が食べられる。食料も酸素も地方があってこその東京である。

 国政では2014年に制定された特定秘密保護法の取り扱いで10年近く違法であったり、企業からの多額の架空発注の財源で賄賂を受け取っていたなど、海上自衛隊の不祥事がありトップが引責辞任をした。

 企業では、自動車関連会社での不正検査が多数見つかったが、造船会社の船舶エンジンの燃費データが子会社により20年にわたって改ざんされてきたと発表した。国会議員の金の問題、海自の不祥事、企業の不正データなどが起こり続けている。襟を正しもっと真っ当にならなければこの国の未来は危うい。

 英国では保守党が大敗し労働党に政権が移った。フランスの国政選挙でもマクロン大統領陣営が負けて連立の組み直しを迫られ、世界各地で民主主義陣営に変化が及んでいる。今後、日本でも自民党総裁選を秋に控えており一波乱ありそうだ。

 観光面では依然として日本人の動向が少なく、インバウンド頼みとなっている。しかし、それは都市型観光と一部の地方がオーバーツーリズムの様相であり、地方の田舎がもっと増えていいはずである。

 豊かな自然や日本特有の文化、世界無形文化遺産である和食の田舎料理、体験プログラムやアクティビティもある。それらの資源は日本人にも共通であり、田舎への動きが鈍いのは情報発信やコーディネートに課題がある。名所・旧跡、神社・仏閣がないと、ほとんどが何もないと言ってしまう。そしてこんな田舎に人が来るわけないと思い込んでいる。その課題に目を向けず態勢整備を全くしない。

 チャンスはあるのに自らが放棄し、結果を追い求めない行政やそれに準ずる観光協会などの組織は動けていない。できない理由や言い訳に終始し、自己弁護の才能は発揮するが、グローバルな視点で世界動向を意識せず、対前年しか見ていない旧態依然の観光関連組織がなんと多いことか。

 首長の公約は観光振興や交流人口や関係人口の拡大を掲げているが、自らも職員も行動が伴わない。それでいて給料や賞与は結果に関わらず支給されるなら、生産性の高い仕事をする人間が減ることになる。それは、日本の田舎が滅びる道筋をたどることに他ならない。

 観光の基盤づくりは人との交渉と対話の連続である。事務所に座ってパソコンとにらめっこばかりしていては事は進まない。情熱を持て、地域の課題に立ち向かえと言いたい。人類が金銭の価値に右往左往し、人の心に訴えていない。もっと人間が生きるという根源に思いをはせなければならない。人嫌いが多い。人に会い、対話から始めることだ。

 
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