【体験型観光が日本を変える365】日本人の戻らないハワイの現状 藤澤安良


 8月末の、1週間にわたってゆっくり日本列島を縦断していった台風10号は、降水量千ミリを超えるところがある等の甚大な被害をもたらした。結果的にその間を逃れるかのように、私は孫子連れ8人でハワイに滞在し、1週間の旅であった。

 夏休み中とあってか、子供連れの家族が比較的多かったが、新学期が迫っていることもあり、航空機の搭乗率は50%程度である。日本人が増加しているハワイでもコロナ前に戻りきらない状況が続いている。

 日本の大手旅行会社の現地社員に会って話を聞いたが、インセンティブ、修学旅行、団体旅行等は戻りきらない状況が続いていると言う。また、リピーターが多く、ツアーで行く観光地はひと通り行っており、観光地巡りのオプショナルツアーの設定は少なくなった。

 マリンスポーツやアウトドアアクティビティが主流でどこを見るかより何をするかであり、成熟したリゾートの形と言えよう。

 戻りきらない要因はいくつかあるが、物価高に円安のダブルパンチは大きい。ホテル代は安くとも1泊1室5万円からであり、10万円程度が標準的である。とりわけ、食事代が日本の3~5倍である。

 ショッピングモールのフードコートの牛肉とエビとライスのプレートが4千円である。著名なリゾートでのおにぎり1個が900円であった。

 レストランでの食事は1人1万円は下らない。土産品もコスパを考えると日本で買う方が安いと思えば買いたいものが見当たらない。

 私が初めてハワイに行ってから50年、半世紀がたった。その時はハワイは海外旅行の代名詞であり、夢であり憧れの地であったが、日本が豊かになったとはいえ、誰でもとはいかない海外旅行になりつつある。つまり、半世紀で日本人の所得水準が米国にも先進国にも追い付いていないことになる。

 インバウンドに好評な日本は物価高とはいえ、それに比べて食事代も食材費も極めて安いことになる。あらためて国内旅行を勧めたい。

 その国内旅行はコロナ禍前にまで復活しているとは言い難く、インバウンドが集中している地域以外は苦戦している地域も少なくないようだ。まずは日本の観光振興を成し遂げることだ。財力を持って海外旅行に出かけなければ、惨めな思いをする。

 高額所得者やインバウンドだけでは観光客は日本中に行き渡らない。1億総旅人になるような政策が求められる。

 日本の観光地やリゾートで1週間滞在したいところは思いつかない。宿泊施設側も単泊が主流で長い連泊を想定していない。狙ってもいないようである。1週間の滞在まではいかないまでも3連泊程度を目指すべきである。

 時間、空間の過ごし方の提案、体験交流(事)のアクティビティの提案、おいしい食事で幸福感を感じられるような地産地消の食事のクオリティアップ、滞在型の観光地になる努力をする必要がある。1軒の宿のことのみを考えるのではなく。地域が一体となって取り組んでほしいものである。

 
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